王立魔法学院の落第生〜王宮を追放されし、王女の双子の姉、その弱い力で世界を変える〜

アンジェロ岩井

文字の大きさ
174 / 211
ホープ・オブ・マジシャンスクール編

そして、盾の騎士は英雄となる

しおりを挟む
問題は互いの盾が壊れてその身が割れた時だ。そこに隙を見出さなければ彼は倒せないだろう。
もう一度、あの男が地面を蹴ってこちらに向かってきたその時こそが、決戦の時だ。
もう一度、いやもう二度彼は私に向かって攻撃を繰り出す。
盾の攻撃が繰り出され、あの男の姿が現れる。チャンスだ。私は一瞬の間に生じた隙を狙って拳銃を放つ。
男は私が銃口を構えたのを見て自分も引き金を引かねばならないのだと判断したのだろうが、もう遅い。
私の放った銃弾が彼の足を貫き、彼を戦闘不能に追い込む。
私は銃を突き付けて彼の元へと向かおうとしたが、彼は私を跳ね除けて例の盾の中に籠もっていく。
彼は盾の中で鋭い視線で私を睨み続けていた。
だが、私は男の視線に怯える事なく彼に向かって銃口を突き付ける。
「……おれの完敗か……クソッタレ、オレはこんな所で倒れる訳にはいかねーんだよ」
「その心意気は見事よ。でも、もう大人しく投降しましょう?」
だが、それを聞いた騎士は激しい口調で私を弾劾していく。
「ふざけるなッ!オレはこのまま王国に捕まったんだったら、死刑は確実なんだよッ!別に死ぬのなんて怖くないが、あの女を……オレたちの国に巣食う疫病の源を摘出しなければ死んでも死に切れねーんだ」
その言葉を聞いて彼に同情の心を寄せた私は思わずマルセラ王女の侍女の正体について教えようかと考えたのだが、このホテルに妹と共に戦いから逃げた王女がまた戻ってくるのかもしれないという事から、私はその事については口を紡ぐ事にした。
その代わりに、彼に対してある提案をしてみた。
「ねぇ、あなたは立場はどうであれ、この国で何か犯罪を犯さなかった?」
男は私のその言葉を聞いて思わず両目を見開く。
だが、直ぐに視線を逸らす。どうやら、彼が、今着ているスーツにコートは何処からか盗ったもの、もしくは奪った金である可能性は高い。
私は盾に籠り、足を抑えて一定の方向を虚な目で見つめていた彼に対して満面の笑みを浮かべて提案する。
「あなたの身柄はこちらで預かるわ。あなたはウィンストン・セイライムの法廷で裁きを受ける羽目になるでしょうけれども、死刑になるような事をしていないのならば、あなたはきっと命は助けられる筈よ」
その言葉を聞いて一瞬、彼の顔が輝く。だが、直ぐに表情に陰りを見せた。
彼はその暗い顔で地面に視線を下ろして、
「ありがとう。けれども、刑務所に閉じ込められたままじゃあ、生きている人生とは言えない……オレは絶対に国の不穏分子をーー」
彼はその続きを喋ろうとはしたものの、私はその続きを聞けず、また彼も喋る事が出来なかった。
と、いうのも逃げた筈の王女がホテルに舞い戻り、彼と話している私を突き飛ばし、彼が篭っている見えない盾を蹴り始めたからだ。
眉間に青筋を立てて歯を食い縛りながら、見えない盾をひたすらに蹴り続ける姿は人間には見えない。
まるで、鬼女ではないか。彼女は口汚く盾の騎士を煽り続けていく。
「よくもッ!この私に向かって歯向いやがったなッ!このクズがッ!何様だと思ってやがるッ!パパから受けた恩も忘れやがってッ!このクズがッ!」
私は思わずその口の汚さにゾッとしてしまう。まるで、街で弱者を恐喝するギャングのようだ。今の彼女から気品も気高さも優雅さえも感じられない。
ただのチンピラだ。勿論、あの騎士の盾はこの程度のもので壊されるものではない。なので、蹴ったとしてもダメージが入るのは彼女の脚だけだろう。
だが、彼女はそんな事は構いもせずに蹴りを入れ続けていく。
あまりにも醜悪な光景だ。背後で妹が止める声が聞こえたのだが、彼女は構わずに蹴り続けていた。
だから、彼女が現在、人質にされているのも自業自得だとしか思えない。
マルセラ王女を人質にした彼はその場に居合わせた私たちに向かって要求する。彼女の王位継承権の放棄を。
何という間抜けな王女なのだろう。彼女はあろう事か見えない盾を蹴り続けるのに夢中になっていたために、咄嗟に盾を消した男の事に気が付かなかったのだ。
彼女は振り上げた脚をそのまま地面へと落とそうとした時に、弱っていた筈の盾の騎士に脚を掴まれてそのまま人質にされてしまったのだ。
私は思わず溜息を吐く。どうして、父はいや、四大国家の元首たちはこんな奴の畏敬訪問を受け入れたのだろう。
明らかに火薬で満杯で少しでも火を灯せば爆発しそうな火薬庫を押し付けられたようなものではないか。
もしかしすると、スパイスシーの向こう。帝国の属国である王国は帝国と四大国家とを対立させるためにこの王女を押し付けたのではないか。
いや、それならば血塗れレッドグラントが抹殺のために潜入している理由が分からない。
そもそも、海の向こうの国王にそんな度胸がある筈がない。大方、しょうもない理由だろう。
だが、彼女は私の考察を大きな声で遮り、私に向かって助けを求める。
「何をやっているゥ!早く私を助けろ!使用人の分際でお前たちは何をやっているッ!」
私は無言で王女の頭に小型のショットガンを突き付けている男の頭に向かって狙いを付ける。
これが上手くいけば、王女は助かる筈だ。私が意を決して彼に向かって銃を突き付けた時だ。
捕らえられていた王女が大きな声で叫ぶ。
「何だ?その銃は私を殺す気だろう!?私を殺すのか!?この人殺しがッ!」
もういい。もうどうなろうが知った事か。
私は拳銃を構えて大きな声で叫ぶ。
「このド外道がァァァァァ~!!」
その叫び声と共に弾丸が放たれて脚を突きながらも彼女を人質に最後の勝負に打って出ていた男を撃ち殺す。
私は額から赤い蛇を出し、目を見開いて地面の上で大の字になっている男を見つめた。密かに彼に詫びを入れて私は地面の上で震えている王女の保護に向かう。
王女は自分の所為が原因でこのような目に遭ったのにも関わらず、ただ私の事ばかりを責め立てていく。
だが、私はそんな行為に構う事はなく地面の上で倒れた男に向かって詫びを入れていく。
先程の『ド外道』は私の胸で私を叩く緑色の髪の王女に向けたものだと。
私は慌てて駆け付けた妹と王女の侍女に王女を託してホテルの外へと向かう。
ホテルの外に出ると空の上には満点の星空。
そこに流れ星が一つ落ちたのを見届けた。もしかすれば、あの星は私が先程、撃ち殺した盾の魔法を使う騎士だったのかもしれない。
やはり、言えば良かったかもしれない。王女は帝国か共和国のどちらかで死ぬ事になると。
私はそれから、暫くの間、ただ呆然とした様子で星空を眺めていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...