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第一部『人界の秩序と魔界の理屈』
バルン王国での出来事
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「よし、もうここら辺でいいだろ」
竜族の男たちは乱暴な手付きで抱えていたジオを勢いよく地面の上へと放した。
ジオが落とされた先はどこかの家にある地下の道だった。その脇には無数の扉がある。恐らく、この部屋の中にジオと同様に誘拐され、閉じ込めた他の魔族たちがいるのだろう。
「お、お前たち何者だ!?どうして、オレを狙ったんだ?」
ジオの言葉は正論だった。実際ジオは単なる工事現場に勤める一労働者に過ぎない。金持ちなどという言葉とはかけ離れているような自分を攫う理由が分からなかった。
だが、同族の男たちはジオの正論には答えることなく、逆にジオを強く殴り付けた。
ジオは悲鳴を上げて地面の上に倒れ込む。ジオは痛む頬を摩りながら殴ってきた男を睨んでいた。
男たちはジオの腕を掴み、部屋の中へと放り込む。部屋の中には自身の同族が捕まっていた。男女一人ずつだった。
ジオが頭を摩りながら男女を見つめていく。
「あ、あなたたちは?」
「初めましてというべきね、私はセマーデ。向こうにいるのはマテック。私たちは魔界から来たの」
「そう、旅行に来た時にあいつらに捕まって、もう一ヶ月もここにいるんだ」
マテックは苦々しげな顔を浮かべて答えた。
二人の話によれば一ヶ月半の間はここに拘留され、その間に両親から身代金が送られてこなければどこかに売り飛ばされてしまうのだそうだ。
その話を聞いてジオは身を震わせていた。
身代金を強請られている二人と比べれば自分の両親の場合は人界に住む労働者だ。金銭は今いる男女たちよりも期待できないだろう。
そうなると、やはり自分はどこかに売られてしまうことになる。
そんなことは嫌だ。ジオは何度も首を横に振って自身が奴隷として売り飛ばされる想像を否定していた。
だが、いくら頭の中で理屈を見つけて否定したとしてもこの場にいる以上はそうなってしまうのだ。
ジオは無意識のうちに涙を流していた。そんなジオを二人の同族は優しく慰めてくれた。同じ同族であっても人攫いの連中とは対照的だった。
夕食の時間になっても夕食を分けてくれたり、寝る時間には互いに添い寝をしてくれたりするなどの献身的な動きにジオはどうやって恩を返せばいいのか分からなかったほどだ。
二日に一度行われる洗浄の日と呼ばれる湯浴みの日には優先的に連れて行ってくれた。
そんな優しい二人に支えられてジオは狭い部屋で長い時間を過ごすことになった。
もし先にいた二人が支えてくれなければジオの精神はとっくの昔に壊れてしまっていただろう。
ジオはこの幸運を神に感謝し、自身を支えてくれるセマーデとマテックの二人に敬愛の念を持って接してていた。
三人で仲睦まじく過ごしているうちに一週間という時間が経過した。時間の流れというのは早いものだ。
ジオは心のどこかでこのまま三人で永遠に暮らせるのだとばかり思っていた。
実際その日も昨日と同様に三人で交流を深めて楽しく過ごしていた。
その時にようやくあの同族の男たちが姿を現した。
男たちは二人の腕を乱暴に引っ張ると、部屋から掴み出したのである。
「な、何をするんですかッ! 」
唐突に恩人を連れ出そうとする同族の男たちに対してジオは抗議の言葉を口に出した。
だが、ジオの抗議は平手打ち一発で終わってしまった。ジオは地面の上に叩き伏せられた上に激しい暴行を加えられることになった。
ある程度の折檻を受けた後、頭に蹴りを喰らわされ、男たちが満足した後でようやくジオは暴力の渦から解放された。
暴力の魔の手からは解放されたものの、部屋の中には慣れ親しんだ二人がいないことを知ってジオは慟哭した。地面の上に犬のように這いつくばってる涙を上げていく。
恐らく、二人は何者かの手に売られてしまったのだ。親が身代金を払えなかったのだろう。
