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ホープ・オブ・マジシャンスクール編
宮中晩餐会に至るまでの経緯は平坦にあらず
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信じられない事が起こった。あの王女の頭は相当に悪いのだろうなと考えていたのだが、ここまで馬鹿だとは思わなかった。価値観が違うのはもうしょうがない。それは違う国なのだもの違っていて当然だ。四大国家の中でも価値観が、いや人それぞれの価値観など違って当然なのだから、それを責める気にはなれない。
道徳の問題にしてもそうだ。国それぞれで違うのだ。その箇所を責めてもしょうがないと頭の中の冷静な部分は告げる。
だが、問題はその価値観が他人の足を引っ張った時だ。しかも、自分の命が危機に陥っている時にその価値観やら道徳やらを優先させる人間がいるなど信じられなかった。
私は長い茶色の髪の騎士が剣を構えて背後に迫る光景が見えた。
私は慌ててその場から駆け出し、顔の見えない女騎士を追う。
彼女に私の後輩を殺させはしない。そう決意して私は拳銃を放つ。
だが、銃弾は見切られてしまったらしい。私が銃を放った成果といえばあの女騎士の顔の鎧を掠めたくらいだろうか。
だが、騎士はそれでも止まる事なく二人に向かって剣で空を切りながらこちらへと向かっていく。
私はもう一度拳銃を放つ。だが、効果は無い。三度目。これも効果無し。
そもそも銃自体が効果をなさない存在なのかもしれない。
だが、それでも私は拳銃を構えて騎士の元へと向かう。
例え、無残に殺される事になったとしても、この場でマルセラ王女を生かす事さえ出来れば、王国の面子は保てる。
そう決意して私は女騎士の背後から飛び付く。
突然の事に女騎士は狼狽し、慌てて私を振り落とそうと試みた。
だが、そんな彼女の思惑も虚しく私は彼女の体を抱き付いて離さない。
彼女の腹を掴んだ私の両腕に鎧の冷たい、それこそ氷の様な冷ややかさが伝わってくる。
構うものか。私は決意を固めて意地でも彼女から離れようとはしない。
流石の女騎士も辟易してしまったらしく、獲物を追い詰めるために獲物の体へとその柔らかい体をくねらせて蛇の様に縋り付く私の腕を斬り落とそうとした時だ。
たまたま、彼女と私の目の前に城の警護兵が現れて大きな声で侵入者の到来を叫ぶ。
彼女は慌てて口封じに向かおうとしたのだが、もう遅い。私の腕がここまでしっかりとへばりついているのだから、兵士の始末には向かえないだろう。
私は口元の右端を吊り上げる。私の腕は勿論のこと、最悪、私の命までもが失われる事になるかもしれない。
だが、私は離さない。忠実な人間の共にして狩の相棒であるドーベルマンのようにしつこく食い下がる。
女騎士は苛立ったのか、私の両腕を先程は中断しかけた剣で斬り落とすという行為を再開しようとしたのだが、その前にオリビアが銃を突き付けて彼女を牽制していく。
「待ちなさい!その人の腕を斬り落とした瞬間に私の銃が火を吹くわよ!!」
その言葉に剣を持つ手を止める女騎士。
明らかに動揺している。流石に私が両腕で彼女を拘束しているのに逃げるというのは難しいだろう。
彼女にとっては絶望。私とオリビアにとっては希望の瞬間。
あの役立たずの王女は後ろで震えていて今度こそ足を引っ張ったりはしないに違いない。
だが、銃を持つオリビアの手が未だに震えているというのはどういう事なのだろう。
いや、大体察しが付く。大方、彼女は銃を放つのに抵抗があるのだろう。
やはり、人を撃つというのには抵抗がある。私だって初めはそうだった。
だが、そこで立ち止まっていては賞金稼ぎにもましてや王国の騎士などにはなれまい。
少なくとも、私はそう考えている。私は彼女に期待している視線を送る。
彼女が葛藤の末に引き金に手を掛けようとした時だ。先程の兵士が伝えたのか、慌てて多くの兵士たちが廊下の中に現れた。
どうやら、先程の兵士が仲間を呼んでここに戻ってきたらしい。
それを見た女騎士は私の腹を思いっきり蹴り、私の手から逃れて廊下を走って逃げ出す。
