王立魔法学院の落第生〜王宮を追放されし、王女の双子の姉、その弱い力で世界を変える〜

アンジェロ岩井

文字の大きさ
139 / 211
エージェント・ブリタニアン編

風変わりな留学生

しおりを挟む
無事に一年生から二年生へと進学し、私にもとうとう後輩が出来る年にもなった。今まで先輩と呼ぶ事しか出来なかった私たちが先輩と呼ばれるのだ。
なんだか少し照れる。一年生と二年生との間で大きく変わったのは午前に体術のメニューが盛り込まれているという事だ。だが、それ以外の点で特に変更された点はない。
教師は去年の先生方が引き継ぐし、授業は去年よりも難しい内容になるだけなのだ。
午前と午後が逆転しただけのメニューに辟易してしまうのだが、入学時の成績というのはそこまで響くものなのだろう。
嫌になってしまう。
私はそんな事を考えながら、体術の授業を受けるために階段を降りていく。
勿論、体操着だ。階段を降りていく私やクラスメイトを入ったばかりの新入生たちがマジマジと眺めている事に気が付く。
どうやら、初めて見る体側服を着た先輩が気になってしまうらしい。
私は気にする事なく、校庭の奥の方で去年と同じメニューをこなしていく。
普通の体育も、射撃も、魔法実技も去年も殆ど変わらない。
私は食堂でサンドイッチとオニオンスープのメニューを食しながら溜息を吐く。
不機嫌そうにスープをスプーンでかき回す私の姿に困惑したのか、今日一緒に食事を取る事になっていた六人は顔を見合わせていたが、不機嫌の原因は掴めなかったらしい。
二年生になったのに去年と順番を入れ替えただけのメニューを受けさせられる気持ちが分からないのだろうか。
右手に握ったスプーンでスープ皿の底を小さく鳴らしていると、同席していたジャックが手を叩いて、
「そ、そうだ!明日、留学生がやってくるんですって!」
留学生?この時期に珍しい。私は思わずスプーンをスープの中に落としてしまう。
ジャックは馬繋場で聞いたという情報を纏めて話していく。
何でも、留学生はスパイスシーを超えた先に存在する巨大大陸の西側を支配する帝国の中に存在する裕福な商人の一人娘であり、従者のメイドを伴って同伴するのだという。
私は先程までの不機嫌さも忘れてジャックの持ち出した話に食い付いていく。
何でも、明日の朝に集会で校長が紹介してくれるらしい。
留学生なる存在は交換留学でここに一ヶ月だけ来ていたケイレブを除けば会うのは初めての経験だ。
ケイレブのような短期の滞在ではなく、長期の滞在だからより深い交流を期待できるだろう。
加えて、南北の大陸を治める四大国家から転入生ではなく、海を超えた先からやってきた留学生なのだ。
私はどんな留学生が来るのかを夢想し、頭の中で格好の良い顔に王子の纏うような紺色の肩には派手な金色の肩当てを付け、服には金色の紐を括り付けたロマンス小説に出てくるような人物を思い描いてしまう。
そこにこの前のパーティーで着たようなお姫様スタイルの私。
愛する二人は草原の上で愛を誓い合う。
私はそこで妄想から目が覚めてしまう。ロマンス小説を読み過ぎた衝動だろうか、先程の私は危ない所へと足を突っ込んでいた気がする。
どうも、あの聖夜以来浮ついた気持ちが離れない。
いや、勉学の最中や部活の最中にはそんな馬鹿げた気持ちは襲ってこないのだが、こうして気が緩むと変な妄想が起こってくるようになったのだ。
私は慌ててサンドイッチとスープを詰め込む。
友人たちは慌てる私を苦笑いして眺めたような気がする。
その日は結局、午後の授業を終えた後に部活をして帰る事になった。
ただこの日に限っては賞金首が予想外に早く捕まったためか、いつもよりも早めに帰れる事になった。
その後にケネスに一杯奢る事にした。ケネスは口元に微かな笑みを浮かべながら私から受け取ったバーボンを飲んでいく。
良い飲みっぷりだ。もっと飲みたい気持ちであったが、明日の留学生のために一杯だけにしておこう。
私はケネスの分の代金を払って酒場の外に繋いでいた馬に乗って屋敷へと戻っていく。
私は屋敷でピーターとボニーの二人に夕食の合間に明日の留学生の件を話すと二人は思うように食い付く。
やはり、海の向こうの人間というのは珍しいのだろうか。
私がそんな風にムニエルを口にしていると、ピーターが身を乗り出し、明日やって来る予定の留学生に
私は勢いに押されるままに首を縦に振って約束した。
私は寝坊はできないと考えて一目散にベッドの中へと潜り込む。
翌日、いつも以上に早く起こしにきたボニーに起こされ、私は慌てて朝食を食べさせられ、忙しない様子の二人に学校へと追いやられてしまう。
馬に乗り、その馬を馬繋場に留めていると、そこでも留学生の噂が流れていた。
私が新しくなった自分のクラスへと上がり、暫くケネスやソルド、カレンと話していると去年からの引き継ぎである哲学教師風の男が扉を開いて現れて、私たちを廊下へと連れ出し、講堂へと連れていく。
例の行動に並べられた私たちは台の上に乗っている校長と例の転入生の姿を確認した。
こちらのロングドレス状の制服に身を包んだ赤い髪にカールをした少女が可愛らしく笑う。
彼女は一年間の予定でこちらに留学してきたらしい。
どうやら、王子様に置き換えられる男子生徒ではなく、女子生徒だった事は少しばかり残念であったのだが、私は新しい転校生を見つめた。
赤髪の美少女は私に向かって可愛らしく手を振る。
うん、可愛い。私は同性だというのに思わずその可愛らしいさに見惚れてしまう。
その後に校長による全校生徒への彼女の簡単な紹介が終わり、私たちは教室へと帰らせていく。
この後の体術の授業も他の座学もそつなくこなしたのだが、やはり、あの転校生の事が忘れられない。
私が恋に落ちた乙女のような心境でケネスと共に部活に向かうと、そこには校長に紹介されていたあの少女が部活にいた。
部長は本を読みながら、彼女を仲間に加えた経緯を話していく。
何でも、彼女は私に負けず劣らずの魔法を使用する事ができ、部活に貢献できるから入れたのだという。
納得の表情で部長の言葉に頷いていると、あの留学生は私の顔を覗き込んで、三人で組みたいと言い出した。
私はそれを喜んで許可し、彼女と共に賞金稼ぎとして行動する事にした。
だが、それからだ。私の周囲で妙な事が起こり始めたのは。
賞金首と戦った後でもケネスは険しい目を留学生に向けているし、あり得ない方向から銃弾が飛んできた事もある。
また、夜の道で誰かに銃で狙われた事もあった。狙った相手は恐らく、賞金首の残党か何かだろうが、こうも偶然が続くと留学生が関わっているのかと怖くなってしまう。
そんな時だ。彼女が我が家でのお茶会に招待したいと言ったのは。
天啓にも等しい提案であり、私はその茶会に乗る事にした。
その時にケネスが親の仇でも睨むかのような目を向けていた事にも気が付かずに。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!

nineyu
ファンタジー
 男は絶望していた。  使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。  しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!  リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、  そんな不幸な男の転機はそこから20年。  累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!

処理中です...