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大統領の陰謀編
四大国家の会合式
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私は玉座の前に呼び出され、慇懃な様子で玉座の上に座る王冠を被った中年の男の前に跪く。
その際に長いドレスの裾が地面に当たり、私は幼い頃に他の貴族や役人の奥方がこうして彼の前に跪く光景を思い出す。
母と妹は居ない。どうやら、父が追い払ったようだ。父は私に顔を上げるように指示を出し、険しい瞳で私を睨む。
王としての威厳に満ちた視線が私を突き刺す。
恐らく、並みの人間だったのならば震えが止まらなかったと言うかもしれない。
それくらい、父には王としての素質があったとも言えるだろう。
だからこそ、即位三十年を祝う記念式典の際にもあれ程の人間から支持されたのだ。そんな荘厳な雰囲気を身に纏う人間と対峙するのには緊張するだろう。
私はこの後の会合式に臨む各国のVIPが哀れに思えて来た。
そんな思惑を交えながらの睨み合いに終止符を打ち、最初に口を開いたのは父の方だった。
「ウェンディ・スペンサー。改めて確認する。アンダードームのビーストを倒したのはお前か?」
冷酷とも言える冷たい口調。父は私を試しているのだろう。この場で怒り出さないのかを。
だが、生憎、挑発は私の得意技ときている。こんな事で引き下がったりはしない。
私は影武者の公爵家の令嬢らしく、丁寧に頭を下げて、
「はい、勿論です。陛下に嘘を吐く必要などございませんもの。それに、陛下が私の事をお疑いならば、ティンクに宝石を届けさせたりはしないでしょう?」
父は無言で頷く。私は続けて、
「陛下は私を信用なさっております。サラマンダーを壊滅させ、この国の軍の暴走を止めた私を」
その言葉に周囲の人間が騒めく。幾ら実の娘とはいえ王位を剥奪された身の人間がここまでの事を言ったのだ。こう言った反応をされても当然だろう。
だが、父は騒めく貴族たちを右手を上げて静止させて、
「フン、思い上がるな。ワシはお前の銃の実力を勝っておるだけよ」
父はそう言って玉座に背中を預けていく。私という謁見者がいるのにも関わらず、両脚までも組んでいる。
私は不満に感じたものの、続いて父の話が終わるのを待つ事にした。
父は指を鳴らし、従者を呼び寄せると王家の紋章の描かれた一冊の本を持ってこさせると、従者にその本を渡させた。
私が首を傾げていると、父は私が両手で受け取った本を指差して、
「それがお前への褒美だ。王家の伝説。いわゆる滑稽無頭な事が描かれた作り話集とも言える本。この世には無いものと戦い勝利したお前には相応しい物では無いか?なぁに、宝石を没収したりはせん。それはワシからの個人的な贈り物なのでな」
その言葉を聞いて周囲の貴族たちがドッと笑っていく。
どうやら、私を未だに空想の世界を夢見るおめでたい少女だと思わせたいようだ。あの怪物が街を騒がせたのは事実であるのに。
私は不満に感じたのだが、直ぐに思い直す。
この豪華な王家の刺繍が分厚いハードカバーの本の表紙に施されている事から、一応は褒賞品として考えた方が良いのかもしれない、と。
私は大人しく貰った本を両手に抱えて再度頭を下げていく。
その様子を見た玉座の上の父は口元の右端を大きく吊り上げて、
「なぁ、冒険を夢見る少女よ。お前の役割である影武者の任は今からじゃ、くれぐれも油断めさせるな」
父はそう言うと右手で乱暴に私を追い払い玉座の間から去らせていく。
玉座から出て行く私を何人かの従卒が付き従ったのだが、思わず泣きたくなってしまう。どうして、こんなにも両親は私を嫌うのだろう。
私が透明の液体を溢していると、私と同じティアラに同じく高価なドレスを身に付けた私と同じ顔の少女が廊下の突き当たりから現れた。
妹は自分とティアラを付けている事に驚いたのだが、次に透明の液体を溢して、
「良かった……お姉様、王族に戻れたのですね。私はとても嬉しく思います!」
目を輝かせて妹は私の手を握ったのだが、私は黙って首を横に振ってこの格好をしている訳を説明していく。
妹は声を震わせて、
「そ、そんな……お姉様が私の身代わりに……」
