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第一部『人界の秩序と魔界の理屈』
戦局が一転した時
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二日目にして戦闘は初めて痛み分けという結果に終わった。
しかし兵力で言えば圧倒的に不利なのは魔族側なのだ。少数精鋭といえば聞こえはいいが、要するに数が足りないことを指していう言葉である。
そのため少しでも無用な犠牲者を多くしたいというのに、二日目の戦いが終了した後にマイケルに突き付けられた結果はそんなマイケルの予想を外したものとなっていた。
「……まさか、あそこであの人間の女が矢を射るとはな……思ってもみなかったぜ」
この日マイケルは珍しく床に入らず、侍従役の少年が用意した酒瓶を片手に寝室の窓から自分たちを包囲している軍隊を見下ろしていく。
今日の戦いで希望を見出したからか、昨日よりは士気が高くなっている。
士気が高いということは当然兵の質も上がっているということだ。マイケルは面白くない。窓の外で武器を掲げて雄叫びを上げたり、楽しそうに火の側で料理をしている兵士たちを見ていると、向っ腹が立って仕方がなかった。
そのストレスのせいで出たのかは知らないが、何度も舌打ちを行い、安酒場で荒れる労働者のように酒を煽っていた。
酒を飲み終え、酒瓶を逆さにして酒が出ないことを確認した後で、マイケルはぽつりと吐き捨てた。
「やはりこのままではいけない。兵の士気が明らかに落ちていやがる。明日はオレが直々に出て、高めるしかないだろうな」
マイケルは自身に付いている六本の腕を用いて明日は敵たちと戦場で泥に塗れながら戦うのだということを心に決めていた。酒こそ入れてはいるものの、マイケルは酒に強い。それ故二日酔いにはならないので、問題にはならなかった。
戦いの際に蜘蛛の怪物の背後にいるいつもいる精鋭たる後続部隊を自らが率いるのだ。当然ながら司令官が自ら体を張り、戦うので部隊の士気も上がる。
これこそ歴史の本に書かれている国王たちが取っていた行動そのものだ。
翌日マイケルは昨夜の決心通りに自らの体を鎧兜に身を包み、馬に乗ると馬を操る対外の全ての腕に剣を握るほどの徹底ぶりだった。
十分な武装に身を包んだマイケルは侍従役の青年に後を託し、自ら戦地へと赴いたのである。
馬で戦場を駆けていると、その戦いの中でまたしても矢が怪物の頭部へと突き刺さっていく。昨夜矢を受けた怪物が敵味方の区別を忘れて暴れ回ったことを兵士たちが覚えていたのだろう。小賢しい限りだ。マイケルは苛立ちを覚えた。
だが、昨夜と異なるのはマイケルが直接戦闘の指揮を行っていることだ。
「動くなッ! 怪物が暴れて不利なのは敵も同じなんだぞッ! 」
マイケルの激励を聞いた一部の仲間たちが正気に戻っていく。しかしマイケルはそこで終わらなかった。
五本の腕を使って剣先を混乱する敵の陣地へと向け、「今こそがチャンスだ!」と、周りにいた味方を鼓舞していく。
それを聞いた味方たちは一斉に馬を駆り、暴れ回る蜘蛛の怪物の隙間をくぐって敵兵に向かって攻撃を仕掛けていく。
昨日とは異なり、退散するどころか、突撃してきたので敵の兵士たちは混乱するばかりだった。
その中でも正気を保っていられたのはコクランとその仲間たちのみだった。他の者が恐怖に震え、逃げ惑う中でコクランは事務所から持ってきた日本刀を抜き、馬を駆ってマイケルの前に立ち塞がった。
「久し振りだな。マイク」
『マイク』というのはマイケルの愛称である。通常ならば親しい人との間でしか交わさないものだ。コクランは敢えて親しい人の間でしか使わない愛称を敵である彼がわざわざ使ったのだ。敢えて愛称を使うという小馬鹿にしたやり方でマイケルを挑発していたのだ。
