王立魔法学院の落第生〜王宮を追放されし、王女の双子の姉、その弱い力で世界を変える〜

アンジェロ岩井

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フォー・カントリー・クロスレース編

ニューローデム・パニック!市街地の決戦編

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懸命に走っているうちにようやく入り口に辿り着いたらしい。日の光が私に当たる。私は建物の前に集まった警察隊に過激派の男がまだ中に居る事と、この建物にいる筈の首脳陣を守るように指示を出す。
そして、シンディを警察隊に他の場所に避難させるように言って、もう一度、今度はクリストファーを殲滅する目的で大きく横に広がった宮殿のような建物に向かおうとすると、途端に入り口から大きな爆発音が聞こえた事に気が付く。
そこには多くの警察官やら保安委員の焼け焦げた死体を引っ張ったクリストファーの姿が見えた。
「やってくれたな。クソ女……だが、テメェの便所にくっ付いて離れないクソのように汚い手をおれはよーやく理解したぜ、その汚い左手であいつの呼吸を奪ったんだろう!?王女なんて身分を傘に着て他の奴らはゴミってか!?」
「お黙りなさいッ!」
シンディの声がクリストファーに被さる。ここまで怒ったシンディの顔を見たのは初めてであったかも知れない。
そんな事を考えていると、シンディは私の前に立って、
「お姉様は全ての国における弱い市民をあなた達のような汚い犯罪者の手から守るために、賞金稼ぎになったのですッ!むしろ、ゴミのように不潔な存在なのは平和だの平等だのを謳っているくせに、多くの人を巻き込むあなた達、連合解放軍ユニオン・リリース・アーミーの方ではないですか!?」
私は妹に辞めるように叫ぼうとした時だ。妹の声をクリストファーが大きな声で否定する。
「黙れッ!お前のような特権階級の人間にみんながどれくらい苦労してるのか分かった事があるのか!?一度でも腹を空かした事があるのか!?ねぇよな!!腹が減りやぁ、お手伝いさんが何か作ってくれる。寂しくても周りが励ましてくれる!そんな人間におれの苦悩の何が分かるッ!エリアーナを、オレの恋人を返せェェェェ~!!!!」
クリストファーはシンディに言い返す事ができず、自分の殺しを棚に上げた発言と自分だけの恨み節を述べた後に、一斉に六体程の怪物を作り出し、私と妹に向かわせていく。
私は妹の前に立ち塞がり、右手に銃を構えて左手に自身の魔法を秘めて突撃していく。
私は自分のやっている事が無謀にも等しい事だと自覚している。背後で妹が悲痛な叫び声を上げているのがその最もたる証拠だと言えるだろう。
だが、チャンスは一度きりなのだ。私は自分に向かってきた怪物に向かって左手の掌を向けて、一体を吸収し、私に向かってくる残り五体の怪物に向かわせていく。
私が吸収し、使役した怪物は蛇状の体を活かして他の五体の怪物から私を守る。
懸命に私を守るその姿。まさに古来に伝わる姫に忠誠を尽くす騎士の姿そのものではないか。
私は小さな声で、それも優しい声でお礼を告げてから、地面を蹴って、怪物はの下に滑り出す。
だが、男が指を鳴らして怪物を爆発させたのも殆ど同じ同時であった。
地面を滑っていた私は爆風に吹き飛ばされになったものの、何とか均衡を保つ事に成功する。
「ド外道がァァァァァ~!!!!!」
この台詞を発した時の私に心境としてはエリアーナの事など頭にも無かったと言っていいだろう。
ただ、自分の目的を果たすためだけに多くの人間を殺傷したへの恨み節のみが込められていた。
上記の台詞を叫ぶのと、私が引き金を引いたのは殆ど同じタイミングであったと言っても良いだろう。
クリストファーは言葉を発する暇もなく、額に弾丸が直撃した衝撃のためか、地面に大きく体を打って倒れてしまう。
だが、私も滑る際の勢いを失ってしまったためか、地面に大きく体を打ったが、集まった警察隊に肩を貸されてようやく起き上がる事が出来た。
弱々しく起き上がった私を妹は強く抱き寄せて、
「お姉様、お姉様がご無事でようございましたわ。私は本当に……本当に心配だったのでございますわよ!」
「……ありがとう。シンディ。さっきは私のために怒ってくれたんでしょう?あの時は冷や冷やしたけれど、でも、今になって思えばとても嬉しいわ。ありがとう」
私が微笑んでみせると、なぜかシンディは耳を真っ赤にして顔を背けてしまう。
どうして、特定の人間はこんな表情を浮かべてしまうのだろう。
私が頭の上に「?」マークを載せていると、この建物の警察隊やら首脳陣の警備隊やらが集まり、私に事情を聞いていく。
結局、その日は事情聴取とかの事件の後始末で終わってしまい、表彰式は翌日に延期される事になった。
その日、私はあの屋敷で用意された客室に通され、あらん限りの歓待を受けた。
だが、本来ならば、王女を救った人間であり、国王陛下からお礼の言葉が述べられる筈だったのだが、まだ私が王女であるためか、それとも単純に父が私と顔を合わせるのが嫌なだけなのだろう。
結局、この日、国王が感謝を述べに現れる事は無かった。
やはり、〈杖無し〉と判断された娘など要らないのだろうか。私が用意されたコース料理に添えられたパンを千切って食べていると、私の食事の給仕を行っていた執事やメイドの姿が裏返っている事に気が付く。
どうしたのだろうと背後を振り向くと、そこには妹のシンディが王女のドレスを纏った状態で現れたのだ。
「お姉様、本日はウィンストン・セイライム王国の王女としてお礼を言いに参りました。本日はあの様な過激派からお命を助けてくださり、本当に感謝しております。ありがとうございます」
大きく頭を下げるシンディに、私は弱々しく手を横に振って、
「いいのよ。妹を守るのは姉の務めだもの、これくらい何ともーー」
「何ともないわけないじゃあないですか!」
シンディはドレスの裾を掴みながら、涙声で叫ぶ。
「お姉様に何かあったらどうなさいますの!?お姉様は私のたった一人のお姉様なのです……」
最後に弱々しくなったのはあの可愛らしい瞳から透明の液体が溢れ、声が濁ってしまったからに違いない。
涙ぐむ妹の瞳から流れる透明の液体を優しく拭ってやり、妹の頭を優しく撫でてやる。
「お姉様……」
「覚えてる?昔、よくシンディがテストで良い点を取った時に撫でてあげたわよね?」
私は妹を優しく抱き締めながら、頭の中にまだ王宮で育てられていた時、姉妹がまだ平等であった時の事を思い出す。
あの頃から色々と変わってしまったのだが、あの頃からたった一つ変わらないものがある。
それは、目の前の大切な妹の存在。私はこの子を守るためならば、何でもするだろう。もし、妹に今日以上の事が遭ったとしたら、私のリミッターは完璧に外れてしまうだろう。
私は妹と抱擁しながら、将来の危険な危険性について考えていた。
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