王立魔法学院の落第生〜王宮を追放されし、王女の双子の姉、その弱い力で世界を変える〜

アンジェロ岩井

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エージェント・ブリタニアン編

この狂った世界の片隅で真実を叫ぶ

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「どういう事ですか!?私には何も売らないって!?」
ピーターの抗議の声を聞いたのは路地裏の出口近く、酒場の裏口のある場所と八百屋の裏口のある場所の境目を歩いていた時だ。
どうやら、彼は買い物に訪れていたらしいが、そこで思いも寄らないトラブルに見舞われたらしい。
私は悪いとは思いながらも、物陰で耳を済ませながら、彼の会話に聞き耳を立て、二人の様子を眺めていく。
「だから、あんな良い人の親分や仲間を殺すような奴の下僕には何も売らないって今日の朝に決まったんだよッ!分かったら、出て行けッ!」
どうも、昨日の事がたった一晩のうちに広まったらしい。私は去り際にあの男が浮かべていた微笑の意味をようやく理解した。例え、あの場を切り抜けられたとしても街全体に私にとってマイナスの評価が伝わり、住人がこのような態度に出るのを予測していたらしい。
そうとなれば、いよいよこの街に滞在するのも難しくなる。考えたものだ。
私はピーターがこれ以上、あの男から不当な扱いを受ける前に、飛び出すべきかと身構えた時だ。
ピーターの前に一人の船員らしき男が現れて、ピーターを押し除け、買い物をしようとする姿が見えた。
明らかな嫌がらせだ。卑劣な手段に私が掌に爪を食い込ませていた時だ。乾いた音が鳴り響き、その船員の男が倒れる姿が見えた。
その様子を見て慌てる店主とピーター。
だが、店主は目を大きく見開いて、商店のカウンターのすぐ側にある木製の扉を開けて出るとピーターの胸ぐらを強く掴んで、
「テメェか!?テメェがやったんだろう!?え?」
「ち、違う!私はやっていない!第一、銃なんて持ってないだろ!?」
「いいや、怪しいな。小型の強力な拳銃を持ってる可能性だってある」
男はそう言ってピーターの着ているスリピースーツの懐を探っていく。
だが、結局、小型の拳銃もナイフさえも見つからなかったので舌打ちをして小型の商店へと戻っていく。
ピーターは心底から不快だと言わんばかりの表情を浮かべてその場を去っていく。
私はピーターに心の中で謝罪の言葉を呟き、それから、八百屋の店主に向かって抗議の言葉を述べようとした時だ。
私から見て左隣にある酒場の扉が開き、蛇顔の男が現れた。
その男は馴れ馴れしく私の肩に手を置き、それから胸へと手を伸ばそうとしたが、私はその手を直ぐに払い除ける。
私が険しい視線で睨むものの、あの男は怯えた様子も見せずに相変わらずの相手と対等に向かおうとしない、まるで藪の中でジッと相手を観察する蛇のような目を向けながら私を嘲笑う。
「いやぁ~さっきは危なかったな。もし、あそこでさっき、銃撃事件の前にあんたが出て行ったら、どうなると思う?間違いなく、あの男はあんたに疑いの目を向けただろうな?え?」
蛇はジッと睨むのを辞め、とうとう獲物を甚振り始めたらしい。あの男は蛇が追い詰めた蛙を遊んで殺す時のような残酷な笑顔を浮かべて、
「で、どうよ?ビリーの兄貴の銃の腕前は?」
今、この男は何と言ったのだ?ビリーの銃の腕前?と、なると先程の犯行はビリー・ベルがやったのか?
私は彼の姿を探すものの何処にも姿は見当たらない。
両隣に見える家々の上にさえも姿は見当たらない。いや、仮に屋上から撃ったとしたのならば、証拠が残っている筈だ。薬莢のようなものが……。