だが、マイケルはそんな安い挑発に乗るような男ではなかった。マイケルは冷静なまま、あくまでも自身の道を遮るものを倒すというコクランと戦っていく。
剣と刀とが宙の間でぶつかり合っていく。何度も刃物と刃物とが打ち合い、その度に凄まじい音を奏でていた。
ここで、マイケルは前回戦った時と同様に魔法で泥を発生させ、コクランの両目へと飛ばす。
が、コクランの魔法である泥はいとも簡単に避けられてしまった。咄嗟に顔を伏せることでコクランは泥を避けたのである。
だが、泥を避けられてもマイケルには六本の腕がある。たった一本の腕のみで戦うコクランとは大きな差があったはずだ。
だが、そこにルイスやレイチェル、そしてリザードマンの青年まで加わってくれば話は別だ。
混戦の末に戦いの舞台は馬上から地面の上に変更となり、四対一の熾烈な戦いが始まっていったのである。
いかにマイケルといえども三人の剣士と一人の弓矢使いを相手に立ち回るのは難しいものであった。
マイケルはたちまち劣勢へと追い込まれていった。少しでも油断すれば目の前に刃か、矢が飛んでくる。一刻の猶予もない。
息を切らし始めてきたマイケルがコクランたちを睨んでいた時のことだ。馬の足が城へと戻っていく音が聞こえてきた。どうやら恐怖に駆られて仲間たちが勝手な退却を行なっていたらしい。
「ば、バカな……オレは退却の命令なんて出していないぞ」
「お前、仲間に見捨てられたんじゃあないのか?」
コクランの一言がナイフのように胸の内へと突き刺さっていく。
「うるさいッ! 黙れッ! 」
怒りに囚われたマイケルはコクランの言葉など聞こえないとばかりの大きな声で怒鳴り返していくのと同時に剣を振り上げ、泥の魔法をコクランたちへと飛ばしていく。
飛ばされたのは刃物でもなければ毒でもない。単なる泥の集まりである。泥を覆い被さる前に全員で顔を腕で防げばいいだけのことだった。
しかしそうやって腕で塞いでもらうということ自体がマイケルにとっての作戦だったのだ。
全員の目が塞がれ、コクランへの注目が逸れてしまうことこそがマイケルにとっての目標だったのだ。
マイケルはこの攻撃に全身全霊を注いで、自身にとって遺恨の敵であるコクランを始末しようと目論んだのだ。
だが、コクランはマイケルの意図を見抜いていた。泥が飛んできたタイミングで地面の上を滑り、泥を回避した故に腕で目の前を塞がずに済んだのだ。
それから目の前で突撃を行うマイケルの剣を交わし、彼の背後に回り込んだのだった。
「しまった!」と咄嗟の叫び声を上げてからマイケルは背後を振り返り、コクランの刀を受け止めた。
五本の腕で掴んでいる剣とコクランの一本しかない刀がぶつかり合っていく。
それから後も五本と一本による打ち合いが続いたが、先に勝負を付けたのはコクランの方だった。
コクランの刀がマイケルの右側にある一番上の腕を斬り落としたのであった。
切り口から青みがかった透明の液体が噴射していく。コクランは蜘蛛を含む節足動物の血が噴射していくという話を聞いたことがあった。
マイケルは魔族であったが、血液に関しては一般的な節足動物と同様であったらしい。
腕を斬られたことによってマイケルは戦闘中であったことを忘れ、思いっきり悲鳴を上げた。
今ならば倒すことができるだろう。コクランは真上から思いっきり拳を振り上げた。
それでも剣を頭に喰らう寸前でようやく正気に返り、咄嗟に頭を横に向けることで最悪の事態を避けた。
それでもギリギリのところだったので、完全に避けきるのは難しかった。剣を喰らって左部分全ての目を失ってしまうことになった。
しかしマイケルは転んでもタダでは起きなかった。剣を振ったコクランの右肩に向かって拳を喰らわせたのである。
コクランは拳を喰らった衝撃で地面の上に倒れ込んでしまった。
マイケルはそのまま体を引き摺りながら撤退を行おうと目論んでいた。
だが、マイケルは頭の中からコクランの仲間たちの存在を忘れていた。