大方、蹴って逃げるという選択肢を焦って見失っていたに違いない。
私は城の警護兵たちに助け起こされ、その後に私とオリビアの二人にマルセラ王女のケアに務めろと命令された。
結局、その日の夜になり、ケネスが迎えにくるまでわがまま王女のお守りをする事になってしまった。
お守りも楽ではない。あの戦いを乗り越えた二人でも緑髪のわがまま王女のお守りは辛かった。
緑髪はひたすらに王国の責任ばかりを責め立て、この事態の不具合ばかりを言うのだ。
何とか耐えてヘロヘロになった私を妹とケネスが気遣ってくれたが、私は疲れのためか苦笑を返すほかになかった。
だが、今夜の晩餐会では私には給仕の役目がある。妹の背後に立ち、妹の皿を下げて調理場へと持っていったり、飲み物を注いだりしなければならない。
今回は妹の侍女に潜入しての護衛なのだから、これくらいはせねば怪しまれてしまう。
一ヶ月の講習の成果と普段、自宅でピーターがやっているようにやれば良いという事で自分を奮い立たせて今夜における最後の仕事を進めていく。
今夜を締め括る王女歓迎の晩餐会は城のダンスホールにて執り行われ、席の一番奥に父が、その右隣に主賓席のマルセラ王女が座り、その左隣に妹が座る。母は妹の右隣に座り、その横に義父であるスペンサー公爵が座り、後は左右のどちらの席にもこの国の貴族が勢揃いする事になる。
晩餐会の流れとしては主人にしてこの国の代表である父が祝辞を述べ、次に公爵家から伯爵家に至るまでの立派な家柄の人間たちが祝辞を述べた後に、乾杯の音頭を取り、その隣に主賓として座る王女がワインの入った杯を鳴らす事により始まる事になっている。
その後に料理が調理場から料理長が直々に国王とマルセラ王女に配り、その後に他の料理係が各貴族たちへ食事を置いていく。
それを合図に座ったままの晩餐会が始まっていく。
私は妹の杯に酒を注いだり、足りないと思ったらパンを追加するなどの仕事をこなしていく。
勿論、ケネスも協力してくれるので負担はたったの二割に過ぎない。
このまま順調に晩餐会は終わるのかと思われたが、唐突にマルセラ王女が昼間に発生した事件の事を父に口にしていく。
父は黙って聞いていたのだが、直ぐに両目の目を見開いて、
「アビゲイル!」
と、大きな声で偽名の私を呼び付けた。理不尽な叱責を喰らわされると覚悟したのだが、その前にシンディが席を立ち上がって父に向き直る。
道徳の問題にしてもそうだ。国それぞれで違うのだ。その箇所を責めてもしょうがないと頭の中の冷静な部分は告げる。
だが、問題はその価値観が他人の足を引っ張った時だ。しかも、自分の命が危機に陥っている時にその価値観やら道徳やらを優先させる人間がいるなど信じられなかった。
私は長い茶色の髪の騎士が剣を構えて背後に迫る光景が見えた。
私は慌ててその場から駆け出し、顔の見えない女騎士を追う。
彼女に私の後輩を殺させはしない。そう決意して私は拳銃を放つ。
だが、銃弾は見切られてしまったらしい。私が銃を放った成果といえばあの女騎士の顔の鎧を掠めたくらいだろうか。
だが、騎士はそれでも止まる事なく二人に向かって剣で空を切りながらこちらへと向かっていく。
私はもう一度拳銃を放つ。だが、効果は無い。三度目。これも効果無し。
そもそも銃自体が効果をなさない存在なのかもしれない。
だが、それでも私は拳銃を構えて騎士の元へと向かう。
例え、無残に殺される事になったとしても、この場でマルセラ王女を生かす事さえ出来れば、王国の面子は保てる。
そう決意して私は女騎士の背後から飛び付く。
突然の事に女騎士は狼狽し、慌てて私を振り落とそうと試みた。
だが、そんな彼女の思惑も虚しく私は彼女の体を抱き付いて離さない。
彼女の腹を掴んだ私の両腕に鎧の冷たい、それこそ氷の様な冷ややかさが伝わってくる。
構うものか。私は決意を固めて意地でも彼女から離れようとはしない。
流石の女騎士も辟易してしまったらしく、獲物を追い詰めるために獲物の体へとその柔らかい体をくねらせて蛇の様に縋り付く私の腕を斬り落とそうとした時だ。
