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後はもうお家に行くだけです
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その翌日、俺は朝早くにベッドの上から起き上がり、学校の鞄からなんの装飾もないクリアファイルに挟まれた原稿用紙を取り出す。
それをリュックサックに詰め込むと、親父と涼子と共に彼女の家へと向かっていく。
彼女の家は相変わらず、我が家と比べれば大きかったが、俺にはあの先輩にも褒められた小説があるではないか。
何も臆する事はない。そう、自分に言い聞かせて、足を踏み入れていく。
涼子のお母様は相変わらず、玄関の前に立っておられ、俺たち親子をまるで、敵でも睨むかのような視線で一瞥すると、すぐに大広間へと案内していく。
大広間には既に如月家の一族が集結しており、錚々たる面子が俺たちを待ち構えていた。
桐生家の二人は如月家が座る席の真向かいに、涼子は涼子のお母様に隣を勧められたが、それを拒否し、親父の横に座る。
暫くの間、無言で如月家の面々と向かい合っていたが、俺は座布団に座る際に、横に置いてあったリュックサックから例の原稿用紙の束を取り出して、涼子のお母様にそれを差し出す。
涼子のお母様はそれを俺の手から奪い取ると、その原稿用紙に一枚、一枚、丁寧に目を通していく。
その間、親父と涼子は神妙な顔を、俺はといえば、冷や汗が止まらず、顔を背けていた。
やはり、プレッシャーには耐えられない。なにせ、俺と小町が書いた小説が詰まらなければ、俺たち家族の家が燃やされるのだ。
いや、それだけで済むだろうか。涼子のお母様は本当に、俺と親父を拷問に掛けてしまうかもしれない。
恐らく、如月家にはバレていないだろうが、俺は親父の前に涼子と付き合っていた男。
それだけで、あの娘大好き!なお母様からすれば拷問に掛ける相手だろう。
俺が折った脚をカタカタと震わせていると、目の前で全てを読み終えた涼子のお母様が視線を落としている事に気が付く。
どうしたのかと思っていると、彼女は突然、顔を上げて叫ぶ。
「素晴らしいィィィィィィ~!!まさかッ!まさかッ!この世にこんな面白い物語があったとはッ!この如月亜美子ッ!一生の不覚ッ!あなたッ!桐生零だったよね?」
「あ、はい」
「許すッ!あんたの書いた小説に免じて、あんた……いや、あなたのお父様と涼子の結婚を認めるわァァァァァ~!!」
どうやら、余程、気に入ってくれたらしい。ここまで喜ばれると少しオーバーな気がしてならないが、拷問に掛けられたり、家を燃やされるよりは全然、マシな展開だ。
一息が付いて、俺が深い溜息を吐くと、そのまま、彼女は原稿用紙を持って、二階へと駆け上がっていく。
「こうしちゃあ、いられないわ!早く、健司にもこれを読ませてあげないと!」
健司?健司とは誰なのだろう。俺が首を傾げていると、元樹君が俺に近付いて耳打ちで教えてくれた。
「引きこもりの兄さんだよ。ここ何年か、ずっと家の中に篭っててさ。何かキッカケがあれば、外から出ると母さんは信じてたんだ」
俺の小説がそのきっかけになるという事だろうか。
それはどうだろう。だが、彼を引き摺り出せなかった時は俺の責任はより一層、重くなるだろう。
それをリュックサックに詰め込むと、親父と涼子と共に彼女の家へと向かっていく。
彼女の家は相変わらず、我が家と比べれば大きかったが、俺にはあの先輩にも褒められた小説があるではないか。
何も臆する事はない。そう、自分に言い聞かせて、足を踏み入れていく。
涼子のお母様は相変わらず、玄関の前に立っておられ、俺たち親子をまるで、敵でも睨むかのような視線で一瞥すると、すぐに大広間へと案内していく。
大広間には既に如月家の一族が集結しており、錚々たる面子が俺たちを待ち構えていた。
桐生家の二人は如月家が座る席の真向かいに、涼子は涼子のお母様に隣を勧められたが、それを拒否し、親父の横に座る。
暫くの間、無言で如月家の面々と向かい合っていたが、俺は座布団に座る際に、横に置いてあったリュックサックから例の原稿用紙の束を取り出して、涼子のお母様にそれを差し出す。
涼子のお母様はそれを俺の手から奪い取ると、その原稿用紙に一枚、一枚、丁寧に目を通していく。
その間、親父と涼子は神妙な顔を、俺はといえば、冷や汗が止まらず、顔を背けていた。
やはり、プレッシャーには耐えられない。なにせ、俺と小町が書いた小説が詰まらなければ、俺たち家族の家が燃やされるのだ。
いや、それだけで済むだろうか。涼子のお母様は本当に、俺と親父を拷問に掛けてしまうかもしれない。
恐らく、如月家にはバレていないだろうが、俺は親父の前に涼子と付き合っていた男。
それだけで、あの娘大好き!なお母様からすれば拷問に掛ける相手だろう。
俺が折った脚をカタカタと震わせていると、目の前で全てを読み終えた涼子のお母様が視線を落としている事に気が付く。
どうしたのかと思っていると、彼女は突然、顔を上げて叫ぶ。
「素晴らしいィィィィィィ~!!まさかッ!まさかッ!この世にこんな面白い物語があったとはッ!この如月亜美子ッ!一生の不覚ッ!あなたッ!桐生零だったよね?」
「あ、はい」
「許すッ!あんたの書いた小説に免じて、あんた……いや、あなたのお父様と涼子の結婚を認めるわァァァァァ~!!」
どうやら、余程、気に入ってくれたらしい。ここまで喜ばれると少しオーバーな気がしてならないが、拷問に掛けられたり、家を燃やされるよりは全然、マシな展開だ。
一息が付いて、俺が深い溜息を吐くと、そのまま、彼女は原稿用紙を持って、二階へと駆け上がっていく。
「こうしちゃあ、いられないわ!早く、健司にもこれを読ませてあげないと!」
健司?健司とは誰なのだろう。俺が首を傾げていると、元樹君が俺に近付いて耳打ちで教えてくれた。
「引きこもりの兄さんだよ。ここ何年か、ずっと家の中に篭っててさ。何かキッカケがあれば、外から出ると母さんは信じてたんだ」
俺の小説がそのきっかけになるという事だろうか。
それはどうだろう。だが、彼を引き摺り出せなかった時は俺の責任はより一層、重くなるだろう。
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