王立魔法学院の落第生〜王宮を追放されし、王女の双子の姉、その弱い力で世界を変える〜

アンジェロ岩井

文字の大きさ
46 / 211
フォー・カントリー・クロスレース編

悪党のせいで荒れ放題になった憂鬱な街の片隅に

しおりを挟む
話を聞くに連れて、この街の状況が見えてきた。どうも、この街はモーティーマーという保安官の一味が支配する箇所とモンコ兄弟というギャングの一味が対立する箇所に分けられているらしい。
話によれば、今のモーティーマー保安官は二代目という事で、既に引退した偉大なる保安官、フリント・モーティーマーの威光を傘に着て威張っていたらしいが、少し前にそれに反発し、一度は組織を解散した筈のモンコ兄弟が組織を再編し、モーティーマーと対立しているらしい。
この話を聞いた時に、私がお爺さんから差し出された魚のフライを口にしながら、尋ねると、
「ちょっと待って、じゃあ、何で、町の人たちがモンコ兄弟と対立しているの?」
「同じくモーティーマー保安官が敵だったら、対立するメリットなんか無いのに」
“バカやろう!モンコの奴らもオレ達から場所代やら何やら請求して、苦しめてるんだよッ!だから、オレ達はモーティーマーもモンコも嫌いなんだ」
成る程、と私は相槌を打つ。
お爺さんはそれを聞くと、フンと鼻息を立てて背後に棚に並んできた酒瓶を弄り、私の前にバーボンの瓶を乱暴に置く。
「その酒は儂の奢りじゃ、騒動に出る前に早う出て行けーー」
その時だった。ハンマーにより乱暴に扉が壊され、二人の男が現れた。
お爺さんはその顔を見て絶句してしまっていた。
言葉を失っていたと言った方が的確なのかもしれない。
お爺さんは指を震わせながら、
「モーティーマーにモンコ、どうして、お前らがここにいやがる!?」
「どうしても何も」
「テメェがオレの手下に言ったんだろう!?親分を連れて来いとなッ!」
この二人を観察した時に私が感じた印象は正反対と言った感じであった。
モーティーマー保安官は若い男であり、短い金髪が特徴のチャラチャラという風貌の男であった。その傍ら、モンコ兄弟の長男だと思われる男は老けた男で、白い髪が黒い髪に交じっている事に気が付く。かなりの年寄りらしい。
私はついでに吹き飛ばされた扉の前に集まった手下の数を眺めていく。
集まった手下の数だけで五十人くらいは居そうだ。
もし、この場にいる手下のガンマンの数がこいつらの戦力の一部だとしたら……。
私は恐ろしさのために思わず生唾を飲み込む。
そして、顔から冷や汗を出して、必死に顔を背けていたのだが、モーティーマー保安官はそんな私の態度に苛立ったのか、モンコ兄弟の長男と共に机の前にやって来て、私の前の場所を強く叩く。
「おい、お前か?オレらの縄張りに手を出そうという小娘はッ!」
「一体何の話なのか、さっぱり……」
「惚けるんじゃあねぇよ!オラァ、あいつから聞いたんだぞ、お前がニューヨーシャー王国の方でブラック姉弟なる悪党をぶっ殺して、相当の額の賞金を稼いだ事をよぉ~オレ達の事も殺しに来たんだろう?帝国から悪徳保安官をぶっ殺せとなッ!」
「私はここに休憩のために立ち寄っただけよ。ここに居たのも食べ物を食べにきただけで」
「やかましいやッ!だが、テメェが来てくれたお陰で助かったぜ、テメェとテメェの連れて来る帝国の騎兵隊に対抗するために、こうして、オレ達が手を結んだんだからな」
モント兄弟の長男と思われる男が私の前に迫って叫ぶ。
その後に、モーティーマー保安官が腰から拳銃を抜き、酒を用意していたお爺さんを脅す。
「悪いが……オレ達と一緒に来てもらおうじゃあねぇか。勿論、嫌だとは言わせねぇぞ。オレの待っているこれが見えねぇわけじゃあねぇだろう」
金髪の青年が突き付けているのは回転式拳銃。
今、ここで散弾銃を取り出しても間に合わないと判断したのだろう。
お爺さんは大人しく両手を上げて、保安官に連れ去られていく。
そして、扉の前で保安官は手下から投げ縄を借り、縄でお爺さんの手首を縛り、まるで罪人を連行するかのように連れて行くき、去り間際にこちらを振り向いて、
「いいか!?このジジイを返してほしけりゃあ、町の広場ッ!明日の朝に、井戸の近くにある場所に来いッ!テメェ、一人で臆する事なく来りゃあこのジジイを返してやるよ!」
保安官の言葉を聞き、私は何も言わない代わりに悪党達を鋭い瞳で睨み付ける。
私のその視線を犯人達は宣戦布告と受け取ったに違いない。
彼らは私をバカにするような声を上げる事もなく酒場を去っていく。
私は誰も居なくなったバーカウンターの前で勝手にバーボンを拝借する。
決闘は明日の朝なのだ。それまでに準備を進めておかねばならない。
私はバーボンの瓶を直接口に付けながら、かつて、ピーターに聞いたお話を思い出す。
ピーターから聞いた話ではこの街と同じ町であったのだが、大きく異なるのは二大勢力が私を倒すために手を組んでいるという事だろうか。
ピーターの話だったら、街を二分する勢力は主人公の暗躍の末に抗争を続けた末に、壊滅し、そのもう片方の勢力を主人公が全滅させるという筋書きだったのだが、どうも、現実は物語のようには上手く事は運ばないらしい。
私はバーボンを飲み終えると、外へ出て自分の馬の安否を確認する。
あれだけの男がいながらも、酒場の前に停めた馬は無事だったらしい。
私は愛馬の頭を撫でると、そのまま街を歩いていく。
大衆達の目。とりわけ、先程と違う点は先程は余所者を警戒する目であったのにも関わらず、今の彼らの視線は明らかに罪人を弾劾する視線であったのだ。打ち付けた板の隙間から余計な事をしやがってと言わんばかりの呪詛の視線が突き刺さるのだが、私は気にする事なく、街を歩き、翌日の決闘に備えるための武器を探す。
武器屋を探すのは簡単だった。武器屋は拳銃のマークの描かれている場所であり、そこの扉もこの町の例に漏れずに塞がれていたのだが、私は店の前に馬を停めると、構う事なく扉を大きく叩いて店主を呼び出す。
無愛想な顔で店主は扉を開けて、私の前に現れる。
「あんたか?さっき、奴らが探していた女っていうのは?」
「ええ、そうよ。明日、奴らと決闘するの。だから、私に武器をーー」
「とんでもねぇや!悪いが、あんたにゃあ武器を売れねぇ!あいつらの敵に武器を売ったなんて噂されりゃあ、オレはあいつらに殺されちまう!」
店主の男は慌てて店を閉めようとしたのだが、私は扉を閉ざされようとする扉を必死に閉めて、店主を説得しようと試みる。
「待って!私の事を知らない!?」
「本当に済まないが、あんたが例え権力者の娘だろうが、武器は売れねぇ!分かったら、早くーー」
「私はこの二人を仕留めたのよ」
私はそう言って懐から少し前に会長に貰った手配書を押し付ける。
店主は手配書を見て目を見開いてしまう。
「信じられねぇ!こんな額の賞金首を!?あんたが仕留めたっていうのかい!?」
私は首肯する。すると、彼は瞳を輝かせて、
「オレ達はあんたのような救世主を待っていたのかもしれねぇ」
そう言うと、武器屋の店主は乱暴に私を武器屋へと連れ込む。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...