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サラマンダー・パシュート編
アンダードームシティーでの聞き込み調査とそれに纏わる犯人の反応
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アナベル・オハラは内向的な性格の少女であった。加えて、お世辞にも頭が良いとは言えなかったので、中学時代には時代遅れの教師から、厳しく躾けられたのを覚えている。だが、内向的で頭が悪いのは自分だけではないだろう。
他にも他所のクラスにいるに違いない。それなのに、あの教師は自分にばかり目を付けていた。彼女は手の甲を鞭で叩かれるたびに、教師を恨み、いつかこの恨みを晴らしてやろうかと考えたのだ。
そして、今日、ここに恨みを晴らす時がやって来たのだ。
「ま、待ってくれ、ど、どうしてこんな事を!?」
「……どうして?よくもそんな事が言えるわね。あたしにあれだけの事をしていたくせに」
その瞬間に、彼女は三年間の中学時代の辛い思い出がフラッシュバックしていく。手の甲を鞭で叩かれて泣けば、怒鳴られる自分。
クラス全員の前で容赦なく叱責させられ、涙ぐむ自分。
中学時代が暗黒時代だったのはこの男のせいだ。自然と、銃を握る力にも力が篭っていく。
「死ねよ。クソ教師」
少女の呟く声と共に中年の教師の頭を銃弾が貫く。
教師は悲鳴を上げる暇もなく、絶命する。銃声を聞き付けた婦人が帰ってくる前に、少女は男の住んでいる一軒家の窓を開けて、逃亡する。
彼女は拳銃を持てる事と賞金首を追うという名目で一般人への協力を寄せられる賞金稼ぎ部という身分に喜んでいた。
入学直後に発生した事件を機に、〈杖無し〉の生徒への再評価も進み、射撃の成績が優秀だったアナベルは魔法の実績が殆ど無かったのにも関わらず、入部を副部長に許可されたのだから。
その時の彼女の表情と言ったらなかっただろう。得意そうなエリートに勝ったと言わんばかりの笑みを浮かべていた。
だが、そんな彼女にも不満がない訳ではない。夕焼けの中で輝く杖の描かれていない星形のバッジがその証拠。
このバッジを見るだけで、彼女は心の奥底に仕舞い込んだ筈の自身のコンプレックスを刺激されてしまう。
王立魔法学院では魔法こそが絶対とされ、入学試験の段階で魔法の使えない落ちこぼれと烙印を押された生徒には通常ならば、杖と銃が描かれている筈なのに杖の無い銃のみが描かれたバッジが手渡される。
現在、二年生の彼女は魔法も座学も、果ては体術の成績もイマイチであったのだが、射撃の成績だけは一番であった。
学年の中でトップだと言っても良かっただろう。〈杖有り〉や〈杖無し〉の男子生徒が一年も二年も女子にトップを奪われた事を悔しがっていた事を思い出す。
あの時の男子の悔しそうな顔は今でも忘れられる訳がない。
先程の中学の教師を筆頭に、自分に因縁を振るって絡んできたギャングの男、それを見て見ぬふりをした駅馬車の運転手。勇気を出して告白した自分を奴隷としてなら養ってやると抜かしたプレイボーイの男。
その全員が例外なく、自分に命乞いをした。特に、散々良い女性と遊んできたプレイボーイの男が男の歴代の彼女よりも随分と顔の劣る自分に命乞いをしていたのは良い思い出だった。
アナベル・オハラはお世辞にも美しい女性とは言えないし、自分が可愛くない事も自覚していた。ニキビばかりが頬の上に湧き出ているくせに、ホールのように丸っこい顔では美しいという少女と好んで付き合いたい男性などいないだろう。
加えて、孤児という地雷持ちだ。
だから、彼女は殺人を繰り返してきたのだ。自分の闇を取り払うように。
「犯人の目星は付いたのか?」
「一応ね。ルパートの奴の鼻を明かせる日が来るのも近いかもしれないわ」
私とケネスはシティーでの聞き込みを終えてからは、息抜きと実技の練習を兼ねて、校舎の奥にある訓練所から射撃の的を引っ張り出し、射撃の自己練習をしていた。
弾を放つたびに、自分の弾が的に当たる音が聞こえるが、油断はしていられない。
夏休みの間、あのレースから帰還してからは残った休みの時間を課題の見直しに充てる時間やたまにピーターに誘われて息抜きをする時間を除いて、ずっとここに通い詰めていたのだ。
