親父の再婚相手が俺の元カノだった件について

アンジェロ岩井

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その後の事を淡々と語ろうかと思います

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取り敢えず、俺の家は燃やされずに済んだ。めでたし、めでたしという所だが、相変わらず健司さんは部屋に篭り続けているらしい。
それだけが唯一の問題であろう。
ちなみに、あの後はすっかりと俺の小説を気に入った、亜美子さんが常に新作を要求しているので、その度に俺は小町に抱き着いている。

小町祐輔の頭には何が入っているのだろうと思うくらいには、アイディアが豊富であった。
お陰で、亜美子さんは一週間ごとに感動を俺に伝えてくる。
勿論、俺も小町にばかり頼っているわけではない。ちゃんと放課後になれば、部室で添削と練習をしている。

そうそう、最近では涼子が友人の高杉泉の家に行って、料理を習い、それを親父や俺に振る舞ってくれるようになった。
特に中華は絶品だった。広東料理も四川料理も北京料理もなんでもござれという具合だ。
その後に、親父といちゃつくので、元カレとしてはそれが不愉快極まりないが、そこはもう仕方がないだろう。
毎晩、美味しい料理を提供してくれる礼のようなものだと思うしかない。

何事も細かい事に目を瞑れば、大抵の事は上手くいくのだ。
仕方がない。仕方がないのだが、目の前でアーンはやめていただけないだろうか。
腹が立って仕方がない。お陰で、俺は見えないところで舌を打つ毎日。

やむを得ないから、友人を頼る。学校で山杉や小町と駄弁っていれば、大抵の事は忘れられるような気がした。
山杉も小町も相変わらず、元気だし、俺の元カノも親父も如月家の面々もみんな元気だ。
これから先も平凡な毎日が続くかのと思っていたある日の夜、食卓で食休をしていた、俺の耳に信じられない情報が飛び込む。

「健司さんが引き篭もり脱却ゥゥゥ~!?それって、マジか?」

「うん、さっき、お母さんからメールが来てね、健司お兄ちゃんがハローワークに行ったって」

「ハローワークか、やったな!これで、第一歩だな!」

そう言って、微笑む親父に涼子は満面の笑みを浮かべて微笑み返す。
それから、今日は珍しく、親父だけではなく、俺に対しても満面の笑みで微笑む。
それから、頭を下げて、

「ありがとう。お兄ちゃんを脱却させてくれて」

と、俺に向かって礼を言った。

「え、それって……」

「そうだよ。あんたが書いた小説、前回に読んだ話の主人公に感銘を受けて、働くようになったんだって」

成る程、そういう事だったのか……。優しく微笑む新しいお袋に向かって、俺も同じような笑顔を浮かべ、親指を突き付けながら自信満々に言った。

「どういたしまして」と。
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