王立魔法学院の落第生〜王宮を追放されし、王女の双子の姉、その弱い力で世界を変える〜

アンジェロ岩井

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オール・ザ・ソルジャーズマン編

生徒会室の陰謀

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共和国の大統領官邸は宮殿の様だと揶揄される程、大きな建物であった。いや、設計者は当初、大統領という期限付きの国王の存在を認知していなかったので初代大統領のためだけにこの官邸を作り上げた可能性さえもある。
鮮やかな黒壇の建物にそれを大きく取り囲む塀。その塀を潜り抜けた先に存在するのは歴代大統領の白の像が立ち並ぶ真っ青な芝が敷き詰められた庭。
庭には噴水に可憐な木々が立ち並んでいた。
そして官邸の中央に立ち並ぶ建物の尖った屋根のてっぺんには共和国の象徴である国旗が掲げられていた。
その国旗が掲げられている官邸の中央の塔の最上階、ここに大統領の執務室があった。
レイモンド・ストロンバーグはニューロデム共和国の現在の大統領にして二回目の選挙を国民の五割の支持を得て当選したここ最近の共和国でも有数の人気を誇る大統領だった。
黒のフロックコートに同じ色の上下のスーツ。藍色のハプタイと呼ばれる首飾りを身に纏う白髪の老人は国の最高権威であり、同時に今年で84歳になる四大国家の中の指導者でも一番年老いた人物であった。
ストロンバーグ大統領は歴代の大統領に引き継がれた豪華な金と黒を基調とした書机の上で希少な青色の鳥の羽を使用した羽ペンを使用し、ウィンストン・セイライム王国の国王への感謝状を綴っていく。
ストロンバーグは何回か自分の書いた感謝状を確認した後に、自分の出来に満足して首を縦に動かすと肘掛けの椅子から立ち上がり、大統領専用の呼び鈴を鳴らす。
大統領の呼び鈴に従って登場したのは大統領付秘書を務める若い男、ロイス・ドラックスであった。
ロイスは大統領直筆の書籍を受け取ると頭を下げて出て行こうとするが、自分が先程から思っていた言葉を口に出してしまう。
「大統領、あなたはマッケンジーにお怒りではないのですか?」
「怒る。私がか?むしろ、王国には感謝しておるよ。あのバカどもが何かを喋る前に始末してくれてな」
大統領は白い髭に覆われた口元を怪しく揺らす。
その仕草は彼が邪魔になった部下を切り捨てる時に浮かべる笑みそのものであった。彼は長年、政敵を追い落とす時、ヘマをした部下を左遷する際、もしくは部下に命じて粛清する際に浮かべる笑みそのものであった。
彼は若い秘書であるものの、大統領に仕えてからの日数は四年となり、その間に彼の犯す陰謀の数々をこの目で目撃していた。
国内には国民への人気取り、外交では巧みな腹芸。どれを取っても一流だった。彼は歴代の優秀な大統領に、いや、建国の志士にさえその優秀さは劣らないだろう。
この老人は老いたとはいえ手抜かりすることは無いだろう。むしろ、若い時よりも年老いて経験を積む事により、更にしたたかさに磨きを掛けたかもしれない。
茶色の髪をした青年はこれ以上、彼の威に押されたくはないとばかりに無言で大統領の執務室を離れようとするが、大統領は背後から声を掛けて彼の退出を止める。
「待ちたまえ、ミスター・ドラックス。この後にキミに政治の事を伝授しようと思ってな。なぁに、年寄りのお節介に過ぎん。気楽に聞きたまえ」
ストロンバーグ大統領は肘掛け椅子から立ち上がると、大統領の書机の前に広がる二つの長椅子のうちの片方に座り、彼にもう一つの長椅子に座る様に勧める。
「それで、大統領……政治の話というのは?」
「あぁ、私の処世術の事さ、若いキミに伝授しておこうと思ってな。いずれ、キミは大統領の椅子に就く男だ。だが、その前に私から大統領としての話を聞いていた方が良いだろう?」
その言葉を聞いてドラックスは首から汗を流し、冷や汗を垂らしながら首を縦に動かす。
「キミも知っての通りだが……」
大統領は信頼するこの男に後継者たる器と認めた青年に自分の経験と政治術とを話していく。











「ストロンバーグ大統領からの手紙が?どうして、またこんな早くに」
「恐らく、ストロンバーグ大統領はマッケンジーやフォークナイト・ゲイシーが単独で事件を起こしたと説明したかったのでしょうね。陛下は共和国と事を荒立てないために、大統領からの手紙を受け取ったらしいわよ」
私は部活に集まった仲間たちにこれまでの経緯を話していく。特に、この事件で軍人の兄を失ったクラリスの動揺は抑えきれなかったものらしく、悔しそうに下唇を噛み締めて、
「どうしてよッ!どうして、そんな理由で許しちゃうの!?クーデターを煽ったのはそのストロンバーグなのにッ!」
「落ち着いて、証拠がないわ。外交上の問題もあるしーー」
「外交の問題が何よッ!ウェンディ!あなた公爵家の令嬢なんでしょ!?なら、王様を説得してよ!ストロンバーグを引き摺り出してーー」
「物騒ねぇ~やっぱり、お兄さんを撃ち殺されたのはショックだったのかしらぁ~」
その言葉を聞いて私たちは入り口に現れたオレンジ色の髪の会長と部活連、頭目のルパート・グリフィスの姿を一斉に見つめていく。
会長は顔に不気味な笑顔を浮かべながら、ルパートはブスッとした顔で懐から紙を取り出して、その紙を私たち一堂に見せていく。
「これは?」
私の問いに男は答えない。ただむすっとした顔で取り出した紙を机の上に置いてその人差し指で無造作に射す。
部室の机の上に置かれた紙をエマ部長が拾い上げて私たちに見せていく。
その紙には私たちを驚かせるのに相応しい程の内容が書かれていた。
「国王陛下の在位三十周年記念式典の会場がこの街になった!?」
副部長が大きな声を上げた。
「しかも、その式典が開かれるのは今月の末だ。どうやら、三年生にとっては最後の晴れ舞台になりそうだ」
エマ部長は緊張のために強く紙を握り締めていく。
だが、緊張に震える部長とは対照的に会長は可愛らしい笑い声を漏らして、口元を隠して笑った後に、私を指差して、
「あなたを私の直の護衛役に任じるわぁ~要するに、あなたの役割は私の護衛として一緒に付いてくる事ねぇ~一緒に国王陛下に頭を下げるの。とっても名誉の事よ。普通なら、国王陛下と謁見するなんて滅多にあるもんじゃないから、なかなかできないよ。そんな事」
私は確信した。会長は私の正体を知って意図的に護衛をやらせようとしているのだ。私が国王の実の娘だと知った上で……。
私は下唇を噛み、この任務を辞退しようと思ったが、ここで辞退するのも何か癪に触る様な気がして会長の指示に従う事を受け入れた。
会長は勝ち誇ったような笑みを浮かべて小さな声で「よろしくね」と呟くて、もう一人の自身の護衛にクラリスを指名する。
クラリスは私と違って断る理由などない。彼女は会長の質問を即決した。
会長は護衛役が決まるともう一度可愛らしく笑って、手を振って部活練の頭目と共に部屋を後にした。
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