そのために、以前よりは自信が付いたが、それでも、まだまだ不安なのだ。
だから、今も射撃の訓練をする。
私が的を妹を狙うテロリストに当て嵌めて撃ち殺そうと銃口を向けた時だ。
「わぁ、流石だね、一年の中で一番の成績を持つ少女の名前は伊達じゃあないですね?」
背後から声を掛けられた私は咄嗟に振り向き、自分に声を掛けた相手を見つめる。
「えっと……あなたは?」
私の問い掛けに少女はクスクスと笑って、
「あらら、これは失礼。あたしはアナベル。アナベル・オハラよ。賞金稼ぎ部所属の二年生。オーケー?」
「ええ、それは分かりましたけれど、どうしてその先輩がここに……?」
私の問い掛けに、そばかすだらけの先輩は可愛らしい声で笑って、
「いやだなぁ~先輩が放課後に射撃の練習をしちゃあダメなの?」
その言葉を聞いて、私とケネスは自分たちの場所を先輩に明け渡す。
先輩は私とケネスの見ている前で、ホルスターに下げていた拳銃を抜いて、目の前に現れた的を撃ち抜いていく。
その腕前は私とケネスが思わず感嘆する程の腕であった。
先輩は手に持っていた回転式の拳銃をクルクルと回すと、ホルスターに仕舞って、その場を去ろうとしたが、その前に私の耳元で小さな声で囁く。
「自分が一番だと思わない事ね。ウェンディ・スペンサー。必ず、あんたと三年の先輩を抜いて、あたしがこの学校で一番の銃使いになる事を忘れないでね」
その言葉を聞いて、先輩は校舎の中へと戻っていく。
それを見ていたケネスは小さな声で、
「なぁ、あの先輩なんだがな……」
「言いたい事は分かっているわ。ケネス……ものすごく怪しいって事を言いたいんでしょう?それに、殺された教師の奥さんの証言にも当て嵌まり過ぎているわ。“主人を逆恨みしているたった一人の人物”という証言にね……」
「あぁ、だが、どうする?」
「決まっているわ。カマをかけるのよ」
私はケネスの耳元で小さな声で自分の計画を話していく。
計画を話していくうちに、ケネスの目が大きく見開かれている事に気が付く。
「待ってくれ、流石にそんな計画はお前が……」
「大丈夫よ。その代わりと言っては何だけれど、その計画を実行するのはあなたの下宿にしてもらいたいの。いいかしら?」
ケネスは暫く考える素振りを見せていたが、何とか小さな声で許可を出す。
これで、準備は出来た。後は網を貼るだけだ。私はもう一度引き金を引いて、目の前の的に向かって引き金を引く。
次の瞬間には弾丸が的に当たる良い音が聞こえた。
他にも他所のクラスにいるに違いない。それなのに、あの教師は自分にばかり目を付けていた。彼女は手の甲を鞭で叩かれるたびに、教師を恨み、いつかこの恨みを晴らしてやろうかと考えたのだ。
そして、今日、ここに恨みを晴らす時がやって来たのだ。
「ま、待ってくれ、ど、どうしてこんな事を!?」
「……どうして?よくもそんな事が言えるわね。あたしにあれだけの事をしていたくせに」
その瞬間に、彼女は三年間の中学時代の辛い思い出がフラッシュバックしていく。手の甲を鞭で叩かれて泣けば、怒鳴られる自分。
クラス全員の前で容赦なく叱責させられ、涙ぐむ自分。
中学時代が暗黒時代だったのはこの男のせいだ。自然と、銃を握る力にも力が篭っていく。
「死ねよ。クソ教師」
少女の呟く声と共に中年の教師の頭を銃弾が貫く。
教師は悲鳴を上げる暇もなく、絶命する。銃声を聞き付けた婦人が帰ってくる前に、少女は男の住んでいる一軒家の窓を開けて、逃亡する。
彼女は拳銃を持てる事と賞金首を追うという名目で一般人への協力を寄せられる賞金稼ぎ部という身分に喜んでいた。
入学直後に発生した事件を機に、〈杖無し〉の生徒への再評価も進み、射撃の成績が優秀だったアナベルは魔法の実績が殆ど無かったのにも関わらず、入部を副部長に許可されたのだから。
その時の彼女の表情と言ったらなかっただろう。得意そうなエリートに勝ったと言わんばかりの笑みを浮かべていた。
だが、そんな彼女にも不満がない訳ではない。夕焼けの中で輝く杖の描かれていない星形のバッジがその証拠。
このバッジを見るだけで、彼女は心の奥底に仕舞い込んだ筈の自身のコンプレックスを刺激されてしまう。
王立魔法学院では魔法こそが絶対とされ、入学試験の段階で魔法の使えない落ちこぼれと烙印を押された生徒には通常ならば、杖と銃が描かれている筈なのに杖の無い銃のみが描かれたバッジが手渡される。
