王立魔法学院の落第生〜王宮を追放されし、王女の双子の姉、その弱い力で世界を変える〜

アンジェロ岩井

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ムーン・アポカリプス編

ムーンレイカー

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「これが私の魔法『月からの守護力ムーンレイカー』だよッ!キミは月の力を感じた事はないかね?月というのは我々の住むこの星に付き従う唯一の衛星であり、この月があるからこそ、生きられていると言っても過言ではないのだよッ!それくらい、月の影響は大きいんだ」
「ドヤ顔で解説している所、悪いけれど、月の重要性くらいは落ちこぼれの私でも知っているわ」
その言葉を聞くのと同時にドラッグスは無言でもう一つ、小型の月を目の前に現し、私に向かって先程の光線を浴びさせる。
「……知っているのか、結構、結構、馬鹿だとは思ってはいたが、それなりの知識は身に付けているらしいな」
その言葉を聞いても何とも思わない。父と和解した私に怖いものなど何もなかった。
後は目の前で拳銃を持った怪物を叩き潰すだけだ。
そう思って両手で拳銃を構えてあの男を撃ち殺そうとした時だ。私の目の前に突然、共和国の軍服を着た男たちが現れる。
男の魔法には幻覚も含まれているのだろうか。そう考えていたのだが、じっくりと見てみた所、彼らは幻ではない。純粋な軍人なのだ。
私との間に寝惚けている共和国の軍人たちを間に挟んで彼は大きな声で叫ぶ。
「驚いたかな?ミス・スペンサー!こいつが私があの精神世界の怪物から預かった力の一つだよ!遠くのものを即座に私の目の前に運ぶ……これがあの世界の住人たちの基礎能力というのだから、驚くよねぇ~」
魔法ではなく能力なのか。やはり、あの精神世界の住人たちは人類などとは比べ物にならない身体や頭脳、精神を誇っているのだろう。
だが、そんな事はどうでも良い。問題は目の前にぎっしりと集まったこの男たちだ。
男たちは暫くして場所が変わった事に難色を示したようだが、背後に大統領の姿を見つけたようで安心した声を出していく。
大統領は多くの数にも負ける事なく、彼らのざわめきよりも大きな声で命令を下す。
「共和国大統領として命令を下す!者ども!あの女を始末しろ!」
その言葉を聞いて彼らは私に向かって一斉に長銃を構える。
ケネスやピーターに助けを求めたいのだが、二人ともこの人混みに紛れてしまって判別がつかない。
どうすれば良いのかと悩んでいると、大統領はそんな私に追い打ちを掛けていく。
彼は大きく指を鳴らし、広場に集まった共和国の兵士たちの殆ど全員に魚のような形をした兜を被せていく。
その姿を見て私は思わず戦慄してしまう。と、言うのもその兜というのはかつて世界を滅亡させ掛けた『海の民』が使用していた兜であったからだ。
冷や汗をかく私に向かって彼は腕を組みながら、勝者の驕りさえ感じられる高慢な態度を見せ、嘲笑いながら言った。
「驚いたかな?これが、私があの月を支配する王者から預かった魔法の一種だよ!いや、彼らの兜を預かったのだと言ってもいいかな?彼らの強さは本来の『月の民』の住人の半分以下の強さだが、キミの動揺を誘うのには十分過ぎるかなッ!ハッハッ」
明らかな嘲笑。確かに恐ろしい。だが、生唾を飲み込み、顔を青くさせたとしても絶対に怯えて尻尾を巻いて逃げる真似だけはしたくない。
そう思って私は拳銃を構えて目の前に現れた言うなれば擬似『月の民』とも呼べる存在へと立ち向かっていく。
私はまず銃弾で彼らに被さっている兜を弾き飛ばそうとしたのだが、どうも思い通りにはいかないらしい。
私の弾が虚しく跳ね返る。なので、今度は足を狙って彼らの戦意を奪おうとしたのだが、それも不可能。
彼らは私の狙いを読んだらしく私が足元に向かって拳銃を突き付けた際に彼らは一斉に私の頭に向かって銃口を突き付ける。
恐らく、彼らはこのまま私を何の躊躇いもなく撃ち殺すだろう。
それだけは避けなくてはなるまい。私はそう考えて地面を蹴って滑っていく。
我ながら名案だと思う。彼らは私の予想通りに互いの体を銃で撃っていきバタバタと地面の上に倒れていく。
そして、私は彼らの一人から長銃を取り上げて彼らの一人の足を撃つ。
すると、私に触発されたのか、集まっていた共和国の兵士たちが次々と銃を抜いて私を狙うものの、私は彼らの足元を滑り、彼ら同士で撃ち合わせて、数を削っていく。
そして、大統領の手駒を削り、奴を翻弄できればそれで良いと思っていた。
だが、辿り着けたとなれば考えも変わるものだ。作戦変更を決意した私は目の前に広がる軍勢を払い除け、大統領の前に辿り着き、そのまま有無を言わさずにロイス・ドラッグスを撃ち殺そうとした時だ。だが、ここで予想だにしなかった事が起こってしまう。
大統領に一人の将校と思われる短い黒色の口髭を蓄えた男が大統領に口を挟む。
どうやら、彼はたまたまなのか、数が足りなかったかで兜が被せられなかったかのどちらかだろう。
その口髭に似合うダンディーな風貌を纏わせた顔の良い男は大きな声で、
「大統領!私はもう耐えられません!あなたは我々を勝手にこの場所に呼び出した挙句に妙な仮面さえ付けさせて強制的なに少女と殺し合わせる!こんなものには耐えられません!私は降りさせてもらいます!」
その言葉を聞いてドラッグスが笑う。
「まぁ、待ちたまえ。キミの部下はまだ残っている。共和国の……いや、自由を乱す愚かな敵はあそこにいるじゃあないか、キミも早く行きたまえ」
ドラッグスは自分よりも年上のそれも将校である男性に対しても何も言わずに、ただ黙って行けと命令したのだった。
「い、嫌です!」
「忘れたのか?大統領の命令は国の命令だぞ、クラーク中将」
彼は恐らくその言葉の意味に秘められた意味を理解したのだろう。言葉の奥底に含まれているのは大統領に逆らえば、お前は反逆罪で捕らえられてしまうという事に。
その証拠に僅からながらも、歴戦の中将の顔に冷や汗が垂れ、顔が青いのを通り越し、白くなっている事にも気が付く。
だが、それでも彼は声を震わせて、
「わ、私が忠誠を誓ったのは健全なる祖国と祖国に掲げられている『自由』という信念だッ!ロイス・ドラッグスという個人に忠誠を誓ったのではないッ!」
「……そうか、残念だよ。中将」
彼は拳銃を取り出して彼に突き付けて言った。
「あら、随分と余裕ね?私に拳銃を突き付けられていた事を忘れていない?あなた?」
その言葉を聞いたドラッグスは不敵な笑みを浮かべた後に無言で私に向かって例の小型の月を向ける。
私は慌てて彼を先に吹き飛ばそうとするものの、時既に遅しというべきであった。
私に向かって大きくて太い光線の光が当てられた。
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