こうして独房の中にはジオだけが取り残されてしまうことになった。
二人が売られてから何時間、いいや何日の時間が過ぎ去ったのだろうか。それは分からなかった。満足に食事は与えられなかったし、湯浴みにも連れて行ってもらえないので日にちの間隔が掴めなくなってしまっていた。
自身の腹の虫から察するには腹が空き過ぎていたし、医者のように脈を測って時間を推定することなど素人のジオにできるはずがなかった。
誰も来ない。食事も届けられないという粗悪な環境で自分は一人餓死してしまうのかもしれない。そんなことを考えていると、部屋の扉が開いた。
扉の向こうには例の同族たちの姿が見えた。
同族の人攫いはいやらしい笑みを浮かべながらジオに向かって言った。
「来な、小僧。あの二人に会わせてやるぜ」
ジオは男の発した言葉を聞いて、希望を見出していた。あの二人に会えるのだという事実が堪らなく嬉しかったのだ。
その後にジオは同族の男たちによって着替えを要求された。用意された服はどれも立派なものだった。上等なシャツに絹で出来た上着とズボン、そしてハプタイと呼ばれる首飾りまで用意されている。
服を着替えている間、ジオは緊張で固まってしまっていた。服に着られるという状況が自分ほど似合うような人物もいないだろう。
慣れない正装を着たまま、ジオは部屋から男たちに連れ出され、大きな廊下の上を歩かされていく。
その前後を同族の男たちが守るように歩いていた。
ジオは自分が王族か貴族にでもなったような気がして、少し心地が良かった。
やがて、廊下の奥にある巨大な門の前に立つことになった。赤色のペンキで塗られた立派な門だ。
「こ、この奥に本当にあの二人はいるんですよね?」
「その通りだ。さっさと入れ」
ジオが意を決してドアノブを開くと、そこにはジオたちにとっての恐怖の象徴が椅子を並べて座っていた。
「ど、どうして人界防衛騎士団の奴らが?」
「ヘヘッ、この方は我々のお得意先でね。お前はこいつらに買われるんだよッ! 」
「か、買われるって?まさか?」
ジオの中で妙な予感がした。頭の中を嫌な想像が過っていく。
だが、そんなジオの心境を読み取ったように人攫いの同族は下衆な笑みで言った。
「いいや、お前はこいつらの餌になってもらうんだ」
「餌?」
「あぁ、こいつらの主張の代理人になってもらうんだ」
「だ、代理人?」
「あぁ、こいつらの主張をリザードマンであるお前が代わりに述べるんだ」
「そ、そんな」
ジオは絶句した。それでは今自分や自分の仲間のために活動してくれているリタの活動を妨害してしまうことになってしまう。
ジオは断るつもりだった。たとえ他国に売り飛ばされようとも最悪殺されることになろうとも断じてリタだけは裏切れない。
そう文句を言うつもりだったが、同族の男はニヤニヤといやらしい笑みを浮かべて言った。
「おっと、断るつもりか?こっちにはあいつらがいる事を忘れたのか?」
ジオにとって『あの二人』という言葉は必殺の呪文に近かった。あの二人に会えるという感情がジオの決心を揺さぶった。
ジオは両目を大きく見開き、人界防衛騎士団の主張を代理する代理人になることを決めたのだった。
「よし、そうと決まればすぐに団長さんに紹介してやろうじゃあないか」
ジオは苦笑いを浮かべながら部屋の中に入っていく。もうどうなろうが知ったことではなかった。
ジオの中にあるのはあの優しい二人に会う。それだけのことだった。
「クソッタレ、もう一週間も探してンのに未だに手掛かりさえ掴めやしねぇ! 」
コクランは苛立ち紛れに近くにあったゴミ箱を蹴り飛ばした。
「仕方がありません。なにせ目撃情報が見当たらない上に住民たちも非協力的ですから……」
レイチェルの言葉を聞いてコクランは街の住民たちが証言を拒絶したことや魔族であるコクランに対して石を投げ付けた時のことを思い返していく。
そればかりではない。コクランはどの店でも出禁を喰らってしまった。今宿屋に泊まれているのは奇跡のようなものだ。
例え支払う額が正規の額より多くなろうとも拠点があるだけありがたいというものだ。
