王立魔法学院の落第生〜王宮を追放されし、王女の双子の姉、その弱い力で世界を変える〜

アンジェロ岩井

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大統領の陰謀編

会合に向かう馬車の中で

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「良いでしょうか、今回あなたが陛下から呼び出された目的はたった一つです。それはあなたの妹君、つまり、この国の王女殿下の身代わりとして会合式に出席する事です。それは確か、陛下がお遣わしになられた執事のーー」
「大丈夫、おおよその事はマルトーから聞いたわ。今回の事もバッチリと頭に入っているもの。それよりもーー」
「報酬の件ですよね?勿論、陛下からお預かりしております。ただ、現金よりもこちらの方がよろしいかと陛下が仰りまして、こちらの宝石をどうか、お納めください」
彼女が用意したのは王国ドルではなく、優しく光る大きな殆ど無色の宝石だった。どうやら、この宝石が私への報酬となるらしい。私は不満そうに宝石を眺めていたのだが、それを見た女騎士はジロリと私を睨んで、
「陛下の用意された品にご不満が?ミス・スペンサー」
彼女は最後の「ミス・スペンサー」という単語を強調して言った。どうやら、彼女は私の事をこの国の王女だとはみなしていないらしい。
基礎魔法が使えない事は余程、宮廷内では不利に働くのかもしれないな。
私は目の前で宝石の収められた箱を開けて私を見つめる女騎士を睨みながら密かに考えた。
私が睨んでいると彼女も私の視線に気が付いたのか、次第と眉間が狭まっていく。
なので、私は首を横に振って、
「いいえ、素晴らしいダイヤをありがとうと陛下に伝えて頂戴」
目の前の女騎士は丁寧に頭を下げて私の命令を受諾した。
それから暫くは無言での旅が続いたが、やがて私はある事を思い出し、彼女に向かって尋ねる。
「そう言えば、今回の会合式に名を連なる貴族の方々は何人いるの?」
「全員で十五名と言った所でしょうか、あなた様のお父様とお母様であるスペンサー公爵家夫妻を始め、グレイ侯爵夫妻、コーンフォール伯爵夫妻などが連なり、王国、帝国、共和国の方々と交流を図る予定です」
交流会を図るという事はやはり、舞踏会を行ったりするのだろうか。私としては美味しいワインとブランデーが飲めるだけで幸せなのだが、そうはいかないのが貴族社会だ。幼い頃からそれを見てきた私だからこそ言える。
というか、よくよく考えれば今回の式典で初めて私の形の上の両親となるスペンサー公爵夫妻と顔を合わせるのだ。
いや、初めてではない。幼少の頃に一度だけ会った事がある。
最も顔は朧げでどちらも荘厳な雰囲気を纏っていた事しか覚えていないのだが……。
と、そこで馬車が大きく揺れた後に馬車は宮殿の入り口に停留する。同時に騎士が立ち上がり、私を馬車から連れ出す。
私は二度目の宮殿を目にし、私は思わず歓声を上げてしまう。
が、直ぐに私の付き添いとして現れた女騎士に睨まれて真剣な顔付きに戻していく。
背後でゴホゴホと空咳をする彼女を尻目に、私は今回訪れたのは護衛の任務ではなく、王女の身代わりとして父に呼び出されて来たという事を改めて認識する。
『ホワイトハウス』と揶揄される白夜の宮殿の中に入り、前にも訪れた庭を潜り抜けて宮殿に入れられる。
宮殿に到着するのと同時に白のエプロンに黒のワンピースといった典型的な女性奉公人の服を着た少女たちが私を取り囲む。
私が思わず冷や汗を垂らしていると、背後の女騎士がパンパンと両手を合わせて大きな音を立てて、
「良いかッ!今から、お前たちにはミス・スペンサーを会合式の間だけ王女にさせるための準備を行ってもらいたいッ!手抜かりはするなッ!お姫様のように見せかけるのだッ!」
彼女はお姫様のようにと叫ぶが、私は宮殿の記録上では王女と表現される筈だ。
なのに、彼女の扱いは妹と似た平民を連れて来たかのような言い草である。
抗議をしたい気分だったのだが、周りの女性奉公人達に連行され、私は宮殿の衣装室へと連れ込まれてしまう。
宮殿の衣装室。両手扉を開けた先に広がる吹き抜け式のホールであり、その丸いホールを取り囲むように長椅子が設置されており、更にその背後に歴代の王族の衣服を保管したクローゼットが置かれている。
私がホールの中を見渡していると、一人の若い奉公人の女性がクローゼットを開き、歴代のお姫様の衣装が置かれたクローゼットには色とりどりのドレスが並んだ様子を私に見せ付けた。そこに並べられているドレスの生地や刺繍は街の服屋で買うドレスとは比較にさえならないかもしれない。
この部屋に入る事は宮殿に居た頃に許されていなかったために、私としても目新しい光景であり、呆気に取られていたのだが、普段の社交界のパーティーの準備のためにここに通い詰めている奉公人たちはそんな事を気に留める事なく、次々にドレスを引っ張り出しては着せ替え人形のように私を着飾っていく。
なんだか照れてしまう。この様子から見ると本当に自分が王女として宮殿に帰ってきたような気がした。
私が多くの奉公人に囲まれてドレスをセットしていると、もう一度扉が開かれ、そこに一人の奉公人が鏡面台を持って現れた。
鏡面台の大きな鏡に映る桃色のドレスに着飾った私は本当にお姫様のようであった。恐らく、宮殿から放逐されなければ今頃はこんな格好で妹と共に国民に手を振っていたのだろうか、と考えていると、更に扉が開き、一人の奉公人が金色に輝くティアラを持って現れた。
奉公人は私の上にティアラを置く。そして、私にもう一度鏡に映るお姫様スタイルの私を見せた。
私はティアラの飾られたお姫様姿の自分を見つめ、自分の知り合いの中の王子様役は誰にしようかと考えていると、コンコンと扉を開く音が聞こえた。
私が入室の許可を上げると入って来たのは執事のマルトー。
彼はティアラに高価なドレスというお姫様スタイルの私を見て思わず畏怖し、頭を下げたのだが、私は頭を上げるように言う。
そして、何の用で来たのかと尋ねると、彼はもう一度頭を下げて、
「国王陛下が呼んでおります。替え玉の女にしてアンダードームビーストを女を早う御前に出せ、と」
どうやら、父は本当に私を嫌っているらしい。名前まで呼びたくないとは。
私は真剣な表情で父の遣いを見つめて、
「分かったわ。もう準備もできたもの。行く準備はできてるわ」
と、頭を下げる彼を他所に部屋を出て廊下を歩いていく。
父と会うのは式典以来だが、緊張はしていない。いや、それどころかしっかりと話せなばと私は自分を奮い立たせた。
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