王立魔法学院の落第生〜王宮を追放されし、王女の双子の姉、その弱い力で世界を変える〜

アンジェロ岩井

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ホープ・オブ・マジシャンスクール編

王女の暗殺劇とそこから始まる世界の動乱

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王女は翌日に慌ててカリフォークの道を出発すると次々と残りの街を訪れてその街の市長やら地方貴族の面々と会談し、その合間に王国の有名劇団の芝居を見たりと忙しい合間を縫いながらも、シンディ王女と共に充実した王国の行幸を楽しんだという。
その後、彼はニューヨーシャー王国との境界線でシンディ王女と別れ、新たに平民それも、一度結婚し、未亡人とった女性を妻に娶ったエリオット王子と握手を交わし、彼と共に王国の行幸を始めていく。
彼女は行幸の最中にエリオット王子に尋ねた。
「どうしてあなた様は平民のそれも未亡人となった女を妻に娶られたのですか?同じ貴族階級の淑女をもらおうとは思わなかったのですか?」
彼の妻の前での発言であり、通常ならば、控えるべき言葉なのだが、エリオット王子はそれを咎める事なく、今の妻と一緒になってから司った寛容な精神でそれを水に流して去年のレースの際に彼女と出会った時の事を語っていく。
連合解放軍なる過激派のメンバーに拉致されてしまった事。人質に押し入った先で初めて今の妻と出会った事、その際に妻の美しさに惹かれた事。そして、かつては婚約していた公爵家の令嬢が自身が拉致された際には狼狽るばかりで役に立たず、無事に帰還してからはご機嫌取りの言葉をかけるばかりで苛立った事。
いざ、婚約を破棄し、彼女を一族と共に貴族の地位を没収するのと同時に隣国の賞金首と手を結んで悪行を繰り返しながら、貴族に戻せと浅ましい要求を国に行った事から貴族の女を信用できなくなった事を告げた。
王女は納得できなさそうな表情を浮かべていたが、彼は自分と妻の惚気話を夢中になって語っていく。
彼女と結婚してから、全ての事に全力を尽くすようになった事を熱心に訪問に訪れた王女に向かって語っていたが、王女は何処となく上の空で話を聞いていなかった。
王女はその晩、ウィンストン・セイライムと同様に歓迎の晩餐会で迎え入れられた。
王子夫妻と共に彼女はニューヨーシャー王国を周り、あちこちで伝統芸能やら芝居やらを楽しみながら王国を後にした。
続いて帝国。彼女は国境沿いで皇太子に迎え入れられ、帝都にて皇帝による歓迎の晩餐会で迎え入れられ、前の二つの国と同様に全国を周り、そこでの行幸を楽しむ。
そして、共和国に入り、彼女はそこでドラッグス上院議員の出迎えを受けるものの、出迎えに現れたのが、副大統領ではなかったためか、不満を呟いていたのが、共和国の公式の記録で確認できる。
王女はその晩、大統領官邸での歓迎の晩餐会を楽しんだ後に自室にて空に浮かぶ満月を眺めていた。
「全く、共和国なんてものは権威ある存在を馬鹿にするものだとは思わない?共和国の存在自体が誇りある王家への侮辱よ」
「仰る通りでございます。姫様……もし、共和国の存在が各国から認められなかったとしたら、どう対処なされますか?」
「そりゃあ、潰れるでしょうよ。他の三つの国は形はどうであれ、全て上に皇帝や国王を敷いているのだし、その考えが輸出される事に脅威を抱くでしょうね」
「その通りです。その考えが輸出される前に潰さねばなりません。そこで……」
彼女は無言で王女の元に近寄り、王女の口を右手で塞いでから、彼女の体に何度も何度もナイフを突き立てていく。
口を塞いでいる左手の掌に逆流した彼女の血が垂れるのを感じた。
やはり、喉を裂くべきだったか。いや、この事件が血塗れレッドグラントの仕業だと万が一にも知られてはなるまい。
だから、彼女はこの様な手段を取ったのだ。何度もナイフを突き立てたためか彼女は地面に倒れてそれから動かなくなってしまう。
彼女はナイフに付いた血を彼女の着ていたドレスの裾で拭うとそれを足元に戻し、堂々とした態度で出ていく。
途中で彼女は何度も官邸の使用人たちと出会いそうになったもののその度に時間停止の魔法を使用して切り抜けていく。
この事件を起こしたのは『闇払い騎士団』でなければならないのだ。
だから、彼女は消えるのだ。この事件を『闇払い騎士団』の存在に見せかけるために。
翌日、彼女は王都に極秘に迎えにきた馬車の中で共和国の混乱を知った。
王女の死は王女に酒を届けにきた官邸のメイドにより発見されたものらしい。
自分が行方不明になった件についても洞察されており、帝国上層部の思惑通りに、ジェーンは『闇払いの騎士団』の残党と推察されていた。
彼女は満足そうな表情を浮かべて馬車の中で深く腰を掛けていた。これで、共和国は我が国にあんな物を輸出させようとした報いを受ける事になるだろう。
彼女は船の上で王女の父である王が激しく共和国を非難する新聞を眺めていた。
同時に、ここに嬉しい誤算が起こる事になった。帝国にとっても予想外であった共和国内の過激派による声明である。
彼らは『闇払いの騎士団』と共に自由を求める行動に出たと大統領官邸並びに各国に犯行声明を送り、各国を動揺させていた。
ニューロデム共和国が今後、この過激派による声明で窮地に立たされるのは間違いないだろう。
彼女は船の中で勝利を確信した笑みを浮かべていた。
だが、帰国後、事態は予想外の方向に動き出す。
ドラッグス上院議員は国内の過激派の一掃に成功したとその成果を強調し、彼らが嘘の声明を出したと発表したのだった。
ゲイリー報道官と共に各国の記者に成果を強調していく。
この時に彼が強調したのは共和国の無関係と彼らが反王制の意識から勝手に共同だと主張したと記者に述べて国際社会の追及を交わしていく。
同時に各国の記者たちは理解した。ドラッグス上院議員こそがいや、ストロンバーグ元大統領の教え子こそがニューロデム共和国の事実上の大統領であると。
ドラッグス上院議員は会見を終え、自身の執務室に戻ると、目の前に見慣れない長いオレンジ色の髪の少女が立っている事に気が付く。
年齢は十代の後半といった所だろうか。彼女は彼に手を振って答えたが、上院議員は静かに扉を閉め、事務所の本棚に隠していた拳銃を取り出して、彼女に突き付ける。
「何者だ……お前は?」
「あ、挨拶を言い忘れてましたねぇ~私はクラウンです」
「ファーストネームは?」
「そんな事よりも、今日の会見は見事でしたよぉ~共和国の立場を明確にし、国際社会の追及を逃れるその手腕は……」
彼はその言葉を聞くとファーストネームを聞く余裕は失われてしまったらしい。
彼は銃を突き付けながら、詳しい事情を尋ねていく。
「お前は何の目的でここに現れた?教えろ」
「何の目的ってそりゃあ、決まっているじゃあないですか、ニューロデムが南北の大陸を統一し、やがては世界の帝王にさせるための計画を伝授しに、ね……」
彼女は歪んだ笑顔で言った。底の見えない不気味な笑顔。ドラッグスはその顔にかつての共和国の大統領、レイモンド・ストロンバーグを思い出す。
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