王立魔法学院の落第生〜王宮を追放されし、王女の双子の姉、その弱い力で世界を変える〜

アンジェロ岩井

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プロジェクト・オブ・リヴァーサル編

サンダーボール作戦の結末

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「共和国の極秘文章にはこう記されるでしょうね。サンダーボール作戦は右折左折はあったものの、無事に帝国兵の殺害を共和国の劣等生の落ちこぼれに罪を擦り付けて終わり、と……完璧な筋書きだわ。アッハッハ」
彼女の顔に浮かべているのは明らかに狂った笑いだ。彼女は自身の使役する悪魔で甥を解放し、部長の操る悪魔に攻撃を繰り出していく。
二体の悪魔が殺し合いを始めていく中で彼女は私とシャステル部長の二人に向かって銃を突き付ける。
「さてと、戦いは悪魔に任せている間に私たちはここで決着を付けましょうか」
さてと、どうする。私は自分の胸の中に問い掛けた。だが、問い掛けても答えは返ってこない。部長の横顔を眺めたものの部長も万策尽きたと言わんばかりの顔だ。
一応は手を悪魔の様に変えてみるのだが、目の前の金髪の女性相手に至ってはそのそんなものは意味がないだろう。
嘲笑われてしまうのがオチだ。だが、それでもいくしかない。
部長は覚悟を決めたのか、彼女の前に向かって歩いたのだが、ようやく悪魔の腕で攻撃を繰り出そうとした時だ。
彼女の目の前に土の下から大きな口を開けた鮫が現れて彼女をその鋭利な刃物の様に尖った歯で噛み潰そうとしていた。
私は慌てて部長を呼び止めたのだが、部長はそのまま鮫の中へと突っ込む。
私は咄嗟に悲鳴をあげたのだが、彼女は悪魔の腕を使用して鮫の口に穴を開けて外へと出てきた。
部長はそのまま真っ直ぐ地面の上を歩いていき、他に現れた二体の鮫の口の中に穴を開けて出てきたのだが、今度は真下から大口を開けて狙っている鮫がいる事に気が付く。
私の叫び声で部長は地面の下の脅威に気が付き、飛び上がり、今度は足を悪魔の足へと変えていく。
鋭い爪を有した悪魔の脚を持った部長は彼女と共に空中へと飛び上がった様に飲み込まれたものの、彼女は鮫の体を食い破り、外へと出ていく。
一連の様子を見て例の女性は両手を叩いて、
「本当に素晴らしいわ。私の魔法を打ち破るなんて……あなたは最強の悪魔使いシャーマンね!ねぇ、あなたさえ良かったら、こちらにこない?あたしと甥とあなたの三人で共和国の役に立たない?感激するわよ」
その問い掛けに私は思わず自分の胸が早く走っている事に気が付く。
心配なのだ。もし、彼女の気が変わってあの女の仲間になってしまったらどうしようかという懸念があった。
だが、彼女は丁寧に首を横に振って、
「……丁重にお断りさせてもらう。私は王国の人間。間違っても、共和国の傘下に降ったはしない……」
拒絶の言葉。だが、ドミノには落胆した様子も怒った様子も無い。
ただ落ち着いた顔で、
「そう、残念ね」と言ったきりである。
彼女は引き続き銃を構えて彼女を狙ったのだが、彼女は瞬時に頭を下げて銃弾が自身の頭に向けられるのを防ぐ。
それから、部長はドミノに向かって悪魔の爪を向けたのだが、その前にエミリオが立ち塞がり、自身の体を盾にして部長の攻撃を防ぐ。
エミリオ・ラルゴの魔法はあくまでも人体を操る催眠関連の魔法。
宮殿前の警備兵たちを操り『プロフェシー』所属の警備兵たちを潜入させた事とあの魔法が私から周りに向かって掛けた時に周りの兵士を殺したのが良い証拠だ。
自分の仲間を含む宮殿前の警備の兵士たちを殺したのは私に使役されるという展開を防ぐためだったに違いない。
だが、その催眠を使用して思い込みの力で自身の肉体を強化する事は不可能だろう。
彼の魔法はあくまでも催眠。相手を洗脳するのが関の山であるに違いない。
だから、彼は部長の悪魔としての力をもろに喰らったに違いない。
その証拠に彼は地面の上で鋭い傷を受けて倒れていた。
「……クソッタレ、オラァ、こんな所で終わりかよ……クソ」
「可哀想な。エミリオ……あたしが助けてあげましょう」
彼女はそう言うと指を鳴らし、悪魔を呼び寄せてエミリオの体を吸収していく。
彼女はそれを見て両頬に手を当てて喜ぶ声を上げていく。
「これでッ!これでッ!あたしのエミリオはあたしの一部となったのよッ!」
あたしの一部?どういう事だ。あの悪魔は単に使役しているだけではないのか。
それとも、あの体から派生されたものだとでもいうのか。
私の内に抱かれた疑問は目の前で例の危ない女と対峙している部長が答えた。
「……つまり、あなたは悪魔の中に自分の甥を取り込んで、それを自分の一部と表現したわけね?自分の悪魔の中に取り組み、死ぬ事もなく甥を使い続けるから、そんな言葉を使った?当たってる?」
目の前の女は口を裂けんばかりの勢いで口元を吊り上げて、
「そうだよぉ~あたしと甥はずっと一緒にいるのぉ~それが、一番の幸せなんだからッ!」
彼女がエミリオを吸収させに向かった事により、部長の悪魔は解放され、その悪魔は彼女の背後を狙うものの、彼女は自分の悪魔を使用して部長の悪魔を凌ぐ。
そして、目の前で部長に向かって拳銃を突き付ける。
彼女は勝ち誇った表情で部長を睨む。
「残念ね。お嬢さん……あなたがさっきのあたしの提案を受け入れたら、助かったのに……」
私はその時に初めて体が動く。それまでは悪魔と悪魔の対決を見て体が動けなかったのにも関わらずにだ。
だが、彼女は向きを変えて私に例の鮫を向かわせてくる。
私は左手の掌を使用して鮫を吸収していく。
そして、左手の掌から例の鮫を彼女に向かって喰らわせていこうとするが、その前に彼女は同じ鮫を繰り出して殺し合いをさせていく。
彼女は笑っていた。鮫が悪魔が殺し合う姿を見て。
このまま彼女の狂った笑みは永遠に続くのかと思われた。
だが、彼女は忘れていた。悪魔の手を持つ少女を。ジャネット・シャステルの事を。
彼女は悪魔の爪で彼女の喉を引っ掻き、悲鳴さえ上げさせる暇さえなく彼女を倒す。
シャステル部長は悪魔の手を引っ込め、地面の下に倒れたドミノを眺めていた。
だが、ドミノは喉に傷を負っても尚、笑っていた。
彼女はか細い声で喉から小さい息を吐きながら言った。
「……これこそが、これこそが真の死……万物に与えられた当然のもの……素晴らしい、素晴らしいわッ!」
彼女は大きく目を見開いたかと思うとそのまま地面の上に倒れてしまう。
その直後だ。彼女の使役していた悪魔が天井へと昇っていく。悪魔というのは地下に潜るものだとばかり思っていたので私は肩を透かしてしまう。
天へと昇っていく悪魔を見ながら部長は言った。
「……これは終わりではない。むしろ、始まり、この世を破滅へと導く世界最終戦争ハルマゲドンの序曲に過ぎない」
と、意味深な台詞を口走る。悪魔というのは厄介なものだ。部長はどうやら見なくても良いものを見てしまったらしい。
私は彼女に同情の目線を向けた。
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