王立魔法学院の落第生〜王宮を追放されし、王女の双子の姉、その弱い力で世界を変える〜

アンジェロ岩井

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オール・ザ・ソルジャーズマン編

軍放出セール

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「動かないでッ!撃つわよ!」
私は通行人を人質に取った一人の賞金首に向かって叫ぶ。
だが、賞金首は動揺さえせずに私に向かって高笑いをして、
「ハッハッ、そんな弱々しい銃でオレを撃ち殺すつもりか!?そんな事は無駄なんだよッ!何せ、オレには軍用拳銃があるんだからなッ!」
確かに、目の前の男が右手に握っているのは軍用の自動式拳銃。
この拳銃を何処で手に入れたのだろうと私が考えていると、男は人質になった若い男性の頭に銃口をグリグリと突き付けて、
「どうだ!?これでお前は手も足も出ないだろうッ!アッハッハッ、は?」
最後の言葉が疑問詞になったのは男の額から一筋の血が流れているからだろう。
男が頭から血を流し意識を失い倒れている瞬間を狙って人質になった男が悲鳴を上げながら逃亡していく。
これで、賞金首の男は死亡し、仕事は終わった後だ。私は周囲の視線など気にする事なく男の死体を抱えて馬に乗せて警察署へと向かう。
賞金を受け取る過程で係の保安委員の方に怒られてしまったのだが、撃たなければ人質が殺されていたという可能性を考慮したと告げてその場から解放される。
そして、賞金を受け取る途中に保安委員の男が不意に呟く。
「そう言えば、最近妙な事が起き続けているんだよな」
「妙な事ですか?」
私の疑問に保安委員の男は最近は軍の放出品セールがあまりにも多過ぎるという事だった。特に武器の放出が顕著に現れており、軍の武器を購入し犯罪に使うケースが後を立たないらしい。
先程の男もそうだったそうで、軍用の拳銃を購入して悪事に及んだらしい。
「……それで手配されて賞金首になったと?」
「あぁ、もし、軍の武器放出セールとやらが無かったら、あの男は犯罪なんて犯していなかったかもしれないな……」
金を渡す係の男の顔に陰りが見えたのは気のせいではあるまい。
確かに、最近は軍の放出品セールが多過ぎる。軍の武器放出セール。それは軍が不要になったあるいは使わなくなった装備品を一般の人に販売するセールであり、そこでは軍で使う日常品や雑貨品は勿論のこと、ナイフや銃などの武器も売られているのだ。
今回の男は近場で開かれた例のセールで購入したという事らしいが、確かに今までの統計から見ても武器の放出量が異常なような気がする。
特に武器ばかりが頻繁に一般に売り渡されているような気がする。
私は責任者の名前を調べていると、そのセールの責任者の名前全てにライアンなる高官の名前が書かれている事に気が付く。
一体、このライアンなる人物が何を考えているのかと一人、警察署の資料室で頭を抱えていると、背後から声が掛けられた事に気が付く。
そこには長いオレンジ色の髪の生徒会長が怪し気な笑みを浮かべてその場に立っていた。
「はーい、三日振りだねぇ~ミス・スペンサー。三日前のキミは本当に素晴らしかったよ。本当に私、見惚れちゃってさぁ~どうして、男子に生まれなかったのかなってちょっと後悔してみたりもしてるかな、かな」
会長は頬を火照らせて腰をくねらせていく。やはり、この人が何を考えるのか理解できない。私が軍の事件を嗅ぎ回っている事が気になったのだろうか。
そんな事を考えていると、彼女は近場の軍の放出セールのデータの載った紙を覗き込む。
「ふーん、放出品かぁ~私もぉ~最近困っているんだよね。誰かが武器を横流しにするもんだからさぁ、このシティーの治安が乱れていくんだよぉ~それだけじゃあないね。これは私の友達から聞いた話なんだけどーー」
会長の友達の話はあまりにも突拍子であった。だが、同時に軍部がそんな事を考えていてもおかしくないと言わんばかりの説得力を秘めていた。
と、言うのもここ最近の武器の大量放出には一部の軍の高官たちがクーデターを目論んでおり、それに無法者を巻き込んで臨時の兵士を作るための処置だとされている。
あくまでも、会長の友人の推測に過ぎないという話だというのだが。
私は会長に向かって問い掛ける。
「でも、流石に王国の軍隊が王国の国民に銃口を向けたりしますか?ましてや、国王陛下に銃を向けたりするなんてーー」
「それが出来ちゃうのよ。むしろ、その燻った軍の高官とやらが一番恨みを持つのは陛下や王室だと思わない?」
その言葉には不思議な説得力があった。百年前の英断については現在まで論争が続いており、一部ではこの文民統制シビリアン・コントロールに反発し、国のために働く軍人にもっと力を持たせるべきだと主張する声もある。
それに対しての反対派の反論は軍が力を持ち過ぎると抑えが効かなくなり、やがては暴走してしまうという考えだ。
互いに杞憂だの戦争屋だのと煽っていく場面も酒場などではよくその事について話す大人の姿が見える。
私としてはどちらとも言えない所だが、会長は違うようだ。彼女はニヤニヤと笑いながら、
「ねぇ、考えてもみてよ。軍隊なんてものがあるから、こんな凶悪な犯罪者が増えるんだよ。いっその事、軍隊なんて縮小して自分たちの手で自衛すれば良いのよ。何のために銃を持つ権利が国から求められると思っているんだろうね?」
会長は私に向かって問い掛けたが、私はこの件に関しては本当に何も言えないのだ。
そんな時だ。この街を訪れていた軍人の肩を打ち抜き、過激派が酒場に立て籠ったという事件が発生したのは。
保安委員の男が慌てて扉を開けてそのニュースを伝えに来た時には無意識のうちに立ち上がり、教えられたシティーの小さな酒場へと走っていく。
小さな酒場では眼鏡をかけたいかにも真面目ですと主張せんばかりの学生が入り口の前で自分よりも大きな体格の若い高官の男の肩を負傷させ弱った男を人質に周囲の人間に向かって軍用拳銃を発砲して暴れていた。
「テメェら、動くんじゃあねぇぞ!もし、テメェらが約束を破ってオレの側に来てみろ、この男をぶっ殺すからなッ!」
学生は両目から涙を流しながら周りに叫ぶ。
どうやら、相当に興奮しているらしい。だが、そんな不安定で少しでも気が変われば直ぐにでも殺されそうな男に人質にされても動揺しないのは流石は軍人と言うべきだろうか。
この男の覚悟に答えて、私は一刻も早くこの男を助けるべく酒場へと向かう。
不安定な男は私が姿を表すのと同時に、震わせながらその長い自動拳銃の筒を向ける。
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