マイケルが撤退しようとしていた時にレイチェルの放った矢が突き刺さろうとした時のことだ。
「待てッ! 貴様らッ! 同志マイケルから離れろッ! 」
鳥の姿をした怪物が現れ、三人の前に雷を落としていく。
「おっ、き、きみは?」
マイケルは掠れる声で問い掛けた。
「同志ッ! 私ですッ! ヴィンセントですッ! 」
「おぉ、ヴィンセントか……」
『ヴィンセント』というのはマイケルの侍従役を務めるトレボレン族の青年の名前である。
正確な名前はヴィンセント・オドホムルゲンといった。
「同志ッ!詳しい話は後ですッ!早く、ぼくの馬の後ろに乗ってくださいッ! 」
マイケルは唸り声を上げながら馬の尻に乗り、ヴィンセントの腰を強く握って馬の背中に揺られていく。
城に送られた後でマイケルは目に受けた傷のせいか、酷い高熱に見舞われてしまうことになった。
「同志、しっかり……クソッ、なんでこんなことに……」
ヴィンセントは自身の隣で看護を行う医師の男性の姿を黙って見つめていた。治療の過程は想像を超えるほどに凄まじいものだった。
医師はベッドの上に横たわるマイケルの看病を行っていたのだが、呻き声を上げるヴィンセントの左目部分に眼帯を巻いてやり、出血した部分に包帯を巻いていく中でマイケルは言葉にならない悲鳴を上げていた。
更にこの治療を終えた後もこれからマイケルは腕なし、左部分の視力を失ったままこの先の生活を送らなくてはならないのだ。
ヴィンセントはマイケルに深い同情の念を寄せていく。悪夢にうなされているのか、悲鳴を上げるマイケルの姿を見て必ず仇を取ろうと決意したのだった。
マイケルの代わりに指揮を取れる人物の下に就いて、必ずマイケルの仇を取ってやろうと決意したのだった。
マイケルはあれ程の傷を受けたが、まだ講和を行っていない。戦闘は継続状態にある。
仇を取れる状況にはあるのだ。ヴィンセントは部屋に戻り、自身の愛剣を強く握り締めた。
その時だ。「邪魔するぜ」と、窓から聞き覚えのない声が窓から聞こえた
ヴィンセントが声のした方向を向くと、窓の側にエレンボス族の男が見えた。
しかし兵力で言えば圧倒的に不利なのは魔族側なのだ。少数精鋭といえば聞こえはいいが、要するに数が足りないことを指していう言葉である。
そのため少しでも無用な犠牲者を多くしたいというのに、二日目の戦いが終了した後にマイケルに突き付けられた結果はそんなマイケルの予想を外したものとなっていた。
「……まさか、あそこであの人間の女が矢を射るとはな……思ってもみなかったぜ」
この日マイケルは珍しく床に入らず、侍従役の少年が用意した酒瓶を片手に寝室の窓から自分たちを包囲している軍隊を見下ろしていく。
今日の戦いで希望を見出したからか、昨日よりは士気が高くなっている。
士気が高いということは当然兵の質も上がっているということだ。マイケルは面白くない。窓の外で武器を掲げて雄叫びを上げたり、楽しそうに火の側で料理をしている兵士たちを見ていると、向っ腹が立って仕方がなかった。
そのストレスのせいで出たのかは知らないが、何度も舌打ちを行い、安酒場で荒れる労働者のように酒を煽っていた。
酒を飲み終え、酒瓶を逆さにして酒が出ないことを確認した後で、マイケルはぽつりと吐き捨てた。
「やはりこのままではいけない。兵の士気が明らかに落ちていやがる。明日はオレが直々に出て、高めるしかないだろうな」
マイケルは自身に付いている六本の腕を用いて明日は敵たちと戦場で泥に塗れながら戦うのだということを心に決めていた。酒こそ入れてはいるものの、マイケルは酒に強い。それ故二日酔いにはならないので、問題にはならなかった。
戦いの際に蜘蛛の怪物の背後にいるいつもいる精鋭たる後続部隊を自らが率いるのだ。当然ながら司令官が自ら体を張り、戦うので部隊の士気も上がる。
これこそ歴史の本に書かれている国王たちが取っていた行動そのものだ。