現在、二年生の彼女は魔法も座学も、果ては体術の成績もイマイチであったのだが、射撃の成績だけは一番であった。
学年の中でトップだと言っても良かっただろう。〈杖有り〉や〈杖無し〉の男子生徒が一年も二年も女子にトップを奪われた事を悔しがっていた事を思い出す。
あの時の男子の悔しそうな顔は今でも忘れられる訳がない。
先程の中学の教師を筆頭に、自分に因縁を振るって絡んできたギャングの男、それを見て見ぬふりをした駅馬車の運転手。勇気を出して告白した自分を奴隷としてなら養ってやると抜かしたプレイボーイの男。
その全員が例外なく、自分に命乞いをした。特に、散々良い女性と遊んできたプレイボーイの男が男の歴代の彼女よりも随分と顔の劣る自分に命乞いをしていたのは良い思い出だった。
アナベル・オハラはお世辞にも美しい女性とは言えないし、自分が可愛くない事も自覚していた。ニキビばかりが頬の上に湧き出ているくせに、ホールのように丸っこい顔では美しいという少女と好んで付き合いたい男性などいないだろう。
加えて、孤児という地雷持ちだ。
だから、彼女は殺人を繰り返してきたのだ。自分の闇を取り払うように。
「犯人の目星は付いたのか?」
「一応ね。ルパートの奴の鼻を明かせる日が来るのも近いかもしれないわ」
私とケネスはシティーでの聞き込みを終えてからは、息抜きと実技の練習を兼ねて、校舎の奥にある訓練所から射撃の的を引っ張り出し、射撃の自己練習をしていた。
弾を放つたびに、自分の弾が的に当たる音が聞こえるが、油断はしていられない。
夏休みの間、あのレースから帰還してからは残った休みの時間を課題の見直しに充てる時間やたまにピーターに誘われて息抜きをする時間を除いて、ずっとここに通い詰めていたのだ。
そのために、以前よりは自信が付いたが、それでも、まだまだ不安なのだ。
だから、今も射撃の訓練をする。
私が的を妹を狙うテロリストに当て嵌めて撃ち殺そうと銃口を向けた時だ。
「わぁ、流石だね、一年の中で一番の成績を持つ少女の名前は伊達じゃあないですね?」
背後から声を掛けられた私は咄嗟に振り向き、自分に声を掛けた相手を見つめる。
「えっと……あなたは?」
私の問い掛けに少女はクスクスと笑って、
「あらら、これは失礼。あたしはアナベル。アナベル・オハラよ。賞金稼ぎ部所属の二年生。オーケー?」
「ええ、それは分かりましたけれど、どうしてその先輩がここに……?」
私の問い掛けに、そばかすだらけの先輩は可愛らしい声で笑って、
「いやだなぁ~先輩が放課後に射撃の練習をしちゃあダメなの?」
その言葉を聞いて、私とケネスは自分たちの場所を先輩に明け渡す。
先輩は私とケネスの見ている前で、ホルスターに下げていた拳銃を抜いて、目の前に現れた的を撃ち抜いていく。
その腕前は私とケネスが思わず感嘆する程の腕であった。
先輩は手に持っていた回転式の拳銃をクルクルと回すと、ホルスターに仕舞って、その場を去ろうとしたが、その前に私の耳元で小さな声で囁く。
「自分が一番だと思わない事ね。ウェンディ・スペンサー。必ず、あんたと三年の先輩を抜いて、あたしがこの学校で一番の銃使いになる事を忘れないでね」
その言葉を聞いて、先輩は校舎の中へと戻っていく。
それを見ていたケネスは小さな声で、
「なぁ、あの先輩なんだがな……」
「言いたい事は分かっているわ。ケネス……ものすごく怪しいって事を言いたいんでしょう?それに、殺された教師の奥さんの証言にも当て嵌まり過ぎているわ。“主人を逆恨みしているたった一人の人物”という証言にね……」
「あぁ、だが、どうする?」
「決まっているわ。カマをかけるのよ」
私はケネスの耳元で小さな声で自分の計画を話していく。
計画を話していくうちに、ケネスの目が大きく見開かれている事に気が付く。
「待ってくれ、流石にそんな計画はお前が……」
「大丈夫よ。その代わりと言っては何だけれど、その計画を実行するのはあなたの下宿にしてもらいたいの。いいかしら?」
ケネスは暫く考える素振りを見せていたが、何とか小さな声で許可を出す。
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