王立魔法学院の落第生〜王宮を追放されし、王女の双子の姉、その弱い力で世界を変える〜

アンジェロ岩井

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サラマンダー・パシュート編

夢を売る男と命を買う女

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賞金稼ぎ部は目下の所、予定通りに進んでいると言っても良いだろう。
私たちはまず、表向きのオフィスに押し入り、屯していたギャングどもを誘き寄せ、この場で片付けていく。
それから、この商社の社長にして地下組織『サラマンダー』の首領である男の現場を押さえる。
それだけだ。私は躊躇う事なく、目の前へと進んでいく。階段の前のギャングどもを私は自らの腕のみだけで倒していく。
彼らは悲鳴を上げて倒れいく。中には階段から落ちていく様を見せつけてくれるガンマンもいた。
彼らは私や仲間の銃の前になす術もなく撃ち殺されていき、兵隊としての役目を果たしていないように思われた。
だが、少ないながらもまだ一階の何処かには撃ち漏らした残党がいる筈なのだ。
初めは私もその処理に加わろうとしたのだが、副部長が自分に任せると言ったきりその場から動かないのだ。
やはり、あの詩を褒められたのが嬉しかったのだろうか。
と、まぁそんな調子で揚々とした気分のまま二階に辿り着いた私の前に現れたのは二人の男女だった。
男の方はシルクハットに首飾り無しの白いシャツに黒色の上着、それにストライプ柄のズボンに黒い革靴を履いていた。
女の方は真紅のドレスという格好でとても、地下組織の人間には見えない。
私と背後で私に付き従っていたケネスとマーティの二人が銃を突き付けて、何者なのかを問う。
すると、二人は互いに顔を見合わせて上品に笑っていく。
それから、一通り笑い終えると、私と私の後ろに従う二人に向かって丁寧に頭を下げて自己紹介を始めていく。
「お初にお目に掛かります。ぼくの名前はレミー・マルトン。『サラマンダー』における十の部門のうち、五つの部門を担当しております」
「お初にお目に掛かります。私の名前はアニー・エドワーズ。どうか、お気軽にアニーと呼んでくれれば幸いでございます」
二人は丁寧に頭を下げてから、私たち三人の前に立ち塞がり、右手を伸ばし、右手から得体の知れない怪物を作り出す。
私はその怪物を見た瞬間に、怪物に向かって思わず引き金を引いてしまうのだが、怪物には当たらなかったらしい。
だが、銃には弱いらしく銃声が聞こえた瞬間に煙を消したようにこの場から消えてしまう。
私は慌てて階段の下に降り、広いスペースで戦うように心掛けていく。
ここならば、あの怪物が出てきたとしても、距離を取っていけば当たらない筈だ。
いずれはビルの端に追い詰められるとしても、その前にあの男を撃ち殺せば良いだけの話だろう。
そんな事を考えながら、二階に向かって後退していると、例の女がクスリと笑って、空中に向かって右手の掌を広げていく。
すると、どういう事だろう。私と二人の仲間の前に見知らぬ赤い空間が広がっていく。
その空間の中に居るのは私たちと先程の二人だけ、一体これはどういう魔法なのだろうか。
そんな事を考えていると、もう一度あの怪物が私の前に迫って来る。
得体の知れない蛇状の怪物は鳴き声を上げた後に私に向かってくる。
私はその怪物に対し、銃を放ち事なき事を得ようとしたのだが、先程は消えた筈の怪物がこの空間では消えない。
どういう事なのだろうか。私はやむを得ずに左手の掌を広げて、相手の魔法を吸収していく。
そして、吸収した怪物をあの二人の前に喰らわせようとしたのだが、なぜか私が掌を広げたとしても出るのは白い煙。
どういう事なのかと目を見開いていると、目の前から先程の怪物が迫っている事に気が付く。
私はその場をしゃがみ、続いて左側に転ぶ事により怪物の歯で体を粉々に砕かれるのだけは阻止したのだが、その怪物はしつこく私に向かって攻撃を喰らわせようと空中であの剣のように鋭い歯をガチガチ鳴らし、噛む真似をしていく。
不味い。私がそう感じた時だ。ケネスとマーティの小型の雲が怪物の元へと向かい怪物に向かって雨やら雷やらを直撃させていくが、怪物には雨も雲も意味が無かったらしい。
文字通りの怪物に私はどうしようかと考えながら、その場から必死に離れていると、ケネスとマーティの二人は元凶である男女に銃を突き付けている。
二人がいよいよ銃の引き金を引こうとした時だ。途端に先程まで広がっていた四方八方に赤い色が広がっていた謎の空間も恐ろしい蛇状の怪物も煙を消したかのようにこの世から消え去ってしまう。
不味い。私は咄嗟に転んでいた姿勢から起き上がろうとするものの、やはり、建物の上というのはブーツでは滑ってしまうものらしい。
私は慌てて建物のビルの上でバランスを取る。そして、一息を吐く。
それから、大事な友人が階段から転がり落ちていないのかを探していくのだが、友人はどうやら、階段の手すりに助けられたらしい。
木製の手すりを掴みながら、私に向かって親指を突き上げていた。
何せ、あの空間に行くまでに立っていたのは階段なのだ。
一歩間違えれば大きな事故に繋がっていた所だろう。
すると、階段の上からまたもや嘲笑う声が聞こえた。
私がふと上を見上げると、そこには先程と変わらない位置にいる二人の男女の姿。
男の方、確かレミーと言ったか、その男が得意そうな笑みを浮かべて、両手を腰に掛けて私を見下ろしていた。
「どうだい?これがぼくの魔法だよ。怪物を作り出し、自由自在に使役する。フフフ、実に魔法使いに相応しい魔法だと思わないかい?」
男の解説を鵜呑みにするのならば、男はとんでもない魔法の使い手なのだろうが、私は男の解説は嘘だと考えている。
恐らく、男の魔法は怪物を作り出す魔法ではなく、幻影を見せてそれが怪物だと思い込ませる魔法ではないのか。
最も、これは私の推測に過ぎない。ただ、怪物というのには銃も魔法も効かないので怪物ではなく、幻だと判断しているだけに過ぎない。
次はアニーなる女の解説が始まる。どうも、彼女の魔法は自分たちを未知の空間へと連れ出す魔法であるらしい。
未知の空間というのも彼女の作り上げた空間であり、そこは彼女の好きな色で埋め尽くされる理想の環境となるらしい。
彼女が真紅のドレスを纏っている点や他に否定できる材料が無い事から、アニーの解説は信用しても良いだろう。
解説が終わり、私は二人の男女を睨む。
二人の男女の魔法の強さはあの金の男とは違って、物理的な強さではなく心理的な強さを誇っているに違いない。
この魔法で目の前の二人はのし上がってきたのだろう。
私は一筋縄ではいかない相手だと判断し、もう一度自身に対する警戒の意味も込めて、二人に銃を向けていく。
だが、私に銃を突き付けられても尚、あの二人は笑っていた。
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