王立魔法学院の落第生〜王宮を追放されし、王女の双子の姉、その弱い力で世界を変える〜

アンジェロ岩井

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大統領の陰謀編

会合式への招待状

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私は相棒から頂いたブランデーを飲みながら、昨日までの事を思い返す。
昨日は怪物が狩られたという事が校長の口から大々的に伝えられた後に強制的な早期下校が解除された事が広められ、その日の放課後に生徒会や部活連の選挙ではなく、一般的な部活の部長を決める選挙が行われた。当然、私の所属する賞金稼ぎ部でも投票が行われたが、二年生で他に立候補する者が居なかったためか、街を荒らしていた怪物の駆除に一役を買ったジャネット・シャストルに全ての票が注がれていく。
勿論、私も一票入れた。ジャネットはいや、ジャネット部長は乗り気ではなかったらしいが、部員達は部長は部室に来て本だけ読んでいてくれと言うと、部長は嬉々とした表情を浮かべて満足そうな様子で、
「良い」と、だけ述べた。
勿論、部長の任務を代行する副部長も決める事になり、それに私が推薦されたのだが、私は丁重にお断りする事にした。全員は不満そうな顔をしていたのだが、今年度の副部長。つまり実質的な部長となれば、やはり行動は制限されてしまう。なので、代わりに二年生の別の先輩を推薦し、私はその場を逃れた。
私が推薦した新しい二年生の副部長は短めの茶色の髪に綺麗な茶色い目をした男前と呼べる程の器量を持つ先輩。
勿論、顔だけで選んだのではない。彼を選んだのは私だけではなく、前副部長のフックの推薦もあったのだ。
彼は私に二年生の新たな副部長、ジョー・スパイダーを紹介し、自分はいざぎよく三年生と共に去っていく。中々にいざぎよい去りっぷりである。
こうして新しい部長と副部長が就任し、賞金稼ぎ部は一段落したのだった。
私はそれまでの事を思い出してから、友人から貰ったブランデーを飲んで眠りに付く。
その翌日にケネスに礼を言うと、彼は頬をかきながらなぜか視線を下に向ける。どうしてだろうとその日授業の間も考えていたのだが、放課後に行われた白熱した生徒会長選挙のためにそれもいつの間にか頭から吹き飛んでしまう。
ちなみに、学院における選挙は三人の執行委員が立候補し、自分たちに票を入れるように集まった生徒達に呼び掛けていくという形になっている。
だが、私はいや、いわゆる〈杖無し〉と呼ばれる劣等生組から見れば、誰でも良かったのだが、棄権するわけにもいかないのでなるべく良さそうな人物に投票しておく。
私は自分の大切な一票を演説の中で唯一、下級生について言及したダニー・アリゲーターという男に一票を入れる事にした。
ダニーは生徒会やら部活連の幹部を連想させる重い眼鏡をかけた人物で、いかにも真面目そうという印象を与える男であった。こうして、新しい生徒会長も決まり、部活連の方でも幹部による推薦の結果、新たにエドワード・ジョーズという男が推薦され、新たな部活連の頭目に就任した。このエドワードという男性は少し前までのルパート・グリフィスとは異なり、いかにも体育会系と言わんばかりの立派な体格の持ち主であり、彼が拳を振れば、サンドバッグが大きく奥に揺れてしまう。
そんな感じの印象を受けた。こうした二つの学校を巻き込んだ末に二学期も終了し、冬の休暇に入る事となった。
冬休みにこれからは進学やら就職やらで忙しくなる先輩達を酒場で見送ってから、各々が家へと帰還していく。
こうして多くの人間が終業式の日に帰宅の準備をした後に翌日に、馬やら馬車やらを使用して元の家へと戻っていく。
本当に寂しくなるな。私がそんな事を考えながら屋敷に戻ると、屋敷の前に王家の紋章の彫られた黒塗りの馬車が置かれている事に気が付く。
どうやら、ピーターの父、マルトー・パンサーが現れたに違いない。
私は開かれていた柵から家に入り、自宅の馬小屋に馬を繋ぐと直ぐに二階へと駆け上がっていく。
二階の前回と同じ部屋では既にマルトーが行儀良く座って私を待っており、私が現れるのと同時に父から預かった話を切り出す。
話し合いの末に、私は父からの誘いに乗り、会合式にシンディ王女として出席する事を決めた。加えて、それを伝えにやって来たマルトーに私が怪物を駆除した事を伝え、父に報奨金を渡す様にせびる。
マルトーは冷や汗を拭ったものの、最終的には首を縦に振ってくれた。
最後に妹に元気だと伝えてくれと言付けして彼を宮殿へと返す。
窓から彼が馬車に乗り、門を開いて出て行く様子が見えた。
私は昨日、ケネスから貰ったブランデーをあおりながら、窓の下の光景を眺めていると、ふとした事に気が付く。
私は王族が儀式に着る様な服を持っていない。前にサラマンダー壊滅記念の際に開かれた学校のダンスパーティーの際に着ていったドレスが残っているのだが、あれを身に付けるのには少し難しいだろう。王族が社交界に出る際に身に付ける衣装はあのドレスよりももっと高価なのだから。
と、ここで私はある重要な事に気が付く。幾ら、向こうが私を嫌っているからと言っても流石にドレスの代金くらいは負担してくれるだろう。
更に、もし断られたとしても父自らが怪物を討ち取った勇士を今度の会合式に連れて行くというくらいに気に入っているのだ。ならば、その勇士に社交界の晴れ衣装くらいは負担してもらうのが義務ではないか。マルトーならそれくらいは言ってくれる筈だ。
私は嬉しみのあまりに寝台の上で体をくねらせてしまう。
翌日、朝食を終え学校の課題をやろうと二階に登る私をボニーが呼び止め、玄関に王国近衛兵団の制服を着た長い金髪の女性が立っているという旨を私に伝えた。
長い金髪の女性はキラキラと輝く金色の刺繍の施された紅色の制服を着ており、何処からどう見ても通常の兵士よりも上だという印象を与えていた。
彼は玄関で止めるピーターを押し除けて、玄関の前に停まっている王国の馬車を黙って指差す。
付いて来いという事だろうと解釈し、私が馬車に向かう。
私はピーターに屋敷の事を頼み、そのまま馬車で王都にまで揺られていく。
馬車の中で彼女は頭を下げて、
「お初にお目に掛かります。私の名前はティンク・ベルです。王国近衛兵団の隊長を務めております」
と、簡潔に挨拶をした。何というか硬い印象を受ける。もう少し柔らかくしたも良いのにと苦笑すると、彼女が険しい目を向けたので、私は苦笑いで誤魔化す。
どうやら、彼女はあまり冗談が好きなタイプではないらしい。
私は不安を胸に抱きながら、王都に向かう馬車に揺られていく。
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