「そう言った訳ではないと思うわ。ただ、私の銃の腕がーー」
「そんな事ありませんわ!お父様はお姉様を利用しているだけですわ!お姉様、お願いです!私と逃げてくださいませんか!?」
妹からの予想だにしない回答。その言葉に周囲の従卒たちも騒いでいく。
私は苦笑して、妹を嗜めようとしたが、妹は強い口調で、
「本気です!お姉様をこれ以上苦しめるのなら、私……」
「王女殿下!」
執事のマルトーが強いそれ以上の言葉を口にする前に激しい口調で止める。
マルトーは丁寧に頭を下げて、声を荒げた自分の非を詫びて、
「只今の発言は誤解を招く発言でございます。どうか、王族としての義務をお持ちくだされ……」
その言葉に従って妹は先程の自分の発言の非を認めた。だが、相変わらずの強い視線を向けて、
「分かりました。ですが……今回の会合式の時にお姉様が死ぬような事がありましたら、許しませんから……その時には私も王族の義務など放棄し、私は野に下ります」
妹の声は本気のものだ。その剣幕に誰一人反論できずに丁寧に頭を下げていく。
その後、妹は手を振って私と別れ、会合式の馬車に乗るまでの控えの間へ通されていく。
控えの間には白くて大きな四角い机があり、その上には多くの菓子や飲み物が載せられている。私を退屈させないように置かれたものだろう。
だが、私は用意された菓子や飲み物には手を付けずに、黙って父から渡された伝説集の本をめくっていく。
この国の伝説は中々に面白い。特に老いた二代国王の城の前に浮浪者の様な男が現れて、取り押さえられた事件などが載せられており、中々に良い暇潰しとなった。
私が適当に本をめくっていると、扉が開き、短い茶色の髪に青色の瞳をした煌びやかな衣装を身に付けた男が現れた。
男は私に向かって右手を差し出して、
「初めまして……というべきかな?私の名前はリチャード・スペンサー。スペンサー公爵家の現当主だ。表向きのキミの父というべきかな……」
私は表向きの父に手を伸ばし、握手を交わし、彼に連れられて城の中を進む。
そして、入り口に止まっている公爵家の紋章の描かれた黒色の馬車とそれを引く艶の良い赤毛の馬が待っていた。
私はその馬車に乗る。どうやら、これが会合式への片道切符らしい。
私は今後の式に身を震わせながら、馬車の中に用意された長椅子の上に腰を埋める。
その際に長いドレスの裾が地面に当たり、私は幼い頃に他の貴族や役人の奥方がこうして彼の前に跪く光景を思い出す。
母と妹は居ない。どうやら、父が追い払ったようだ。父は私に顔を上げるように指示を出し、険しい瞳で私を睨む。
王としての威厳に満ちた視線が私を突き刺す。
恐らく、並みの人間だったのならば震えが止まらなかったと言うかもしれない。
それくらい、父には王としての素質があったとも言えるだろう。
だからこそ、即位三十年を祝う記念式典の際にもあれ程の人間から支持されたのだ。そんな荘厳な雰囲気を身に纏う人間と対峙するのには緊張するだろう。
私はこの後の会合式に臨む各国のVIPが哀れに思えて来た。
そんな思惑を交えながらの睨み合いに終止符を打ち、最初に口を開いたのは父の方だった。
「ウェンディ・スペンサー。改めて確認する。アンダードームのビーストを倒したのはお前か?」
冷酷とも言える冷たい口調。父は私を試しているのだろう。この場で怒り出さないのかを。
だが、生憎、挑発は私の得意技ときている。こんな事で引き下がったりはしない。
私は影武者の公爵家の令嬢らしく、丁寧に頭を下げて、
「はい、勿論です。陛下に嘘を吐く必要などございませんもの。それに、陛下が私の事をお疑いならば、ティンクに宝石を届けさせたりはしないでしょう?」
父は無言で頷く。私は続けて、
「陛下は私を信用なさっております。サラマンダーを壊滅させ、この国の軍の暴走を止めた私を」
その言葉に周囲の人間が騒めく。幾ら実の娘とはいえ王位を剥奪された身の人間がここまでの事を言ったのだ。こう言った反応をされても当然だろう。
だが、父は騒めく貴族たちを右手を上げて静止させて、
「フン、思い上がるな。ワシはお前の銃の実力を勝っておるだけよ」
父はそう言って玉座に背中を預けていく。私という謁見者がいるのにも関わらず、両脚までも組んでいる。
