女王陛下と護衛兵たちの日々〜ワガママ女王陛下の騎士たちは王国の独立を夢見る

アンジェロ岩井

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第二部 王国奪還

アメリカは良い国だわ

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女性いや、ジェシカ・マーニーは涙声で自分の心境を暴露した。
「アメリカは良い国だわ、イタリアと違って各街は進んでいるし、商売は繁盛しているし、いざとなれば警察が守ってくれる……素晴らしい国。父など必要ない……みんなそう思っていたわ」
その時になり、ようやくヴィトが姿を現した。
「キミが来客かい?」
ヴィトは自慢の青色の背広にお揃いの青色のネクタイという姿で女性の前に姿を現した。
「そうよ、あなたは?」
女性の問いにはルーシーが応じた。
「ファミリーの相談役コンシリエーレのヴィト・プロテッツオーネよ」
ヴィトはよろしくと彼女に握手を求めた。
「ええ」と彼女はぎごちない様子でヴィトの握手に応じた。
「それで、あなたはそう思っていたのよね、その後はどうなったの?」
ルーシーはジェシカに話の続きを求めた。
「ごめんなさい続けるわ、あの時までわたしは父なんか必要ない、父なんか私を縛り付けるだけの煩わしい存在……そう思っていたの」
ジェシカはその時の自分に嫌悪感でも湧かせていたのだろうか、足の上に置いている拳をギュッと握りしめている。
「あの時とは?」
ヴィトはルーシーの背後に立ちながら少しだけ威圧的な表情を浮かべて尋ねる。
「あいつよ、トーマス・マーニーが街に現れた時よ、あいつは父に取り入り、その後に父を殺してファミリーを乗っ取ったばかりか、ファミリーの名前を変え、麻薬商売に重点的に乗り出していったの……わたしは無理矢理、彼と結婚させられて……」
と、これ以上話せないくらいに彼女は涙を流し始めていた。
ルーシーはいたたまれなくなったのか、彼女の手を力強く握りしめた。
「大丈夫よ、あなたにこれ以上辛い思いをさせないわ……海外にあなたを逃亡させられる準備はあるわよ」
ルーシーはかつて自分の父と友情を育んでいた上院議員を思い出し、彼女に何とか偽のパスポートを偽造させようと思案した時の事だった。
「いえ、違うの !例えわたしが消えてもあいつが街の王様として君臨する限り、犠牲者は増え続ける一方よ !お願い……彼を殺してほしいの……」
彼女は哀願するようにルーシーの目を見つめたが、ルーシーは残念そうに首を横に動かす。
「どうしてなの?」
ジェシカはやり場のない憤りを感じた。どうして分かってくれないのだろうと。
「ファミリーを抗争に巻き込むわけにはいかないわ、トーマス・マーニーはテーブルマナーや教養こそ身につけていないものの、裸一貫から暗黒街からのし上がってきたという事実は本物なのよ、ただでさえ、ミラノリア・ファミリーとの抗争を終えたばかりなの……悪いけど、FBIにたれ込んで頂戴……わたしにはどうしようもできないわ……」
ルーシーは視線を残念そうに下に落としていたが、ここに来てようやくヴィトが口を挟む。
「なら、トーマスだけを殺すというのはどうだ?会談をセッテングしておくんだ……その上で会談に乗るふりをして奴を殺すんだ……方法は何でもいい、コーヒーに毒を混ぜるとか、奴が泊まる部屋のクローゼットにシドニージョウゴグモを仕込むとか、何でもいい、おれが銃を発砲して奴を知らないところで撃ち殺してもいい……とにかく奴を殺せば、マーニー・ファミリーは壊滅する。カヴァリエーレ・ファミリーは奴の街を手に入れ、更に勢力を拡大できるはずだ」
ルーシーはヴィトの楽観的な意見に対し、反論意見をぶつけてみる。
「それで、仮に彼の暗殺に失敗したら、どうなるのよ……カヴァリエーレ・ファミリーは壊滅よ !トーマス・マーニーを敵に回して勝てると思うの!?」
ルーシーは机を勢いよく叩く。
「おれ達ギャングの世界じゃ『やるか、やらないか』だろッ!」
ヴィトは負けじと反論し、机を叩く。
「時と場合によるわよ !いい、あなたの安易な計画で殺せる思うの!?わたし達は西部劇に出てくる安っぽい三文ヒーローじゃあないのよ !」
ルーシーは人差し指をヴィトのスーツの胸元に突きつける。
「分かってるよ、でも新しいシマ縄張りが手に入るんだぜッ!それにジェシカをこのまま放っておく気かよ !」
ヴィトはルーシーに負けじと、激しい剣幕で言い返す。
「でもね、わたしだってこの街の人たちやファミリーのみんなの命を預かっている身よ……お願いだから、冷静になって」
ルーシーはヴィトの手に宥めるように肩を置いたが、ヴィトは納得しかねているようでルーシーを睨み返している。
「分かったよ、でも考えるだけ考えよう……」
ヴィトがタバコを吸うために部屋を外に出ようとした瞬間だった。夜中に喉が渇いて水でも取りに来たところに、たまたま会話が聞こえたのか、部屋の外に不機嫌そうなマリアが立っていたのだ。
「うっ、どうした?」
「ヴィトッ!聞いてたわよ !あんたそれでも騎士なの !困っている人をそのまま見過ごすなんて」
マリアの予想もしない剣幕にヴィトはたじろいでいたが、直ぐに反論を試みた。
「だがな、トーマスは強いんだ。ルカなんぞ比較にならんくらいな」
「でも、あんたの言った暗殺計画とやらを実行すればいいんじゃあないの!?トーマスとかいう反逆者を倒せるはずよ !」
マリアの意見にヴィトはたじろいだが、ルーシーは負けじと言い返す。
「今回は無理よ、相手が悪過ぎるわ……麻薬王と呼ばれる奴なの」
「でも、あの人を放って置いていいの!?それに街の人も苦しんでいるって言うじゃあない !!放っておけな……」
その時だった。ルーシーの書斎の電話が鳴った。ルーシーは口元に人差し指を置き、書斎へと急ぎ、黒色と金色が混じった豪華な受話器を手に取る。
「よう、あんたが、ニューホーランドシティーのボスの"カリーナ"・ルーシー・カヴァリエーレかい?」
映画俳優のように感じの心地の良い声が聞こえた。普通人なら、いい声としか思わないだろう。だが、今のルーシーにはどこか不快なものを感じた。
「あなたは誰なの?」
ルーシーの問いに男は笑い出してから、これは失礼と名前を名乗った。
「おれの名前はトーマス・マーニだよ、マーニー・ファミリーのボスで、サウス・スターアイランドシティーのボスだよ」
ルーシーは何故自分が不快感を感じたのかを理解した。声の主が先ほどまでのトラブルの元であったからだ。
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