すると、私の意図を察したのか、蛇顔の男はケタケタと顔に似つかわしい気色の悪い声で笑う。
「ビリーの兄貴は確かに、向かい側の建物の屋上から撃ったよ。けれどな、幾ら視力がよく立ってよぉ~寝そべったまま見られないように迅速に移動できるか?不可能だね!」
男がそう叫ぶのと同時に私の目の前に蛾のようなだが、それでいて全身を銀色で塗った奇妙な生物が現れた。
その生物はマジマジと私を見つめていたが、私は咄嗟にその生物に向かって引き金を引く。
が、その生物は銃弾を簡単に避け、それどころか私に向かって銃が向かう。
銃弾が私の肩を掠め、煉瓦の中へとめり込む。
それを見た蛇顔の男はもう一度、あの不気味な顔で笑いながら、
「どうだい?賞金稼ぎのお嬢ちゃんよぉ~あれはビリーの兄貴の魔法だよ。あれで標的の位置を把握し、兄貴が引き金を引くのさ、これがあれば、遠くからでも銃を放たれるって寸法よ」
どうやら、これは彼のもう一つの目であるらしい。私が思わず目の前の家々を眺めると、真正面の三階建ての雑貨店の上から私を狙うビリーの姿が見えた。
反撃しようにも、拳銃では長銃に射程距離で叶うまい。
なので、私は代わりに蛇顔の男に銃口を向ける。
すると、蛇顔の男は大きな叫び声を上げて、
「た、助けてくれェェ~!!あの女に殺されるッ!誰かッ!誰かッ!誰か助けてくれ!?」
その言葉が街の中に響いていくのと同時に周囲の商店の扉が開き、周りから多くの男女が現れる。
そして、三階建ての建物の上でそれを満足そうに見守るビリーの姿。
どうやら、ビリーはこの事まで計算に入れていたらしい。
私は今度こそ囲まれる前に、あの男を突き飛ばし、元の路地裏へと逃げ込む。
路地を利用し、私は昨日の波止場へと辿り着く。
しかし弱ったな。あの調子ではホテルに戻る時が厄介だ。あの男が住民たちを扇動してホテルへと向かわせる可能性も高い。
そうなった場合は完全にお手上げだ。私は懐にちゃんとお金の入った財布が入っている事を確かめる。
新たに購入したホルスターと拳銃はちゃんと腰にある。
暫くは帰らなくても大丈夫だろう。私は波止場で今後の事を考えていく。
この街の住民たちが敵になってしまった以上はやはり、私一人であの男の尻尾を掴まねばなるまい。
あの男の尻尾は容易には握れそうにないが、どうにかして掴んでやる。
私はそう決意して波止場からあの男が下働きをしている家へと向かう。
住民に見られないようにこっそりと物陰に隠れながら、歩みを進めていた時だ。
突然、背後から肩を掴まれてしまう。私が咄嗟に振り向くと、そこにはジェーン・グラントの姿。
私は咄嗟にホルスターから拳銃を抜こうとしたが、彼女は小さな声で、
「良いですか、ウェンディ様……先程、お嬢様があなた様の仰られた二人組の殺し屋に襲われました。私がこっそりと向かっていた時でした。ホテルから銃声が聞こえ、ホテルの窓から逃げるお嬢様を二人の男が追っておりました」
二人の男というのは私とピーターをここに連れて来た殺し屋であるのは間違いないだろう。
どうやら、ララミーは本格的に邪魔者を殺しに来たらしい。
私はその前に彼女に対して成果を問う。
彼女は私を真剣な瞳で眺めながら、
「ララミー・ブラザーズのお二方の話を聞いたところ、四日後にエテルニタとの取り引きを行うらしいです。そこを叩き潰す算段ですが、その前にあなたとお嬢様の同時に降りかかった火の粉を払わねばなりません」
彼女は足の下に隠していたナイフを取り出し、深い路地の闇の奥へと消えていく。
私は今後の事を考えた。タイムリミットは四日。その間にあの男二人の悪事を暴かねばならない。
そう決意すると自然と気も引き締まった。
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