翌日マイケルは昨夜の決心通りに自らの体を鎧兜に身を包み、馬に乗ると馬を操る対外の全ての腕に剣を握るほどの徹底ぶりだった。
十分な武装に身を包んだマイケルは侍従役の青年に後を託し、自ら戦地へと赴いたのである。
馬で戦場を駆けていると、その戦いの中でまたしても矢が怪物の頭部へと突き刺さっていく。昨夜矢を受けた怪物が敵味方の区別を忘れて暴れ回ったことを兵士たちが覚えていたのだろう。小賢しい限りだ。マイケルは苛立ちを覚えた。
だが、昨夜と異なるのはマイケルが直接戦闘の指揮を行っていることだ。
「動くなッ! 怪物が暴れて不利なのは敵も同じなんだぞッ! 」
マイケルの激励を聞いた一部の仲間たちが正気に戻っていく。しかしマイケルはそこで終わらなかった。
五本の腕を使って剣先を混乱する敵の陣地へと向け、「今こそがチャンスだ!」と、周りにいた味方を鼓舞していく。
それを聞いた味方たちは一斉に馬を駆り、暴れ回る蜘蛛の怪物の隙間をくぐって敵兵に向かって攻撃を仕掛けていく。
昨日とは異なり、退散するどころか、突撃してきたので敵の兵士たちは混乱するばかりだった。
その中でも正気を保っていられたのはコクランとその仲間たちのみだった。他の者が恐怖に震え、逃げ惑う中でコクランは事務所から持ってきた日本刀を抜き、馬を駆ってマイケルの前に立ち塞がった。
「久し振りだな。マイク」
『マイク』というのはマイケルの愛称である。通常ならば親しい人との間でしか交わさないものだ。コクランは敢えて親しい人の間でしか使わない愛称を敵である彼がわざわざ使ったのだ。敢えて愛称を使うという小馬鹿にしたやり方でマイケルを挑発していたのだ。
だが、マイケルはそんな安い挑発に乗るような男ではなかった。マイケルは冷静なまま、あくまでも自身の道を遮るものを倒すというコクランと戦っていく。
剣と刀とが宙の間でぶつかり合っていく。何度も刃物と刃物とが打ち合い、その度に凄まじい音を奏でていた。
ここで、マイケルは前回戦った時と同様に魔法で泥を発生させ、コクランの両目へと飛ばす。
が、コクランの魔法である泥はいとも簡単に避けられてしまった。咄嗟に顔を伏せることでコクランは泥を避けたのである。
だが、泥を避けられてもマイケルには六本の腕がある。たった一本の腕のみで戦うコクランとは大きな差があったはずだ。
だが、そこにルイスやレイチェル、そしてリザードマンの青年まで加わってくれば話は別だ。
混戦の末に戦いの舞台は馬上から地面の上に変更となり、四対一の熾烈な戦いが始まっていったのである。
いかにマイケルといえども三人の剣士と一人の弓矢使いを相手に立ち回るのは難しいものであった。
マイケルはたちまち劣勢へと追い込まれていった。少しでも油断すれば目の前に刃か、矢が飛んでくる。一刻の猶予もない。
息を切らし始めてきたマイケルがコクランたちを睨んでいた時のことだ。馬の足が城へと戻っていく音が聞こえてきた。どうやら恐怖に駆られて仲間たちが勝手な退却を行なっていたらしい。
「ば、バカな……オレは退却の命令なんて出していないぞ」
「お前、仲間に見捨てられたんじゃあないのか?」
コクランの一言がナイフのように胸の内へと突き刺さっていく。
「うるさいッ! 黙れッ! 」
怒りに囚われたマイケルはコクランの言葉など聞こえないとばかりの大きな声で怒鳴り返していくのと同時に剣を振り上げ、泥の魔法をコクランたちへと飛ばしていく。
飛ばされたのは刃物でもなければ毒でもない。単なる泥の集まりである。泥を覆い被さる前に全員で顔を腕で防げばいいだけのことだった。
しかしそうやって腕で塞いでもらうということ自体がマイケルにとっての作戦だったのだ。
全員の目が塞がれ、コクランへの注目が逸れてしまうことこそがマイケルにとっての目標だったのだ。
マイケルはこの攻撃に全身全霊を注いで、自身にとって遺恨の敵であるコクランを始末しようと目論んだのだ。
