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日常編
ウェンディ・スペンサーの暴走
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最近になって私は気付いたのだ。酒が飲めないのならば、潜入捜査の時にやむを得ず飲むケースというのは許されるのではないのかと。そんな事を試しに放課後の教室、暇な時間を使ってケネスに言ってみたのだが、ケネスはなぜか額を右手で覆って陰鬱そうな表情で、
「気の毒だがね、ウェンディ。それは難しい話だ」
ケネスの言葉に私は思わず席から立ち上がり、彼の顔を覗き込む。
「ええ!?どうしてよ!私だってたまにはお酒を飲みたいわ!」
「別に禁酒をされているわけではないだろ?一日一杯だったらーー」
ケネスが何が何でも駄目だという事を告げようとした時だ。教室の扉を開く音が聞こえて、焦った顔のマーティが姿を表す。
「た、大変だッ!賞金稼ぎ部の緊急収集だッ!ケネス!ウェンディ!早く来てくれ!」
『緊急収集』という単語を聞いてはいても立っても居られないだろう。私もケネスも席を立って部活棟へと向かう。
部室に入ると、エマ部長は重い顔で苦い溜息を吐きながら呟く。
「……今回、お前たちを緊急収集したのは言うまでもない。最近、シティーの酒場にある男が潜入しているという噂を耳にした」
エマ部長は机の引き出しから、その男と思われる手配書を机の上に叩き付ける。
その男の風貌はいかにもギャングですと言わんばかりの顔である。加えて、真っ黒なテンガンロンハットが悪人だという事に拍車を掛けているような気がする。
「こいつだッ!この男、ヘンリー・ウォーカーという男はこれまでに三件の殺人を犯して手配されている手配犯だッ!この男は地元の保安委員にシティーの酒場で用心棒を働いているという噂を聞いた。そこで、お前たちの誰かに潜入捜査をしてもらいたいのだがーー」
私はここで勢いよく右手を挙げて、
「私とケネスに任せてください!必ず、保安委員に引き渡してみせますから!」
ついでに私はエマ部長の座る席を勢いよく叩いて、彼女に異論を挟む暇を与えない。
エマ部長はここで空咳をして、
「そ、そうか……なら、お前たちに任せてみようか」
私は満面の笑みでケネスを連れてシティーへと向かう。
一度、家に寄り、二人に夕食は不要と伝えてから、外に待たせていた友人と共にシティーへと馬を走らせていく。
シティーはホテルの事件を機に来ていなかったのだが、久し振りに見て回るのは楽しかった。
もうそろそろ夜も更けている頃だ。シティーの真ん中で男が叫んでいる事に気が付く。
堪りかねた私が声を掛けると、彼は涙を流し、右横の酒場を指差す。
「あ、あいつらに騙されたんだぁ~ちくしょう、ビール二本で三十五王国ドルも取りやがって……」
その言葉を聞いて二人で顔を見合わせてこの店にヘンリーが潜んでいる可能性が高いと突き止める。
そしてあの男が止めるのを無視して酒場へと入っていく。
酒場の前で高価な赤い色の絹のドレスを着た金髪の女性がケネスに声を掛けようとしたのだが、彼の背後に私が付いているためか、それともケネスが鋭い視線で睨んだためか、女はすごすごと店の中へと引き下がっていく。
店の中には愛想の悪い中年のバーテンダーが酒を用意しており、バーカウンターの背後の席には十五人ばかりの柄の悪い男たちが座っている。
その中で一番偉そうに座っている男の顔は間違いない。ヘンリー・ウォーカーだ。
確信を得た私とケネスは店の中に入り、バーカウンターに座り、酒を注文していく。
私はまず、バーボンを注文し、一気に飲み干す。次にウィスキーを飲む。
次にまたバーボン。最後に瓶に入ったままのビールを喉の奥へと流し込む。
勿論、つまみも忘れてはいない。ビールを飲んだ後にバーカウンターのマスターにつまみとバーボンを注文し、つまみを摘みながらお酒を楽しんでいく。
すると、ケネスが小声で、
「おい、少しばかり飲み過ぎだぞ、遠慮しろ」と、嗜めたが私は気にする事なく飲み続けていく。
