王立魔法学院の落第生〜王宮を追放されし、王女の双子の姉、その弱い力で世界を変える〜

アンジェロ岩井

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ムーン・アポカリプス編

絶対王政の崩壊というのは呆気ないものだ

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どうやら、完全に打つ手はなくなってしまったらしい。もう終わりだ。後はあの虫たちに殺されるか、はたまた彼女の持っている回転式拳銃で体を撃ち抜かれるかのどちらかだ。
私はまだ死ぬわけにはいかない。まだ地獄に堕ちるわけにはいかないのだ。私は歯を噛み締めて目の前の相手を睨む。
すると、私はある事に気が付く。彼女の持っている拳銃が正規の拳銃ではなく、暴発式の危険な拳銃、ミッドナイトスペシャルである事を。
どうやら、これは千載一遇のチャンスを得たらしい。大方、あの後に大慌てで私を追ったから、あの時に私に見せた粗悪品の拳銃のサンプルと自分の拳銃を見間違えたという事だろう。このままそれを指摘しなければ、六発目には彼女は死ぬだろう。
だが、死んでもらっては困る。彼女にはその製造工場の事を聞かなければならないのだ。
なので、私は彼女の持っている拳銃から四発の弾丸を奪う事にした。
勿論、文字通りにそのまま奪うわけではない。彼女に自由に四発撃たせた後に自らの手であの拳銃を撃ち落とす計算なのだ。私は彼女を挑発し、わざと一発放たせた。
彼女の持っていた拳銃が火を吹き、私の近くの地面が抉れている事に気が付く。
思わずに足が震えてしまうが、それでも私は挑発を続ける。
二発、三発と乾いた音が続けて鳴る。
残り一発というところか。私は最後の挑発を行う。
彼女はもう一度拳銃を構えて私を狙う。よし、これであの銃弾を交わせば私の作戦は成功するだろう。
そう考えていた時だ。私の目の前に彼女の操る虫が現れて視界を覆い隠す。
どうやら、これも彼女が考えていた事らしい。私は慌てて左手の掌を広げて虫たちを自分のものにしていく。
そして、ようやく視界を広げると私の目の前に銃弾が向かってきていた。
「き、キャァァァァァァァァァ」
私は咄嗟に悲鳴をあげてしまう。その様子を周りのギャングどもがニタニタという陰湿な笑いを顔に浮かべながら眺めていた。
私は咄嗟に地面を蹴り、頭や体に当たるという最悪の事態を防ぐ事はできたのだが、それでも完全に避け切る事は出来ずに、そのまま弾丸は私の肩に直撃してしまう。
地面に倒れた私を彼女は体を震わせてご満悦な表情で見下ろす。
「そうッ!その顔よ!今の貴女は世界最高クラスの劇団に所属する女優よりも、世界の中で一番美しいと称される歴史上の美女よりも可愛い表情をしているわ!私にその表情をもっと見せてちょうだい。そして、私に魂の色を女の子の魂を教えてちょうだい!」
彼女の顔は明らかに狂人のそれだ。彼女は私の魂を見る事に固執していた。
加えてこの状況では不利に動くのは私の方だろう。私は先程の戦闘で肩に傷を負ってしまっている。それは後で治療系の魔法を使える病院の人にでも取ってもらうとして、問題は目の前の狂人の銃を撃ち落せるかという事だ。
周りに存在するギャングどもの事は心配いらない。先程のあの女が操っていた筈の虫は今や私の配下だ。
そう、お姫様に従う城の兵士と言った所だろうか。その忠実なる兵士ならば、周りのギャングどもなど寄せ付けないに違いない。
問題は目の前の女。ケイブという男性名であるのにも関わらず女性であった暗黒街の顔役だ。
彼女の銃を撃ち落とすのには肩を撃ち抜かれたという現在の状況では不利すぎる。
何とか打破する手掛かりはないのだろうか。いや、考えても始まるまい。
私は腹を括った倒れていた煉瓦の上から立ち上がり、拳銃を構えて目の前で例の粗悪品を突き付ける女と向き合う。
私は迷う事なく指を鳴らし、害虫。いや、私に仕える忠実な兵士たちを周りのギャングの元へと向かわせていく。
目の前で対峙する彼女は私の意図を察したのか、口元の右端を吊り上げて言った。
「なるほど、これで邪魔者は入らない……という事ね?考えたものだわ。でも、貴女、自分の駒を全て向かわせて良かったの?貴女の周りがガラ空きじゃあない。これで……」
彼女は見せつける様に弾倉を回して拳銃の弾丸を再装填してみせる。
ミッドナイトスペシャルはその銃自体の耐久性にあるので装填しても問題はない。彼女がそれを気付いていないだけだ。
私は暴発を防ぎ、彼女から情報を聞き出すために、拳銃を構えて彼女と一対一の決闘に臨む。
当初、私が望んだ状況であり、本来ならば歓迎できる状態の筈なのだが、肩の傷のせいかあまり芳しくはないように思われる。
だが、やるしかない。私は腹を括って彼女との決闘に臨む。
緊張のせいか、私の頰を撫でる風が妙に冷たく感じた。
緊張の一瞬。永遠とも呼べる沈黙がこの空間を支配する。
そして、最初にその沈黙を破ったのは彼女の銃弾だ。
乾いた音を響かせて私の目の前から縦断が迫る。
私は敢えて目の前へと飛び上がり、そのまま弾丸を上へと飛び上がる形で交わすと目の前で対峙したケイブに向かって銃を放つ。
「このド外道がァァァァァァ~!!」
私のその一言ともに弾丸が飛び去り、彼女の肩に向かって放たれていく。
彼女の持っていた拳銃は地面へと落下し、彼女は銃を弾かれた衝動から地面に腰を下ろしてしまう。
だが、それでも彼女は笑顔を引っ込めない。それどころか、悪戯がバレて親に連れて行かれる子供のように無邪気な表情で言った。
「あーあー、やられちゃったか。残念、残念……けど、しょうがないかなーなんて思っちゃったりするわ。しょうがないから、ミッドナイトスペシャルの事でも何でも話してあげるわ」
彼女はそう言うと私に向かって手を伸ばし、私はそれを引っ張り上げた。
そのまま彼女は自分の手下を静止して、無言で保安委員の所にまで付いて来た。保安委員の元で賞金を得た私はその金で近くの宿屋に泊まり、部屋で一人、黄昏ていた。
気が付けば夜が明けかけていた。新しい夜明けだ。私は窓から外の景色を眺めながら、そう考えていた。
すると、先程まで私がいた筈の裏街に長銃を持った保安委員の男たちが突入する姿が見えた。どうやら、この街の闇もソロソロ払われてしまう時期らしい。
ホッとした私は咄嗟にバスタブを借りたくなった。そこで頭と体を洗ってあの衣装のまま寝台の上で大の字になって寝転んでいた。
とにかく、今日は疲れた。私はこのまま意識を失って夢の世界へと旅に出る事にした。
気が付けば、私の周りはまたもや例の石造りの家々が立ち並ぶ場所。
どうやら、私はまたドリーム・ランド夢の国に迷い込んでしまったらしい。
そして、例の如く目の前に例の小さな少年が立って私を出迎えていた。
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