だが、コクランはマイケルの意図を見抜いていた。泥が飛んできたタイミングで地面の上を滑り、泥を回避した故に腕で目の前を塞がずに済んだのだ。
それから目の前で突撃を行うマイケルの剣を交わし、彼の背後に回り込んだのだった。
「しまった!」と咄嗟の叫び声を上げてからマイケルは背後を振り返り、コクランの刀を受け止めた。
五本の腕で掴んでいる剣とコクランの一本しかない刀がぶつかり合っていく。
それから後も五本と一本による打ち合いが続いたが、先に勝負を付けたのはコクランの方だった。
コクランの刀がマイケルの右側にある一番上の腕を斬り落としたのであった。
切り口から青みがかった透明の液体が噴射していく。コクランは蜘蛛を含む節足動物の血が噴射していくという話を聞いたことがあった。
マイケルは魔族であったが、血液に関しては一般的な節足動物と同様であったらしい。
腕を斬られたことによってマイケルは戦闘中であったことを忘れ、思いっきり悲鳴を上げた。
今ならば倒すことができるだろう。コクランは真上から思いっきり拳を振り上げた。
それでも剣を頭に喰らう寸前でようやく正気に返り、咄嗟に頭を横に向けることで最悪の事態を避けた。
それでもギリギリのところだったので、完全に避けきるのは難しかった。剣を喰らって左部分全ての目を失ってしまうことになった。
しかしマイケルは転んでもタダでは起きなかった。剣を振ったコクランの右肩に向かって拳を喰らわせたのである。
コクランは拳を喰らった衝撃で地面の上に倒れ込んでしまった。
マイケルはそのまま体を引き摺りながら撤退を行おうと目論んでいた。
だが、マイケルは頭の中からコクランの仲間たちの存在を忘れていた。
マイケルが撤退しようとしていた時にレイチェルの放った矢が突き刺さろうとした時のことだ。
「待てッ! 貴様らッ! 同志マイケルから離れろッ! 」
鳥の姿をした怪物が現れ、三人の前に雷を落としていく。
「おっ、き、きみは?」
マイケルは掠れる声で問い掛けた。
「同志ッ! 私ですッ! ヴィンセントですッ! 」
「おぉ、ヴィンセントか……」
『ヴィンセント』というのはマイケルの侍従役を務めるトレボレン族の青年の名前である。
正確な名前はヴィンセント・オドホムルゲンといった。
「同志ッ!詳しい話は後ですッ!早く、ぼくの馬の後ろに乗ってくださいッ! 」
マイケルは唸り声を上げながら馬の尻に乗り、ヴィンセントの腰を強く握って馬の背中に揺られていく。
城に送られた後でマイケルは目に受けた傷のせいか、酷い高熱に見舞われてしまうことになった。
「同志、しっかり……クソッ、なんでこんなことに……」
ヴィンセントは自身の隣で看護を行う医師の男性の姿を黙って見つめていた。治療の過程は想像を超えるほどに凄まじいものだった。
医師はベッドの上に横たわるマイケルの看病を行っていたのだが、呻き声を上げるヴィンセントの左目部分に眼帯を巻いてやり、出血した部分に包帯を巻いていく中でマイケルは言葉にならない悲鳴を上げていた。
更にこの治療を終えた後もこれからマイケルは腕なし、左部分の視力を失ったままこの先の生活を送らなくてはならないのだ。
ヴィンセントはマイケルに深い同情の念を寄せていく。悪夢にうなされているのか、悲鳴を上げるマイケルの姿を見て必ず仇を取ろうと決意したのだった。
マイケルの代わりに指揮を取れる人物の下に就いて、必ずマイケルの仇を取ってやろうと決意したのだった。
マイケルはあれ程の傷を受けたが、まだ講和を行っていない。戦闘は継続状態にある。
仇を取れる状況にはあるのだ。ヴィンセントは部屋に戻り、自身の愛剣を強く握り締めた。
その時だ。「邪魔するぜ」と、窓から聞き覚えのない声が窓から聞こえた
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