そして、上機嫌でウィスキーを飲んでいると、私の背後に例の賞金首が現れて、
「お客さん、ちゃんとお金を払えるんだろうな?」
と、警告してきたので、私は黙って男を突き飛ばす。
それを踏み倒すのだと判断した背後のギャングたちが一斉に銃を抜いていく。
どうやら、好機が来たらしい。私はケネスに顎で指示を出し、バーカウンターに飛び込み、マスターを殴って気絶させる。
それから、ギャングどもの一斉射撃を防いでバーカウンターから出るたびに銃を放って悪党どもをケネスと共に次々と撃ち抜いていく。
何せ、拳銃をそれまでの回転式拳銃から妹から入学祝いに送られた自動式の拳銃へと替えたのだ。
前の銃よりも弾倉が多くて重宝している。お陰で、前よりも多くの敵を一度に撃てるようになったのだ。
自動式の拳銃の前に多くの用心棒が倒れていく中で、ヘンリーはこのままでは済ませられないかと考えたのか、慌ててバーカウンターの中へと飛び込もうとしたのだが、バーカウンターに背中を預けていた私は中に突入した男に銃を突き付けて、
「これで私の勝ちね。あなたも慌てているでしょうね。なにせ、飛び込んだら私が銃を構えて待っていたのだから」
ヘンリーは悔しそうに歯を鳴らしていたのだが、私は容赦なく男の頭を撃ち抜く。
その死体をバーカウンターの中から残った男たちへの警戒への意味も込めて投げてやる。
すると、地面に銃を落とす音が聞こえた。
試しに、私がバーカウンターの隙間から銃を構えて酒場の中を覗き込むと、残った三人ばかりの用心棒たちが両手を震わせていた。
私はケネスに見張りを頼み、警察署に保安委員を呼びに向かう。
その後、懸賞金を貰う途中で話を聞くと、あの酒場は地元のギャングの経営している酒場だったらしく、これまでも用心棒と共に相当に悪どい商売をしてきたらしい。
私はグリップに止められて渡された懸賞金を受け取り、明日渡す事を約束し、家への帰宅を要請した。
警察署の送迎用の馬車に揺られて帰る途中でなぜか、私は吐き気を催してしまう。
ここで吐いては迷惑なので、ここで我慢しておいたのだが、やはり、飲み過ぎるのもいけないものだ。
私は屋敷のメイドからこの後に叱責を受ける事を考えると思わず身震いしてしまう。
やはり、飲酒は体に悪い。そう思わされたのだが、やはり、酒が不足してくると同じような事をしてしまうかもしれない。
私は自分を恐れるような震えを起こしながら、早く屋敷に着けと心の中で馬車を急かすのだった。
「気の毒だがね、ウェンディ。それは難しい話だ」
ケネスの言葉に私は思わず席から立ち上がり、彼の顔を覗き込む。
「ええ!?どうしてよ!私だってたまにはお酒を飲みたいわ!」
「別に禁酒をされているわけではないだろ?一日一杯だったらーー」
ケネスが何が何でも駄目だという事を告げようとした時だ。教室の扉を開く音が聞こえて、焦った顔のマーティが姿を表す。
「た、大変だッ!賞金稼ぎ部の緊急収集だッ!ケネス!ウェンディ!早く来てくれ!」
『緊急収集』という単語を聞いてはいても立っても居られないだろう。私もケネスも席を立って部活棟へと向かう。
部室に入ると、エマ部長は重い顔で苦い溜息を吐きながら呟く。
「……今回、お前たちを緊急収集したのは言うまでもない。最近、シティーの酒場にある男が潜入しているという噂を耳にした」
エマ部長は机の引き出しから、その男と思われる手配書を机の上に叩き付ける。
その男の風貌はいかにもギャングですと言わんばかりの顔である。加えて、真っ黒なテンガンロンハットが悪人だという事に拍車を掛けているような気がする。
「こいつだッ!この男、ヘンリー・ウォーカーという男はこれまでに三件の殺人を犯して手配されている手配犯だッ!この男は地元の保安委員にシティーの酒場で用心棒を働いているという噂を聞いた。そこで、お前たちの誰かに潜入捜査をしてもらいたいのだがーー」
私はここで勢いよく右手を挙げて、
「私とケネスに任せてください!必ず、保安委員に引き渡してみせますから!」
ついでに私はエマ部長の座る席を勢いよく叩いて、彼女に異論を挟む暇を与えない。
エマ部長はここで空咳をして、
「そ、そうか……なら、お前たちに任せてみようか」
