王立魔法学院の落第生〜王宮を追放されし、王女の双子の姉、その弱い力で世界を変える〜

アンジェロ岩井

文字の大きさ
180 / 211
プロジェクト・オブ・リヴァーサル編

プロフェシーという言葉から連想されるのは例に漏れずに不吉な事ばかりらしい

しおりを挟む
帝国の王都を訪れたその日、私は現在の賞金稼ぎ部の部長、シェルトンと出会った。
彼女はホテルのレストランの前で熱心にハードカバーの本を読み耽っており、私が声を掛けるまでは気が付かなかったらしい。
だが、彼女は一瞬だけ顔を上げたものの直ぐに読書へと戻っていく。
トランクを下げた私は彼女に隣に座っていいのかを尋ねたが、彼女は何も言わずに黙って首を縦に動かすだけ。
私が彼女の目の前に座り、トランクを床に置いた後も黙って本を読み続けており、私が話せるようになったのは彼女が全ての本を読み終えてからであった。
彼女は私の方に向き直って、
「……ミス・スペンサー。用は何?」
「どうしてあなたがここに居るのかなって?」
彼女は暫く本の表紙を摩った後に、黙って私の方を見つめて、
「……悪魔が教えてくれた。聖夜の日に大変な事が起こるって……」
「大変な事って?」
彼女は悪魔から聞いたという情報を私に向かって話していく。どうも、彼女の聞いた情報は私がドリーム・ランドであの得体の知れない少年から聞いたのと同じ事だったらしい。
彼女は一通り喋り終えると今回の事件の黒幕の名前までも喋っていく。
黒幕の名前はジョナサン・グレンというらしく、彼は共和国内の特殊部隊を操り、帝国内に侵攻しているのだという。
その彼の潜伏場所は信じられない事に王都だという。
私はその情報に飛び付きたくなったのだが、いかせん数ヶ月前に彼女の使役する悪魔は国外に逃亡した過激派が私に復讐するのを見過ごしていたという前科がある。
今回も信用して良いものなのだろうか。私が思わず唸っていると、彼女は掛けていた眼鏡を直して、
「安心して、今回に至っては私の使役する悪魔はちゃんと起動している。あなたに迷惑を掛ける事はない筈……それに私だって血の聖夜なんてものは止めたい……」
彼女はそういうと本を脇に抱えて会計へと向かう。
あの会話から彼女も今回起きる予定の惨劇を止めにきたらしい。
私は後から運ばれてきたコーヒーを啜りながら、店を去っていく彼女の姿を眺めていた。
コーヒーを飲んでいると、私の前に帽子を深く被った黒いコートの男が現れた。
私はコーヒーを飲みながら、目の前の男を何気なしに眺めていたのだが、私の背後に銃を突き付けられてしまってはどうしようもあるまい。
目の前の男と同じ格好をした背後の男は私のお尻に銃を突き付けて、
「動くなよ。我々はニューロデム共和国の特殊部隊だ。キミとキミのお友達について話を伺いたんだけれども構わないよね……」
この男は口調こそ幼児に言い聞かせるような穏やかな物言いであるのだが、その裏にあるのは命令。要するに大人しく従えと言わんばかりの強迫観念。
加えてこの状態ではホルスターの銃を取る前にあの男の銃弾で私の臀部は撃ち抜かれてしまうだろう。
私は大人しく立ち上がり、私に密接する男の耳元の指示に従い、地面の下に置いた荷物の積もったトランクを持って店を後にする。
その上、ホテルまでも強制的にチェックアウトさせられてしまい、私は外へと連れ出されてしまう。
外に出た時に私は機会を伺ってその場から脱出しようと思ったのだが、二人の男に睨まれていては逃亡も反撃もできまい。そう考えて私は大人しくしていた。
その後に私はホテルの向かい側に存在する会社の中へと連れ込まれてしまう。
その会社の社名は『プロフェシー』
かつて、現在の大統領が大陸へと輸出しようとした怪物の名前ではないか。
どうやら、彼らはこの『プロフェシー』を隠蓑に帝国内での諜報活動を行っていたらしい。
彼らは微かな笑い声を浮かべた後に私を会社の中に押し入れて部屋の一室に監禁させた。
部屋はドリーム・ランドで私が閉じ込められたのと同じ部屋であり、丸い形の机が一台に椅子が二脚。そして白いシーツの掛かった簡素なベッドが一台あった。
だが、床も壁もあまりヒビが入っていないのは夢とは異なった。
私はそこに入るように銃を突き付けられたまま指示をされた後にホルスターとそこにある拳銃を渡すように指示を出された。
私は大人しく銃を男二人に預け、用意された寝台の上に座る。
部屋の中に閉じ込められた後に私はあの得体の知れない部長がどうなったのかを考えていく。
彼女の事だから、捕まる可能性は低い。例え、捕まったとしてもあの魔法や悪魔の力があるのならば、容易に抜け出せる筈だ。
私はそんな事を考えながら、ベッドの上に座り、正面の窓も何もない壁を眺めていると扉が開かれて食事を持った男が入ってきた。
男は乱雑に食事をテーブルに置くと私の荷物を調べようとした。
冗談ではない。せめて調べるにしても男にだけはやってもらいたくない。
私がその旨を告げると彼は無言でその場を後にしてその後で一人の女性が現れた。
長いカールの掛かった髪が胸のあたりにまで伸びており、その古代の女神を思わせるような美顔を併せ持てば直ぐにでも男は鴨になりそうだ。
彼女は丁寧に頭を下げてから、私に向かって言った。
「初めまして、ミス・スペンサー。私の名前はドミノ・ラルゴ。生えある共和国特殊部隊の隊長よ。そして、こちらがエミリオ。私の甥よ」
先程部屋を出て行った男はもう一度、こちらに戻ってきて、帽子を手に取って私に向かって深く頭を下げた。
男は短い金髪ではあったが、その顔は古来の彫刻を思わせる程の美しさを放っており、彼の体全体からは女性を寄せ付けるオーラを放っているかのように思われた。
このような美女美男子がどうして共和国の特殊部隊などに務めているのだろう。
私が疑問に思っていると先程のエミリオという男が口元の右端を吊り上げて、
「どうしてって言いたそうな顔をしているから教えるけれども、別段、不思議な事はない。オレと叔母の二人は自らこの道を選んだだけ、要するに好きでこの道に入ったんだよ」
「もういいでしょう?エミリオ。あなたは下がりなさい。じゃあ、お嬢さん……早速で悪いけれどもあなたの荷物をチェックさせてもらうわ。脱走防止のためだから、下手にいじったりはしないわ」
彼女は妖しく笑いながら言った。エミリオが出て行くのと同時に彼女は私の荷物をチェックしていく。
容赦なく荷物を床の上に並べた後に点検が終了した後に全て元の鞄に戻していく。
彼女は私に向かって向き直って、
「もう良いわよ。あなたの荷物には異常はなかったわ。じゃあ、決行の日まではここで大人しくしてて頂戴ね。安心して、終わった後に解放してあげるから……」
彼女はそう言うと扉を閉めて部屋を後にしていく。
だが、彼らの作戦が決行されてからでは遅いのだ。彼らが決行に至るまでに作戦を中止させなければならないのだ。
私は何としてでもここを出るという決意を固めていく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...