王立魔法学院の落第生〜王宮を追放されし、王女の双子の姉、その弱い力で世界を変える〜

アンジェロ岩井

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ホープ・オブ・マジシャンスクール編

眠れる獅子は炎と光の夢を見るか

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「ひ、ひィィィ~!!」
マルセラ王女は悲鳴を上げて地面に尻餅を付き、目の前に現れた雷の剣を持つ女性を見つめていた。
私は両手で銃を構えながら、目の前から迫り来る相手を睨む。目の前の相手の名前は分からない。けれど、目の前の女性は確固たる覚悟を持って王女に向かってきていた。 
私がその女性の魔の手から王女を守る事が出来たのは本当にたまたまと言っても良いだろう。
たまたま、彼女の侍女が外に出て行き、私がその侍女の代わりに王女の身の回りの世話をさせられている時だ。
突然、天井が破壊され、壊された天井から剣を持った騎士が王女を狙って現れたのだった。
私は咄嗟に王女の体を抱き抱えてその場を逃げる事が出来たのだったが、予想外の侵入者に対して彼女は及び腰になってしまい王女は逃げるどころの騒ぎではなくなってしまったらしい。
私は何とか彼女の腕を掴み、彼女を引き摺る形でその場から逃げたのだったが、騎士は直ぐに王女のために用意された個室の扉をその炎を纏わせた剣を持って襲い掛かってきたのだ。
廊下まで逃げる事は出来たのだったが、そこで王女はダウン。
後は真正面からその炎の剣を纏わせた女騎士と戦うしかないのだが、まともにやって勝てるとは思えない。
まるで、一学期の時、賞金稼ぎ部に入部した私が人道愛ヒューマニズムさえあれば、犯人を説得ができると火炎瓶を扱うテロリストと立ち向かっていた時と同じだ。
いや、あの時とは違う。私は夏休み前の討論会であの生意気な同級生とあの狂犬のような先輩に教えられたのだ。
話し合いなど通用しない相手もいる、と。
目の前の相手こそがまさにそれ。彼女に話し合いを期待する方が無理というものだろう。目の前の相手を殺すという目的だけで心を決めている相手には金も先程の奴も通用しない。
私は銃を向ける。だが、やはり銃を持つ手が震えてしまう。怖いのだ。
銃をパンパン放って相手を殺害する先輩方と私は違うのだ。
ましてや、賞金稼ぎ部として活動していたのはあの火炎瓶の男の事件の時だけ、以後は非人道的な賞金稼ぎ部の実態を暴こうと懸命になっており、その間に部活動をやり遂げた事などない。
つまり、あれ以降、私は本物の賞金首とは相対していないのだ。
目の前に迫る長い茶色の髪に顔を隠した女騎士は恐らく、彼女の国の反マルセラ王女組織『闇払いの騎士団』の一員である事は間違い無いだろう。
ここでマルセラ王女が殺されたとあってはウィンストン・セイライム王国と王国騎士の名折れ。
あくまでも父に従っての見習いという立場であるが、その誇りはちゃんとある。
私は震える手を抑えて何とか拳銃を構えたが、彼女に止まる気配は見えない。
やはり、撃つしかないのか。私が怖くなって目を瞑った時だ。銃声が城の廊下の中で鳴り響く。
背後を見つめると、そこには長い銀色の髪に思わず王女様と勘違いしてしまう程の瓜二つの顔をした少女が黒色の長い出っ張った筒の出た自動式拳銃と呼ばれる拳銃を持って立っていた。
「動かないで……この拳銃は従来の拳銃とは違ってね。海の向こうの最新式の拳銃で一回で十発以上の弾が出るのよ。信じられないと思ったのなら、試してみる?」
私はメイド服の少女から発せられた静かでそれでいて優雅な雰囲気を纏わせた声で誰なのかを察した。
彼女は賞金稼ぎ部のエース、ウェンディ・スペンサーその人ではないか。
彼女がどうしてこんな所にいるのだろう。私が首を傾げた時だ。
彼女の姿を見るなり、細々とした宝石を飾り付けた長いドレスを着た王女が立ち上がって、
「アビゲイルゥゥゥゥゥ~!!来るのが遅いだろうがッ!何をやっていた!?」
彼女は声を荒げて彼女が来なかった事を追求していく。それにしても、アビゲイルとはどういう事だろうか。
あの王女は先輩の本当の名前を知らないのだろうか。
私は背後の王女様に彼女の本当の名前を教えてあげようかと考えたのだが、今はそんな事をしている場合ではない。
私は騎士見習いとして王女を逃がそうとしたのだが、私の目の前に炎の剣を持った騎士が立ち塞がり、私を殺そうとしてきたのでマルセラ王女を逃す事は断念させられてしまう。
マルセラ王女は悲鳴を上げてその場から単独でその場から逃げようとしたが、炎の騎士はそれさえも許さない。
炎を纏わせた剣を勢いよく振ると、炎を出し、彼女の肌の近くにまで炎を接触させて彼女から逃亡しようという気力を奪っていく。
彼女はそれから両手で剣を持って両眼を瞑ってから大きく目を見開いて、
「祈るが良い」
と、だけ呟いて剣から光の刃を飛ばしていく。
無差別に放たれた刃は城の廊下のあちこちに突き刺さっていき、そのどれも煉瓦で出来た廊下にヒビを入れるレベルとなっている事が分かった。
あまりにも強い。あまりにも大きな魔法だ。いや、彼女の強さはそれだけに留まらない。彼女は二つの魔法を使用できるのだ。
今度は彼女は両手に持っていた剣を構えてそれを白黒させながら、先輩に向かって斬りかかっていく。
不味い。我が国ではいや、南北に連なる四大国家においては剣は廃れたものとみなされ、あまり重要科目とは見做されず、南北の大陸の中では実際に剣を使用できる数はその人口に比例して相当に少ないと言われている。
確かに銃は剣よりも速くて強力だ。だが、それはあくまでも剣が銃に劣るという仮定での話。
もし、剣を持つ人間が銃よりも速く動く事が出来たらどうなのだろう。
そう、引き金を引くよりも前に斬り殺されてしまうのだ。あの女騎士もそうだ。
彼女は剣よりも速く動き、先輩を斬り殺そうと目論む。
だが、先輩は彼女の剣を見切ってはいたのだろう。何とか手に持っていた長い出っ張った筒の出た例の自動式拳銃を盾にして彼女の剣を防いでいた。
銃と剣の間で火花が散る姿が見える。私は先輩を応援していた。
見る事しかできない自分が悔しくて仕方ない。仕方がないのだ。やはり、自分の手で引き金を引くとなると怖くて引けない。
だが悩んでいる時間はない。これ程の魔法を持った相手だ。躊躇っていれば私が先輩かマルセラ王女の誰か、若しくは全員がこの場で死ぬ事になるだろう。
私は背後から銃口を構えたやるしかない。卑怯かもしれないが、あの様な信じられない様な力を持った相手を倒す手段はこれしかない様に感じられた。
私が引き金を引き掛けた時だ。背後で怯えていた王女が信じられない言葉を叫ぶ。
「あんた、何背後から相手を撃ち殺そうとしてんのよ!それが騎士のやる事なの!」
絶句する。まさか、守るべきはずの王女が裏切るとは信じられなかった。
いや、彼女にそんな感情はないだろう。単に信じられない事をやったから、叫んだだけに過ぎない。
私はもう怒る気にもならなかった。
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