宿屋で一旦休んでからまた探索に向かおう。そんなことをレイチェルに提案しようとした時のことだ。
背後からコクランを呼び止める声が聞こえてきた。コクランが億劫な態度で振り返ると、そこにはでっぷりと太った町の有力者の老人が立っていた。
「何の用ですか?」
コクランの問い掛けに対し、老人は有無を言わせることなく、その腕を掴んでどこかへと引っ張っていく。
レイチェルもそれを見て戸惑った様子で老人を追い掛けていく。
老人に連れられ、向かったのは町の中心部だった。噴水があり、町の各住宅街に向かう道が派生している巨大な広場だった。
いつもならば大勢の人が集い、何気ない談笑を交わしたり、楽器を奏でたりする町の人々にとっての憩いの場所であった。
だが、今日は憩いの場所に似つかわしくないような人々が占領していたことによって地獄のような場所に変わってしまっていた。
コクランは大声を出し、反魔族の集会を解散させようときたが、騎士団の真ん中になんと同じ魔族である竜人族の少年が拳を振り上げながら反魔族運動を展開していたのである。
「みなさんッ! おはようございますッ! ぼくは竜人族のジオと申しますッ! 誉ある人界防衛騎士団の一員として申し上げますッ! 現在、この町に魔界執行官の奴が難癖をつけて来ておりますが、そのようなことを許してよろしいのでしょうか!?いいえ、いいはずがありません!?我々の住む町をッ!この美しい町を外部からやってきた人間が土足で踏み荒らし、我々に泥塗り付けるような行動は必ず阻止しなくてはならないのですッ! 」
「何を言うッ! 」
コクランは無意識のうちに反論を口に出した。ジオは肝心の本人が現れたことに対して驚いたようだ。両肩を強張らせ、一歩引いたような状態でコクランを見つめていた。
「オレはな、テメェと同じ竜人族からな、息子と娘を取り返してくれと言われてここに来たんだよッ!証拠の脅迫状までこっちには揃ってるんだぜッ! それをお前、ないことにするつもりか!?え?」
コクランの気迫に対してジオは反論の言葉が思い浮かばなかったらしい。
コクランは情けない様を見せる少年を侮蔑の目で睨んでいた。
竜族の男たちは乱暴な手付きで抱えていたジオを勢いよく地面の上へと放した。
ジオが落とされた先はどこかの家にある地下の道だった。その脇には無数の扉がある。恐らく、この部屋の中にジオと同様に誘拐され、閉じ込めた他の魔族たちがいるのだろう。
「お、お前たち何者だ!?どうして、オレを狙ったんだ?」
ジオの言葉は正論だった。実際ジオは単なる工事現場に勤める一労働者に過ぎない。金持ちなどという言葉とはかけ離れているような自分を攫う理由が分からなかった。
だが、同族の男たちはジオの正論には答えることなく、逆にジオを強く殴り付けた。
ジオは悲鳴を上げて地面の上に倒れ込む。ジオは痛む頬を摩りながら殴ってきた男を睨んでいた。
男たちはジオの腕を掴み、部屋の中へと放り込む。部屋の中には自身の同族が捕まっていた。男女一人ずつだった。
ジオが頭を摩りながら男女を見つめていく。
「あ、あなたたちは?」
「初めましてというべきね、私はセマーデ。向こうにいるのはマテック。私たちは魔界から来たの」
「そう、旅行に来た時にあいつらに捕まって、もう一ヶ月もここにいるんだ」
マテックは苦々しげな顔を浮かべて答えた。
二人の話によれば一ヶ月半の間はここに拘留され、その間に両親から身代金が送られてこなければどこかに売り飛ばされてしまうのだそうだ。
その話を聞いてジオは身を震わせていた。
身代金を強請られている二人と比べれば自分の両親の場合は人界に住む労働者だ。金銭は今いる男女たちよりも期待できないだろう。
そうなると、やはり自分はどこかに売られてしまうことになる。
そんなことは嫌だ。ジオは何度も首を横に振って自身が奴隷として売り飛ばされる想像を否定していた。
だが、いくら頭の中で理屈を見つけて否定したとしてもこの場にいる以上はそうなってしまうのだ。
ジオは無意識のうちに涙を流していた。そんなジオを二人の同族は優しく慰めてくれた。同じ同族であっても人攫いの連中とは対照的だった。
