王立魔法学院の落第生〜王宮を追放されし、王女の双子の姉、その弱い力で世界を変える〜

アンジェロ岩井

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大統領の陰謀編

お姫様を愛した大統領

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結論から言えば銃を奪取するのは大統領の方が早かった。大統領は例の小型の拳銃を拾い上げて自動拳銃を拾い上げようとする私に向かって銃口を突き付ける。
思わず冷や汗を垂らす私。銃を構えてニヤニヤと笑うストロンバーグ。
対照的な表情を浮かべる二人の男女。もう結果は火を見るよりも明らかに違いない。幾ら私の銃の腕が良くても、拾い上げる前に小型式の拳銃を放たれれば終わりだ。あの男の持つ嫌らしい性質の拳銃から放たれた弾丸は二日間、私を苦しめに苦しめ抜いた末に殺すだろう。
私は思わず歯をギリギリと鳴らす。それを見たストロンバーグは勝ち誇った表情を浮かべた後に空いた左手を鳴らして、砂の軍隊を増やしていく。
鋭い砂の槍を構えた砂の兵士達が一歩、一歩、着実に私の元へと向かっていく。
あの男が砂の軍隊を増やす隙を狙い銃を拾い上げたが、撃つまでにはいかなかった。流石は大統領にまで登り詰めた男というべきだろう。彼は私の考えなどとっくに見通しており、余裕のある大人の態度を見せていた。それでいて何故か銃を懐の中へと仕舞い込む。
彼は新たに作り出した兵士だけで私を窮地に追い込める事を確認したのだろう。
その証拠に砂の兵士たちは隊列を組んで私に迫る。
万事休すか。私はその場で固まってしまう。魔法を吸収しようにも、新たに増えた数も含めて十体の砂の兵士。
あまりにも部が悪い。どうすれば良いのかと考えるが、運の悪い事に私の頭の中に神は降りてこない。
そしてこうしている間にも砂の兵士が私を取り囲む。
私は銃を構えて砂の兵士に向けるが、こんなものが何の役にも立たない事は知っている。例え、ほんの気休め程度の意味しかなくても向けていれば安心できる。
そんな侘しい思いに浸りながら、拳銃を向けていたが、ここで私の頭はある一つの点に達する。
それはこの砂の兵士を吸収し、次々と自分の持ち駒に変えていくという計画だ。
もし、この計画が成功したのならば、相手の動揺は計り知れないものだろう。
ボードゲームの世界に例えると自分の持ち駒が相手に強引に奪い取られるような感覚と例えても良いだろう。
私は意を結し、自分の左手の掌を広げて砂の兵士達を吸収し、自分の兵士と変えていく。
最初に寝返らせた兵士を作り上げたのは砂の兵士の一体が私に向かって砂の槍を突き刺す距離にまで迫った時だ。
私は直ぐ近くにまで迫った別の兵士を左手に取り込む。
そうして、槍を突き刺そうとした砂の兵士を弾き、私の作り上げた兵士がその兵士を同じ砂の槍で突き殺す。
私は混戦の末に壊れた兵士を除いて大統領の手から六体の兵士を奪取する事に成功した。
だが、その光景を見てもストロンバーグは余裕のある笑みを崩さない。
それどころか、ますます顔の笑みを深めているような気がする。
不気味な男だ。私が思わずたじろぐとあの男は再度、腕を振るって砂の兵士を新たに作り上げていく。
すると、口元を緩めて、
「フッフッ、怖いかね?だがね、私は絶対に怯えたりはしないよ。キミに撃ち殺される?結構、お姫様に殺されるというのも一興だ。あの世で苦しむ?結構、私はそれなりの手を使用して政界で権威と権力を振るってきたからね。それくらいの罰は覚悟しているさ」
私は悟った。ストロンバーグは失うものの一切ない“奴隷”だと。
古来より、市民は王や皇帝を倒せないと言われている。と、言うのも市民には守るべきものが多数あり、王や皇帝に逆らえばそれらのものは全て奪い取られてしまうからだ。
だが、奴隷は違う。確かに王や皇帝どころか市民からさえも虐げられてしまう存在であるが、彼ら彼女らは市民と違って失うものなど何もない。
だからこそ、いざとなれば、王や皇帝に逆らう根性を持っている。
目の前の男は王様かと思われたのだが、それとは真反対の根性。失うものなど何も持たない、全てを捨て去り掻い潜る奴隷の根性を持っていた。
彼の目的は四大国家を共和国に統一する事と私、いや、お姫様を自分の妻にする事。その二点のみ。
それ以外の事には無頓着と言っても良い。恐ろしい男だ。
私は自分に従っている砂の兵士を向かわせてストロンバーグを狙わせる。
六体の私の兵士とストロンバーグが新たに作り出した七体の兵士が所々に剥がれた芝生の上で激突していく。
私は両陣営の激突の合間を縫ってストロンバーグの懐へと潜り混む。
私はストロンバーグの左脚を狙い引き金を引く。
足を撃たれた衝撃のためにあの男は悲鳴を上げて膝を突く。
続けて拳銃を取り出そうとした右腕に向かって引き金を引く。
ストロンバーグは再度悲鳴を上げた。加えて、左腕にも一撃を喰らわせる。
これで、もうこの男は砂の兵士を作り出す事は不可能になるだろう。
だが、それでも男は涙を流す事なく私を少年のように純粋な瞳で見上げて、
「銀色の長く整えられた髪に、美しい顔に、豪華なティアラ、まさしくキミは私の憧れたお姫様プリンセスそのものだッ!ちょっと、触ってもいいかな?」
「ダメよ。それよりも、可哀想だけれど、あなたももう終わりよ。多くの要人が証人よ。あなたが歪んだ世界統一を起こそうとしたというね……」
「歪んだ世界統一か……ハッ、間違ってはいないな。だがね、私は後悔などしていないよ」
そう言うと彼は指を鳴らし、背後で争いを繰り広げていた砂の兵士たちを元の砂へと戻していく。
それに従って私も砂の兵士を元に戻していく。それを見たストロンバーグは口元に微かな笑みを浮かべて、
「キミもそうしてくれたか、ありがたいな。さてと……私を撃ちたまえ。私は既に敗残者だ。ここで撃ち殺したとしても正当防衛……問題はないだろう?」
その言葉を聞くと私は黙って銃を下げる。男は呆れたように口をポカンと開けていたが、直ぐに大きな声で笑って、
「そうか、そうか、私を生かしておく事にしたのかッ!それもまた良いだろう!だが、キミはきっと後悔するぞ、私を生かしておいた事にな……」
私は喜んだ表情の男を抱えてその場を去ろうとした時だ。突如、男の眉間に銃弾が突き刺さり、男は地面の上に倒れてしまう。
何処からこの弾は飛んだのだろう。私が辺りを見渡すと、塀を越えて回り込んだのであろう。私の背後に回転式の拳銃を構えたハンサムな男が立っていた。
男はストロンバーグを殺した拳銃を私に向けた。彼真っ赤な怒りを宿した瞳が私を真っ直ぐに射抜く。
銃弾は残り一発といった所か。私は予備の弾丸も無いために、この男をどうして退けて良いのか分からなくなってしまう。
ただ、この男の瞳の中に宿した炎を見て察するに、この男に説得の類は通じないだろうというのは確実に分かった。
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