王立魔法学院の落第生〜王宮を追放されし、王女の双子の姉、その弱い力で世界を変える〜

アンジェロ岩井

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プロジェクト・オブ・リヴァーサル編

二人のラルゴを追え!

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「皇帝陛下!お願いでございます!どうか、どうか……税率を下げてくださいませ」
宮殿の門の前にて両手を拝んで懇願する老人。それに対して苛立った表情を見せる帝国の兵士。彼らとの間に何かが起こるのは火を見るよりも明白だ。
だが、そうはさせない。彼らと皇帝との間に亀裂を生じさせないために私はここに居るのだ。
私は拳銃を構えて彼らとの間に飛び出し、苛立った表情を見せる帝国の兵士の隣の兵士を撃ち抜く。
一瞬、抗議に集まった人々にも宮殿前を守っていた兵士たちの間にも戦慄が走る。
なぜなら、自分たちとは何の関わり合いもないウィンストン・セイライムの魔法学院の生徒がいきなり相手を撃ち殺したのだから。
当然、どちら側からも厳重な抗議が起こる。
宮殿前を警備していた兵士たちは同僚を殺された恨みから、集まった人々からは何も殺さなくても良いという至極まともな声が飛ぶ。
だが、私は撃ち殺した兵士の死体の服を剥いでその下に着ていた共和国の軍服を見せると彼らは即座に黙り、場に重い沈黙が流れていく。
それは宮殿前の警備兵も抗議に集まった人々も同じだった。
抗議に押し寄せた人々は今日はそれ以上は抗議をする気力が落ちたのか、慌ててそれこそ蜘蛛の子を散らす様に去っていく。私はその様子を見届けてから、すっかり疑心暗鬼となっていた兵士たちを見ていく。
思えばここに来るまでは長かった。私はシャステル部長と脱出した後にはホテルの前で作戦を練った。
いっそ、新しい銃を調達した後には『プロフェシー』に乗り込もうかと提案したのだが、部長は首を横に振った。
「……もし、襲撃に失敗したとすれば、厄介な事になる。彼らが拠点を移し替えたとしたら、困る……」
彼女はそこでなぜか脇に抱えていたハードカバーを開いて言った。
「だから、私はこの後にする事はたった一つと決めている」
彼女は主張した。そのまま彼らの決行日に妨害工作を及ぼせば良い、と。
私は当然反対した。当日に妨害工作を及ぼすなど無茶の極みだ。
だが、彼女は主張する。当日でも問題はない。むしろ、それまでに下手な妨害工作を行なったりすれば、彼らは例えこの場から逃げ出したとしても、また戻り、同じ様な作戦を繰り返す可能性があるのだと。
私は抗議した。なら、どうすれば良いのかと思わず腰掛けていたベッドの上から立ち上がり、彼女の瞳を見つめて良い方法を問う。
すると、彼女は例の悪魔を召喚し、ホテルの白い壁に紫色の光を当ててとある映像を映し出していく。
そこには共和国軍の軍服の上に帝国軍の軍服を着た兵士たちの姿があった。
私は思わず壁に映った彼らを指差す。
「どうして彼らはあんな馬鹿な真似をしているの?あんな格好をしたら、丸分かりじゃあない」
その言葉に先輩は悪魔から聞いたという彼らのこの行動の意味を話していく。
「……あれは作戦が終了した暁にはそのまま共和国の軍として帰るという印……」
「でも、そんな事をしたらバレちゃうんじゃあないんですか!?」
私は声を荒げて反論した。普通なら、あり得ない事だ。
「……問題ない。帝国の中を共和国の軍隊が歩くという事は皇帝にも伝えられており、皇帝も警備に加わるという名目で国の中を歩く事を承認している」
彼女は淡々とした調子で言った。他国では考えられない事であったのだが、皇帝の軍は人手不足であるために承認せざるを得ない状況らしい。
その上で商社を装い特殊部隊を送り込み、帰りは状況を利用し、堂々と軍隊として帝国内を歩いて帰るらしい。
成る程、考えたものだ。私が顎の下に親指と人差し指を置いて感心する素振りを見せてみる。
すると、シャステル先輩はもう一度本を開いて場所を指定してその世界へと入っていく。
私はその様子を見て何とも言えない気分となってしまってそのままベッドに潜っていく。
そして、そのまま何もする事なく一日を休養と必要な物の購入で時間を潰す事にした。
そして、今に至るのだ。私は目の前で繰り広げられている光景を見て予想以上の成果を上げられた事を確信する。
宮殿前の警備兵たちは互いに互いを銃口で突き付け合っていた。
このままでは最早、城の警備では成り立たないだろう。
彼らの計画は失敗したと私が踏んでいた時だ。乾いた音が響いて兵士の一人が地面の上に倒れていく。
私が銃声をした方向を振り向くと、そこには銃を構えた例の金髪のカールの美人、ドミノ・ラルゴが立っていた。
彼女は顔に勝ち誇った様な笑顔を浮かべて言った。
「これをやったのはあなたよ。あたしじゃあないわ」
「え?私の銃は両手で握っているでしょ?どうして、私が撃った事になるの?」
「そんなの考えてみたら分かるじゃん。あんたが今、あたしが握っている拳銃を握れば、この兵士を撃ち殺したのはあんた……ちょっと計画は変更よ。ウィンストン・セイライム王国の狂犬が何の罪もない兵士を撃ち殺したという事にしましょうか?」
彼女は顔に妖しい笑顔を浮かべて言った。それから、人差し指を鳴らし、警備兵に化けていた自身の甥を私に向かわせる。
「おい、ウェンディ・スペンサーといったな?お前はオレの目を見ろッ!」
そう言うと目を紫色に光らせて、周りを同じ紫色の光で覆っていく。
が、同時に私は左手の掌で男の魔法を吸収したので心配はいらない。
エミリオの顔が僅かに引きつるのが見えた。私は勝利を確信して左手の掌から先程の魔法を放ち、辺り一面を紫色の光で覆っていく。
すると、どういう事だろう。先程まで鬼気迫る表情で隣の同僚を眺めていた警備兵たちが正気のない表情で真正面を眺めていた。
どういう事だろう。私が首を傾げそうになった時だ。
地面に向かって伏せていたエミリオが叔母の拳銃と自身の拳銃を用いて目の前の男たちを撃ち殺していく。
そして、最後の一人に向かって男が握っていた拳銃の銃口を向けた時だ。
男はようやく正気を取り戻し、目の前に突き付けられた銃口を見て悲鳴を上げる。
「な、何だッ!お前は!?ど、ど、どうしてオレに銃を向けてやがる!?」
「やかましい。クソッタレ……折角、警備兵の中に何人かのオレの催眠魔法を使って仲間を仕込ませていたのに水の泡だ。オレの溜飲を下げるためにもここで死ねや」
だが、その前にシャステル部長がエミリオの腕を悪魔に掴ませて彼が銃を放とうとするのを防ぐ。
「……邪魔はさせない。その人には今日の事件の証言者になってもらう」
「クソッタレがッ!オレの手を離しやがれ!」
彼の叫び声と共に目の前から下は牛の足に体は人間の体をして蛇の頭に山羊の角を生やした奇妙な生物が先輩の操る悪魔の腕を掴み、エミリオの元から離していく。
「……危なかったわね。でも、これで安心よ。エミリオ」
彼の叔母にして特殊部隊の隊長は長い金髪の髪をかき上げ、勝ち誇った表情で部長を眺めていた。
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