夕食の時間になっても夕食を分けてくれたり、寝る時間には互いに添い寝をしてくれたりするなどの献身的な動きにジオはどうやって恩を返せばいいのか分からなかったほどだ。
二日に一度行われる洗浄の日と呼ばれる湯浴みの日には優先的に連れて行ってくれた。
そんな優しい二人に支えられてジオは狭い部屋で長い時間を過ごすことになった。
もし先にいた二人が支えてくれなければジオの精神はとっくの昔に壊れてしまっていただろう。
ジオはこの幸運を神に感謝し、自身を支えてくれるセマーデとマテックの二人に敬愛の念を持って接してていた。
三人で仲睦まじく過ごしているうちに一週間という時間が経過した。時間の流れというのは早いものだ。
ジオは心のどこかでこのまま三人で永遠に暮らせるのだとばかり思っていた。
実際その日も昨日と同様に三人で交流を深めて楽しく過ごしていた。
その時にようやくあの同族の男たちが姿を現した。
男たちは二人の腕を乱暴に引っ張ると、部屋から掴み出したのである。
「な、何をするんですかッ! 」
唐突に恩人を連れ出そうとする同族の男たちに対してジオは抗議の言葉を口に出した。
だが、ジオの抗議は平手打ち一発で終わってしまった。ジオは地面の上に叩き伏せられた上に激しい暴行を加えられることになった。
ある程度の折檻を受けた後、頭に蹴りを喰らわされ、男たちが満足した後でようやくジオは暴力の渦から解放された。
暴力の魔の手からは解放されたものの、部屋の中には慣れ親しんだ二人がいないことを知ってジオは慟哭した。地面の上に犬のように這いつくばってる涙を上げていく。
恐らく、二人は何者かの手に売られてしまったのだ。親が身代金を払えなかったのだろう。
こうして独房の中にはジオだけが取り残されてしまうことになった。
二人が売られてから何時間、いいや何日の時間が過ぎ去ったのだろうか。それは分からなかった。満足に食事は与えられなかったし、湯浴みにも連れて行ってもらえないので日にちの間隔が掴めなくなってしまっていた。
自身の腹の虫から察するには腹が空き過ぎていたし、医者のように脈を測って時間を推定することなど素人のジオにできるはずがなかった。
誰も来ない。食事も届けられないという粗悪な環境で自分は一人餓死してしまうのかもしれない。そんなことを考えていると、部屋の扉が開いた。
扉の向こうには例の同族たちの姿が見えた。
同族の人攫いはいやらしい笑みを浮かべながらジオに向かって言った。
「来な、小僧。あの二人に会わせてやるぜ」
ジオは男の発した言葉を聞いて、希望を見出していた。あの二人に会えるのだという事実が堪らなく嬉しかったのだ。
その後にジオは同族の男たちによって着替えを要求された。用意された服はどれも立派なものだった。上等なシャツに絹で出来た上着とズボン、そしてハプタイと呼ばれる首飾りまで用意されている。
服を着替えている間、ジオは緊張で固まってしまっていた。服に着られるという状況が自分ほど似合うような人物もいないだろう。
慣れない正装を着たまま、ジオは部屋から男たちに連れ出され、大きな廊下の上を歩かされていく。
その前後を同族の男たちが守るように歩いていた。
ジオは自分が王族か貴族にでもなったような気がして、少し心地が良かった。
やがて、廊下の奥にある巨大な門の前に立つことになった。赤色のペンキで塗られた立派な門だ。
「こ、この奥に本当にあの二人はいるんですよね?」
「その通りだ。さっさと入れ」
ジオが意を決してドアノブを開くと、そこにはジオたちにとっての恐怖の象徴が椅子を並べて座っていた。
「ど、どうして人界防衛騎士団の奴らが?」
「ヘヘッ、この方は我々のお得意先でね。お前はこいつらに買われるんだよッ! 」
「か、買われるって?まさか?」
ジオの中で妙な予感がした。頭の中を嫌な想像が過っていく。
だが、そんなジオの心境を読み取ったように人攫いの同族は下衆な笑みで言った。
「いいや、お前はこいつらの餌になってもらうんだ」
「餌?」