私は満面の笑みでケネスを連れてシティーへと向かう。
一度、家に寄り、二人に夕食は不要と伝えてから、外に待たせていた友人と共にシティーへと馬を走らせていく。
シティーはホテルの事件を機に来ていなかったのだが、久し振りに見て回るのは楽しかった。
もうそろそろ夜も更けている頃だ。シティーの真ん中で男が叫んでいる事に気が付く。
堪りかねた私が声を掛けると、彼は涙を流し、右横の酒場を指差す。
「あ、あいつらに騙されたんだぁ~ちくしょう、ビール二本で三十五王国ドルも取りやがって……」
その言葉を聞いて二人で顔を見合わせてこの店にヘンリーが潜んでいる可能性が高いと突き止める。
そしてあの男が止めるのを無視して酒場へと入っていく。
酒場の前で高価な赤い色の絹のドレスを着た金髪の女性がケネスに声を掛けようとしたのだが、彼の背後に私が付いているためか、それともケネスが鋭い視線で睨んだためか、女はすごすごと店の中へと引き下がっていく。
店の中には愛想の悪い中年のバーテンダーが酒を用意しており、バーカウンターの背後の席には十五人ばかりの柄の悪い男たちが座っている。
その中で一番偉そうに座っている男の顔は間違いない。ヘンリー・ウォーカーだ。
確信を得た私とケネスは店の中に入り、バーカウンターに座り、酒を注文していく。
私はまず、バーボンを注文し、一気に飲み干す。次にウィスキーを飲む。
次にまたバーボン。最後に瓶に入ったままのビールを喉の奥へと流し込む。
勿論、つまみも忘れてはいない。ビールを飲んだ後にバーカウンターのマスターにつまみとバーボンを注文し、つまみを摘みながらお酒を楽しんでいく。
すると、ケネスが小声で、
「おい、少しばかり飲み過ぎだぞ、遠慮しろ」と、嗜めたが私は気にする事なく飲み続けていく。
そして、上機嫌でウィスキーを飲んでいると、私の背後に例の賞金首が現れて、
「お客さん、ちゃんとお金を払えるんだろうな?」
と、警告してきたので、私は黙って男を突き飛ばす。
それを踏み倒すのだと判断した背後のギャングたちが一斉に銃を抜いていく。
どうやら、好機が来たらしい。私はケネスに顎で指示を出し、バーカウンターに飛び込み、マスターを殴って気絶させる。
それから、ギャングどもの一斉射撃を防いでバーカウンターから出るたびに銃を放って悪党どもをケネスと共に次々と撃ち抜いていく。
何せ、拳銃をそれまでの回転式拳銃から妹から入学祝いに送られた自動式の拳銃へと替えたのだ。
前の銃よりも弾倉が多くて重宝している。お陰で、前よりも多くの敵を一度に撃てるようになったのだ。
自動式の拳銃の前に多くの用心棒が倒れていく中で、ヘンリーはこのままでは済ませられないかと考えたのか、慌ててバーカウンターの中へと飛び込もうとしたのだが、バーカウンターに背中を預けていた私は中に突入した男に銃を突き付けて、
「これで私の勝ちね。あなたも慌てているでしょうね。なにせ、飛び込んだら私が銃を構えて待っていたのだから」
ヘンリーは悔しそうに歯を鳴らしていたのだが、私は容赦なく男の頭を撃ち抜く。
その死体をバーカウンターの中から残った男たちへの警戒への意味も込めて投げてやる。
すると、地面に銃を落とす音が聞こえた。
試しに、私がバーカウンターの隙間から銃を構えて酒場の中を覗き込むと、残った三人ばかりの用心棒たちが両手を震わせていた。
私はケネスに見張りを頼み、警察署に保安委員を呼びに向かう。
その後、懸賞金を貰う途中で話を聞くと、あの酒場は地元のギャングの経営している酒場だったらしく、これまでも用心棒と共に相当に悪どい商売をしてきたらしい。
私はグリップに止められて渡された懸賞金を受け取り、明日渡す事を約束し、家への帰宅を要請した。
警察署の送迎用の馬車に揺られて帰る途中でなぜか、私は吐き気を催してしまう。
ここで吐いては迷惑なので、ここで我慢しておいたのだが、やはり、飲み過ぎるのもいけないものだ。
私は屋敷のメイドからこの後に叱責を受ける事を考えると思わず身震いしてしまう。
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