王立魔法学院の落第生〜王宮を追放されし、王女の双子の姉、その弱い力で世界を変える〜

アンジェロ岩井

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ムーン・アポカリプス編

もう逃げられないわよ

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私に例の光線が当てられそうになった時だ。私の元に先程のクラーク中将と呼ばれた男が私を庇って光線を背中に浴びてしまう。
クラーク中将が呻き声を上げたために、私は思わず彼に向かって身体の心配をする。
すると、クラーク中将は私に向かって微笑み掛けて優しい手で私の頭を撫でていく。
私は声を震わせて問う。
「ど、どうして私を助けたの?私を助けたためにあなたはそんな傷を……」
彼は私の心配を鼻で笑って、
「心配はいらんさ、私にとってこれくらいの傷は傷のうちに入らん。それよりもだ。キミに頼みたいのは祖国を滅亡へと追い込もうとするあの狂人の排除だ……私はもう助からんかもしらん。だから、キミに頼むんだ」
「で、でもあなたその傷じゃあ!」
「心配はいらんさ、私はこう見えてもタフでね。それよりもあのクソ野郎だ。あのクソ野郎の始末をよろしく……頼む」
彼はそう言って両目の目蓋を落とす。死んでいるようには見えない。どうやら、気絶したらしい。私は静かに彼を地面の上に寝かせると、目の前でニヤニヤとした笑みを浮かべる男に向かって拳銃を突き付ける。
「観念なさいッ!あなたにはもう言い逃れもできない罪があるわッ!クラーク中将の殺害に、それに共和国から戦争を仕掛けようとした罪がねッ!」
「罪?罪?全く笑わせる。人民の金を吸い取る蚤の様に卑劣な王族や貴族がそんな事を言うのか?」
私は男の放った言葉が信じられずにもう一度聞き返す。
だが、男は先程と全く同じ答えを繰り返す。
「王族や貴族というのは正当化された蚤だと言ったんだよ。庶民から金を巻き上げて自分たちだけ悠々自適な生活をする寄生虫だとなッ!」
「違うッ!」
「違わないねッ!貴様らは庶民の金を巻き上げて自分たちだけ贅沢する寄生虫なんだよッ!」
「言うに事欠いてよくも……」
私は自分の拳銃を持つ手が震えている事に気が付く。恐らく怒りだ。誇りあるウィンストン・セイライムの王家と貴族とを馬鹿にされた怒りだ。
この怒りは馬鹿らしいという人もいるだろうし、実際に、私の中でもこんな事に怒ってどうすると嗜める冷静な自分がいた。
だが、私は王族としてのプライドがあった。何よりも、こんな奴に家族を蚤だと侮辱されたのが許せない。
私は拳銃を向けて例の台詞を叫ぶ。
「このド外道がァァァ~!!」
私の怒りと共に長銃の銃弾が飛び交うが、ドラッグスはそれを容易に避けてそのまま私に拳銃を構えて言った。
「『ド外道』か……報告書によれば、キミが色々な悪党に向かって言い放つ台詞らしいが、本当か?」
「嘘なんて言ってどうするのよ?それに嘘を吐いたとしても、私にメリットなんてないじゃあない」
「それもそうだな。ミス・スペンサー。変な事を言ったお詫びに私が直ぐにでも始末してやるよ」
私は拳銃を構えて彼の攻撃に臨む。だが、その前に彼は指を鳴らして周りの兵士を集めて大量の兵士で囲ませた。
気が付けば、大勢の兵士が取り囲む中を私は一人。孤独の戦いを始めるのかと思われたのだが、背後から銃声が聞こえてきて先程、逸れたはずの例の二人がここに入って来たのだった。
ケネスは大統領とその軍隊に向かって拳銃を突き付けて言った。
「もし、貴様らがウェンディに……おれの愛する人に指一本でも触れてみろ、即座におれの魔法で皆殺しにしてやるからな……」
ケネスの言葉の中に含まれた「愛する人」という単語に思わず反応してしまう。
私はそのまま拳銃を構えたもののやはり、先程のあの言葉が耳から離れない。
「愛する人」という単語が私の頭の中にこびり付いていく。
だが、その隙を突かれてしまったらしい。私は再び怪物の姿に変貌したドラッグスに背中を強く叩かれて地面の上に転がる。
その周りを銃を持って取り囲む共和国の兵士たち。
私の武器は長銃一丁と既にホルスターの中に収めた弾の少ない回転式拳銃のみ。
幾ら何でも不利に感じる。ピーターもケネスも周りを囲む兵士たちを一斉に撃ち倒すのは難しそうだ。
私は観念して両眼を瞑ったのだが、いつまで経っても私に向かって銃弾は振りかからない。
私が恐る恐る目を開けると周りの兵士を囲む兵士の一人の顔に裁縫で塗った様な糸が巻き付かれていた。
男の顔の周りを裁縫の時に使う棒針棒で塗られていく兵士。他には水に濡らされた後に雷を飛ばざれていく兵士たち。
他にも銃弾や様々な魔法が彼らの向かって放たれていき、次第に兵士たちは狂乱に陥った兵士たちは全て地面の上に倒れていく。
仲間たちだ。仲間たちが私を助けに現れたのだ。一年生な二年生の何人かはまだ入院しているらしいが、殆どの仲間たちがこのレースのゴール会場に集結していた。
その中の一人、かつての賞金稼ぎ部の部長、エマ・ダーリングが拳銃の銃口の先端を突き付けて叫ぶ。
「我々の目標はあの兵士たちだッ!白亜の騎士団の名にかけて我らが公爵家令嬢を救済しろッ!」
その言葉と共に多くの団員たちが残った兵士たちの殲滅に向かう。
銃撃戦や魔法による攻撃の末にドラッグスが呼んだ兵士たちは全滅してしまう。
私も集まった騎士団の仲間たちも自然と残った怪物へと視線が注がれていく。
だが、怪物は焦った様子を見せようとはしない。怪物は右の前脚で地面を叩き、私たちをその鈍器の様な重い足で私を叩き殺そうとしていた。
私は地面の上から飛び上がり、怪物の攻撃を交わしていく。
怪物はそれでは足りないと見えて直ぐに左の前脚で私を地面に叩き落とそうとしたのだが、私は上手く攻撃を交わし、怪物の体に向かって両手に持っていた長銃を引く。
当然、怪物には効果は無いのだが、私の周りに万華鏡の様な綺麗な鏡が現れて、そこから多くの銃弾が怪物に向かって放たれていき、怪物が蜂の巣にされていくのが見えた。
流石の怪物もこれには応えたらしい。呻き声を上げて地面に倒れていく。
私が背後を振り向くと、そこには満面の笑みのケイレブ・オーウェンの姿。
彼は拳銃を向けて他の仲間と共に怪物に向かって歩み寄っていく。
徐々に距離が縮まっていく様子を見て怪物は思わず肩を竦めてしまう姿が見えてしまう。
あの怪物の姿では例の月の魔法は使えないのだろう。いい気味だと思いながら、ドラッグス包囲網を眺め、私も長銃を構えて怪物の元へと進んでいく。
怪物はもうこの姿でも歯が立たないと判断したのか、元の若い男の姿へと戻っていく。
彼は下唇を噛み、散々に悪態を吐きながら、自分の元へと向かって来る私たちを眺めていた。
彼はその場から慌てて屋内へと逃げ出そうとしたが、屋内から三ヶ国の軍隊と妹とが揃って出て来た事により、事態は男の悪い方向へと進んだらしい。
私は全方向から挟まれた男に向かって冷酷に言い放つ。
「もう逃げられないわよ」
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