王立魔法学院の落第生〜王宮を追放されし、王女の双子の姉、その弱い力で世界を変える〜

アンジェロ岩井

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プロジェクト・オブ・リヴァーサル編

幸福な王女は醜悪な黒色の夢を見るか

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結局、あの後に出した返事は元副部長いや、先輩。いや、ミスター・フックとの交際をお断りするという旨のものだった。
だが、彼は小さく溜息を吐いた後には満面の笑みを浮かべて、
「そうかッ!しょうがないな。今回は諦めよう。だがよぉ~エリートっていうのは意外と執念深い存在なんだ。絶対に受かりたい、絶対にやり遂げたいっていう大きな夢を持った存在がエリートになるんだ。だから、今回は諦める。だが、決して引きはしない……例え、二号さんでも構わん!オレはお前が好きなんだから!」
彼が興奮して『好き』という単語を大きな声で叫んだものだから、周りの人々は告白が成功したと思ったらしい。集まった客の人たちや従業員の人たちが拍手を送ってくれ、私と先輩は思わず萎縮したのだが、元部長は冷静に彼ら彼女らの疑問を解き、素早く会計を済ませるとさっさと喫茶店の外へと出て行き、ホテルに預けてあった荷物を私に持たせて私を駅馬車へと送り出す。
半ば強引の別れ方であったのだが、これはこれで良かったのかもしれない。
先輩は去る間際にまた手紙を送ると言っていたし、大丈夫だろう。
まだ興奮から冷めないのか、私はホカホカとした暖かい思いを抱えながら、夜の森などを眺めていた。
夜の森というのは一見すると人々を永遠の闇へと誘う迷宮を思わせる様な不気味な場所のように見えるのだが、梟の鳴き声などが耳に届き、私は心地よい気分になる。
私は膝に抱えていたスーツケースから家から持ってきたバーボンの瓶を取り出し、口に含んでいく。
馬車に揺られながらの酒は酔うかもしれないが、それでも次々と変わりゆく外の景色を眺めながらの移動の最中に飲む酒は最高に美味いのだ。
私は酒を飲んでいると次第に酔いが回ってきたのか、意識を失ってしまう。
次に目が覚めた時には全く知らない部屋の一室に閉じ込められていた。
私は横になっていた白色のシーツの敷かれたベッドの上から起き上がり、辺りを見渡していく。
部屋の中を見渡すとそこには私の家の先祖を描いた絵が掛けられており、ベッドの前には椅子と円形の小さなテーブルが置いてあった。
ベッドは質の良いものを使用しているらしいが、他の壁紙やら床やらには所々ハゲた跡が見受けられた。
駅馬車の中の私を誘拐し、監禁しておくために空き家に慌てて家具を置いたのだろうか。私がじっと剥げた天井と地面を眺めていると、突如、部屋の中に稲妻のような光が走り、目の前に小柄な少年が現れた。
間違いない。彼は一年近く前に私の夢の中に現れたあの少年ではないか。
と、なるとここはドリーム・ランドなのだろうか。
そんな事を考えていると、例の可愛らしい顔の少年はベッドの側にまでいって、私の隣に腰を掛けて、
「やぁ、久し振りだねぇ~ミス・スペンサー」
と、前と同様の可愛らしい声で再会を喜ぶ。
「久し振りね。えーと」
「ハワードだよ。忘れちゃったの」
と、例の御伽噺に出てくるような可愛らしい顔の少年は頬を膨れさせながら言った。
私が何の用かと尋ねようとした時だ。彼はいきなり私の体に抱き付いて、
「今回は前と同じくらい……いや、前以上の厄介な出来事が起きたんだよぉ~だから、少しばかりきみの力を借りたくてさ……」
彼は私の体を触らんばかりの勢いであった。恐怖に駆られた私は咄嗟に少年を振り解いたのだが、少年はクスクスと笑って、
「冗談だって、冗談!それに、今回ばっかりは本当にヤバイんだから、下手をしたら、人類が程にね……」
どういう事なのだろう。私が耳を傾けていくと彼は『月の民』という謎の民族とその民族の支配者であるドリーム・ランドの怪物の事を話していく。
「そうなんだよぉ~その怪物があんたの世界で一番の厄介な人間を仲間に引き入れ、あまつさえその厄介な人間はあんたの世界で一番危ない国を怪物に差し出そうとしてるんだよぉ~」
私は頭の中でそれが昨日の朝刊に載っていた元生徒会長の事とニューロデム共和国の事だろうと推測していく。
すると、ベッドの下の小人はパチパチと可愛らしく両手を叩いて、
「きみの考えている通りさ!世界の中で一番危ない人間はその後に第二、第三の計画を進めようとしているんだ。第二の計画についてはもう止めようが無いけれどさ、第三の計画くらいなら、きみにでも止められるかと思ってさ」
「どういう事なの?」
「つまり、第三の計画は隣国である自称帝国の国民の団結心を奪う事にあるんだよ!元々四大国家の中でも一番貧しい国だけれど、皇帝が今は人気ないよねぇ~加えて、帝国内には王国以上に危険なテロリストが徘徊している状況だッ!今はギリギリだけれども、もし、その皇帝が市民に対して武器を向けたのなら、どうなるかなぁ~」
その言葉に私はドキッとしてしまう。それに両肩が寄せていかれるのにも気が付く。
彼は口元の右端を吊り上げて言った。
「その通り、国内で内戦が起きるねぇ~その隙をニューロデムが突いたらどうなるかな?」
帝国の領土はいとも容易くニューロデムの手に落ちてしまうだろう。それに、皇帝と反乱の指導者の両方を死刑に処して大統領が帝国を自身の国の一部に、いや、ニューロデム共和国大統領が帝国皇帝の任を兼任する可能性もある。
いずれにしろ、ニューヨーシャーにもそして我が国にとっても不利になる事は間違いあるまい。
私はその事態を防ぐべく、その少年にいつ何処で起きるのかを問う。
少年は言った。
「場所は帝国の宮殿前、起きる日は今年の聖夜。時間はお昼過ぎ……これでいい?」
私は首を縦に振る。同時に私の体が真っ白な光に包まれていき、気が付けば私は馬車の席の上にいた。
私は御者の男に起こされ、学院前の街をトランクを抱えて歩いていく。
確か、聖夜までは後、一週間あった筈だ。私は慌てて屋敷に戻り、ピーターを説得に向かう。
「え?帝国に旅行に行きたい?」
「ええ、帰ってきた時に帝国の夢を見ちゃってね。それで今年の聖夜は帝国で過ごしたいなと思って……」
ピーターは首を縦に振って玄関からボニーに向かって許可を取る。
何やら揉める声が聞こえたが、彼はすんなりと私に駅馬車の代金を手渡して、
「分かりました。お嬢様、せっかくの聖夜ですからね。楽しんできてくださいませ」
その時のピーターの顔に陰りが射したので何となく申し訳なく感じてしまうが、流石に帝国での戦いにピーターを巻き込む訳にもいかないだろう。
私はそのままトランクを持って駅馬車の切符を買うために街の郵便局へと向かう。
この街の良いところは郵便局が旅券も売っている所だろう。
そんな事を考えながら、私はトランクを持って出掛けていく。
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