私は不満に感じたものの、続いて父の話が終わるのを待つ事にした。
父は指を鳴らし、従者を呼び寄せると王家の紋章の描かれた一冊の本を持ってこさせると、従者にその本を渡させた。
私が首を傾げていると、父は私が両手で受け取った本を指差して、
「それがお前への褒美だ。王家の伝説。いわゆる滑稽無頭な事が描かれた作り話集とも言える本。この世には無いものと戦い勝利したお前には相応しい物では無いか?なぁに、宝石を没収したりはせん。それはワシからの個人的な贈り物なのでな」
その言葉を聞いて周囲の貴族たちがドッと笑っていく。
どうやら、私を未だに空想の世界を夢見るおめでたい少女だと思わせたいようだ。あの怪物が街を騒がせたのは事実であるのに。
私は不満に感じたのだが、直ぐに思い直す。
この豪華な王家の刺繍が分厚いハードカバーの本の表紙に施されている事から、一応は褒賞品として考えた方が良いのかもしれない、と。
私は大人しく貰った本を両手に抱えて再度頭を下げていく。
その様子を見た玉座の上の父は口元の右端を大きく吊り上げて、
「なぁ、冒険を夢見る少女よ。お前の役割である影武者の任は今からじゃ、くれぐれも油断めさせるな」
父はそう言うと右手で乱暴に私を追い払い玉座の間から去らせていく。
玉座から出て行く私を何人かの従卒が付き従ったのだが、思わず泣きたくなってしまう。どうして、こんなにも両親は私を嫌うのだろう。
私が透明の液体を溢していると、私と同じティアラに同じく高価なドレスを身に付けた私と同じ顔の少女が廊下の突き当たりから現れた。
妹は自分とティアラを付けている事に驚いたのだが、次に透明の液体を溢して、
「良かった……お姉様、王族に戻れたのですね。私はとても嬉しく思います!」
目を輝かせて妹は私の手を握ったのだが、私は黙って首を横に振ってこの格好をしている訳を説明していく。
妹は声を震わせて、
「そ、そんな……お姉様が私の身代わりに……」
「そう言った訳ではないと思うわ。ただ、私の銃の腕がーー」
「そんな事ありませんわ!お父様はお姉様を利用しているだけですわ!お姉様、お願いです!私と逃げてくださいませんか!?」
妹からの予想だにしない回答。その言葉に周囲の従卒たちも騒いでいく。
私は苦笑して、妹を嗜めようとしたが、妹は強い口調で、
「本気です!お姉様をこれ以上苦しめるのなら、私……」
「王女殿下!」
執事のマルトーが強いそれ以上の言葉を口にする前に激しい口調で止める。
マルトーは丁寧に頭を下げて、声を荒げた自分の非を詫びて、
「只今の発言は誤解を招く発言でございます。どうか、王族としての義務をお持ちくだされ……」
その言葉に従って妹は先程の自分の発言の非を認めた。だが、相変わらずの強い視線を向けて、
「分かりました。ですが……今回の会合式の時にお姉様が死ぬような事がありましたら、許しませんから……その時には私も王族の義務など放棄し、私は野に下ります」
妹の声は本気のものだ。その剣幕に誰一人反論できずに丁寧に頭を下げていく。
その後、妹は手を振って私と別れ、会合式の馬車に乗るまでの控えの間へ通されていく。
控えの間には白くて大きな四角い机があり、その上には多くの菓子や飲み物が載せられている。私を退屈させないように置かれたものだろう。
だが、私は用意された菓子や飲み物には手を付けずに、黙って父から渡された伝説集の本をめくっていく。
この国の伝説は中々に面白い。特に老いた二代国王の城の前に浮浪者の様な男が現れて、取り押さえられた事件などが載せられており、中々に良い暇潰しとなった。
私が適当に本をめくっていると、扉が開き、短い茶色の髪に青色の瞳をした煌びやかな衣装を身に付けた男が現れた。
男は私に向かって右手を差し出して、
「初めまして……というべきかな?私の名前はリチャード・スペンサー。スペンサー公爵家の現当主だ。表向きのキミの父というべきかな……」
私は表向きの父に手を伸ばし、握手を交わし、彼に連れられて城の中を進む。
そして、入り口に止まっている公爵家の紋章の描かれた黒色の馬車とそれを引く艶の良い赤毛の馬が待っていた。
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