たまたま、彼女と私の目の前に城の警護兵が現れて大きな声で侵入者の到来を叫ぶ。
彼女は慌てて口封じに向かおうとしたのだが、もう遅い。私の腕がここまでしっかりとへばりついているのだから、兵士の始末には向かえないだろう。
私は口元の右端を吊り上げる。私の腕は勿論のこと、最悪、私の命までもが失われる事になるかもしれない。
だが、私は離さない。忠実な人間の共にして狩の相棒であるドーベルマンのようにしつこく食い下がる。
女騎士は苛立ったのか、私の両腕を先程は中断しかけた剣で斬り落とすという行為を再開しようとしたのだが、その前にオリビアが銃を突き付けて彼女を牽制していく。
「待ちなさい!その人の腕を斬り落とした瞬間に私の銃が火を吹くわよ!!」
その言葉に剣を持つ手を止める女騎士。
明らかに動揺している。流石に私が両腕で彼女を拘束しているのに逃げるというのは難しいだろう。
彼女にとっては絶望。私とオリビアにとっては希望の瞬間。
あの役立たずの王女は後ろで震えていて今度こそ足を引っ張ったりはしないに違いない。
だが、銃を持つオリビアの手が未だに震えているというのはどういう事なのだろう。
いや、大体察しが付く。大方、彼女は銃を放つのに抵抗があるのだろう。
やはり、人を撃つというのには抵抗がある。私だって初めはそうだった。
だが、そこで立ち止まっていては賞金稼ぎにもましてや王国の騎士などにはなれまい。
少なくとも、私はそう考えている。私は彼女に期待している視線を送る。
彼女が葛藤の末に引き金に手を掛けようとした時だ。先程の兵士が伝えたのか、慌てて多くの兵士たちが廊下の中に現れた。
どうやら、先程の兵士が仲間を呼んでここに戻ってきたらしい。
それを見た女騎士は私の腹を思いっきり蹴り、私の手から逃れて廊下を走って逃げ出す。
大方、蹴って逃げるという選択肢を焦って見失っていたに違いない。
私は城の警護兵たちに助け起こされ、その後に私とオリビアの二人にマルセラ王女のケアに務めろと命令された。
結局、その日の夜になり、ケネスが迎えにくるまでわがまま王女のお守りをする事になってしまった。
お守りも楽ではない。あの戦いを乗り越えた二人でも緑髪のわがまま王女のお守りは辛かった。
緑髪はひたすらに王国の責任ばかりを責め立て、この事態の不具合ばかりを言うのだ。
何とか耐えてヘロヘロになった私を妹とケネスが気遣ってくれたが、私は疲れのためか苦笑を返すほかになかった。
だが、今夜の晩餐会では私には給仕の役目がある。妹の背後に立ち、妹の皿を下げて調理場へと持っていったり、飲み物を注いだりしなければならない。
今回は妹の侍女に潜入しての護衛なのだから、これくらいはせねば怪しまれてしまう。
一ヶ月の講習の成果と普段、自宅でピーターがやっているようにやれば良いという事で自分を奮い立たせて今夜における最後の仕事を進めていく。
今夜を締め括る王女歓迎の晩餐会は城のダンスホールにて執り行われ、席の一番奥に父が、その右隣に主賓席のマルセラ王女が座り、その左隣に妹が座る。母は妹の右隣に座り、その横に義父であるスペンサー公爵が座り、後は左右のどちらの席にもこの国の貴族が勢揃いする事になる。
晩餐会の流れとしては主人にしてこの国の代表である父が祝辞を述べ、次に公爵家から伯爵家に至るまでの立派な家柄の人間たちが祝辞を述べた後に、乾杯の音頭を取り、その隣に主賓として座る王女がワインの入った杯を鳴らす事により始まる事になっている。
その後に料理が調理場から料理長が直々に国王とマルセラ王女に配り、その後に他の料理係が各貴族たちへ食事を置いていく。
それを合図に座ったままの晩餐会が始まっていく。
私は妹の杯に酒を注いだり、足りないと思ったらパンを追加するなどの仕事をこなしていく。
勿論、ケネスも協力してくれるので負担はたったの二割に過ぎない。
このまま順調に晩餐会は終わるのかと思われたが、唐突にマルセラ王女が昼間に発生した事件の事を父に口にしていく。
父は黙って聞いていたのだが、直ぐに両目の目を見開いて、
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