「あぁ、こいつらの主張の代理人になってもらうんだ」
「だ、代理人?」
「あぁ、こいつらの主張をリザードマンであるお前が代わりに述べるんだ」
「そ、そんな」
ジオは絶句した。それでは今自分や自分の仲間のために活動してくれているリタの活動を妨害してしまうことになってしまう。
ジオは断るつもりだった。たとえ他国に売り飛ばされようとも最悪殺されることになろうとも断じてリタだけは裏切れない。
そう文句を言うつもりだったが、同族の男はニヤニヤといやらしい笑みを浮かべて言った。
「おっと、断るつもりか?こっちにはあいつらがいる事を忘れたのか?」
ジオにとって『あの二人』という言葉は必殺の呪文に近かった。あの二人に会えるという感情がジオの決心を揺さぶった。
ジオは両目を大きく見開き、人界防衛騎士団の主張を代理する代理人になることを決めたのだった。
「よし、そうと決まればすぐに団長さんに紹介してやろうじゃあないか」
ジオは苦笑いを浮かべながら部屋の中に入っていく。もうどうなろうが知ったことではなかった。
ジオの中にあるのはあの優しい二人に会う。それだけのことだった。
「クソッタレ、もう一週間も探してンのに未だに手掛かりさえ掴めやしねぇ! 」
コクランは苛立ち紛れに近くにあったゴミ箱を蹴り飛ばした。
「仕方がありません。なにせ目撃情報が見当たらない上に住民たちも非協力的ですから……」
レイチェルの言葉を聞いてコクランは街の住民たちが証言を拒絶したことや魔族であるコクランに対して石を投げ付けた時のことを思い返していく。
そればかりではない。コクランはどの店でも出禁を喰らってしまった。今宿屋に泊まれているのは奇跡のようなものだ。
例え支払う額が正規の額より多くなろうとも拠点があるだけありがたいというものだ。
宿屋で一旦休んでからまた探索に向かおう。そんなことをレイチェルに提案しようとした時のことだ。
背後からコクランを呼び止める声が聞こえてきた。コクランが億劫な態度で振り返ると、そこにはでっぷりと太った町の有力者の老人が立っていた。
「何の用ですか?」
コクランの問い掛けに対し、老人は有無を言わせることなく、その腕を掴んでどこかへと引っ張っていく。
レイチェルもそれを見て戸惑った様子で老人を追い掛けていく。
老人に連れられ、向かったのは町の中心部だった。噴水があり、町の各住宅街に向かう道が派生している巨大な広場だった。
いつもならば大勢の人が集い、何気ない談笑を交わしたり、楽器を奏でたりする町の人々にとっての憩いの場所であった。
だが、今日は憩いの場所に似つかわしくないような人々が占領していたことによって地獄のような場所に変わってしまっていた。
コクランは大声を出し、反魔族の集会を解散させようときたが、騎士団の真ん中になんと同じ魔族である竜人族の少年が拳を振り上げながら反魔族運動を展開していたのである。
「みなさんッ! おはようございますッ! ぼくは竜人族のジオと申しますッ! 誉ある人界防衛騎士団の一員として申し上げますッ! 現在、この町に魔界執行官の奴が難癖をつけて来ておりますが、そのようなことを許してよろしいのでしょうか!?いいえ、いいはずがありません!?我々の住む町をッ!この美しい町を外部からやってきた人間が土足で踏み荒らし、我々に泥塗り付けるような行動は必ず阻止しなくてはならないのですッ! 」
「何を言うッ! 」
コクランは無意識のうちに反論を口に出した。ジオは肝心の本人が現れたことに対して驚いたようだ。両肩を強張らせ、一歩引いたような状態でコクランを見つめていた。
「オレはな、テメェと同じ竜人族からな、息子と娘を取り返してくれと言われてここに来たんだよッ!証拠の脅迫状までこっちには揃ってるんだぜッ! それをお前、ないことにするつもりか!?え?」
コクランの気迫に対してジオは反論の言葉が思い浮かばなかったらしい。
コクランは情けない様を見せる少年を侮蔑の目で睨んでいた。
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