女王陛下と護衛兵たちの日々〜ワガママ女王陛下の騎士たちは王国の独立を夢見る

アンジェロ岩井

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第二部 王国奪還

電話口のやり取り

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ルーシーは負けることなく、何故自分の家に電話をかけてきたのかを尋ねた。
「簡単な話だよ、あんたのファミリーはコミッションに属していない、だから上納金をコミッションの奴らに払う必要もない、その理由を知っているよ」
トーマスの思わせぶりに言った。
「普通はコミッションの配下になるだろ?誰だってそうだ……弱いファミリーは強いファミリーに守ってもらわなくちゃあいかんからな、そのために三大マフィアが存在してるんだ」
トーマスの説明はアメリカでギャングやマフィアをしている人間なら誰でも知っている事であった。このアメリカで裏社会を牛耳っていたのは、コミッションであったし、実際にコミッションに属して、強い保護を得る見返りに高い上納金を払わされていたファミリーは両手では数え切れないほどであった。
「何が言いたいの?」
ルーシーはトーマスの訪ね方が回りくどい事に苛立ちを感じたのか、部屋の赤い絨毯をトントンと蹴りながら尋ねる。
「つまりだな、オレが言いたいのは、今の時点でコミッションに属していないのは、コミッションにも頼らずにやっていけるのは、立ち上げたばかりの何も知らないファミリーか、頼らなくてもやっていける強靭なファミリーの二択なんだ。あんたらが前者だとは考えにくいからね」
ルーシーは要するに自分たちと取引がしたいという事を察し、受話器を切ろうとしたが……。
「おっと、待ちな……オレの妻があんたらの街に行ったのを確認したんだよ、大人しく妻を差し出しな」
「断るわ」
ルーシーは強い口調で言い放つ。
「おっと、あんたは油断してるみたいだから、言っておくが……トロイア戦争のことを知ってるだろ?」
トロイア戦争……。その言葉はルーシーが中学校の時に習った歴史の授業で習った言葉だった。確かギリシャのボリスと呼ばれる小さな国の集団とトロイアという国のふんそうだったと思われるのだが……。
「それがどうかしたのかしら?」
ルーシーは過去の戦争のことを突然持ち出されても困るばかりだった。それがトーマスにも伝わったのか、苛立った声でトロイア戦争の原因の事を喋る。
「あんた分かってねぇのか?トロイア戦争の原因はトロイアの王子がスパルタかアテネか忘れたが、どっちかの国の王様のお妃さまを誘拐したために発生した戦争なんだぜ」
要するにジェシカは誘拐されたのだと思っているらしい。
「あなた……何を勘違いしてるのか分からないけど、カヴァリエーレ・ファミリーは誘拐等の卑劣な手段は嫌ってるのよ !」
ルーシーは濡れ衣を晴らすためなのか、大声で彼にも分かるように叫ぶ。
「クソがッ!お前がジェシカを誘拐してんのは分かってんだ。オレの白い粉を欲しがってんだろ!?」
明らかにトーマスの決めつけだった。そもそもカヴァリエーレ・ファミリーは麻薬をやらない。そんな事も知らないだろうか。
「あのね、わたし達は麻薬をやらないのよ、麻薬王の出る幕じゃあいないわよ !」
ルーシーは自分の意見を思いっきり言ってやった。それにトーマスも怯んでいたのか、数秒の間電話口から彼の声が聞こえなかった。だが、ようやく本調子を取り戻したのか、再び電話口から声が聞こえてくる。
「お前らがクスリをやらないのはしっかりと分かった……だがな、妻は確実にそこにいるんだよな!?」
「そうよ、彼女がここにいるのは本当よ、違う点は誘拐されずに自分の足でここに来たことかしら」
ルーシーのその言葉にトーマスは驚いたのか、受話器口からも呻き声が聞こえてくる。
「信じられねぇ、あいつが……」
「そうよ、とにかく近いうちに話しましょうか、場所はわたしの屋敷でいいかしら?」
ルーシーの提案に納得がいかなかったのか、トーマスが机をバンバンと叩く音が受話器を通しても聞こえてくる。
「ふざけんなッ!クソが……お前の屋敷でセッテングだとふざけてんのか!?」
「ふざけてないし、お酒を飲んでるわけでもないわ、これは取引なのよ、わたしは直ぐにでも帰したいんだけど、今日や明日じゃあ、お互い困るでしょ?だから、会談の日を決めるのは、そんなに悪い事なの?」
ルーシーは哀願するように尋ねる。トーマスは一種の脅迫とも取れる言葉にたじろいでいたが、トーマスは怯む事なく会談の日を言ってやった。
「明後日だ。今日や明日じゃあ、都合が悪いんだろ?だが、明後日は何も言ってない、だから明後日だ」
トーマスはそれだけ言うと、乱暴に受話器を置く。受話器が電話台に乱暴に置かれる音がルーシーにもハッキリと聞こえるくらい強烈な音がした。
「明後日ね、今日はもう寝るとしましょうか……」
ルーシーは書斎を跡にし、ヴィトとマリアとジェシカが待つリビングルームへと戻る。
「おっ、夫はどうでしたの!?」
ジェシカは右の掌をギュッと握りしながら、半ば叫ぶように尋ねる。
「カンカンよ、あなたが帰ってこないからって……明後日までは大丈夫のはずよ」
ルーシーはそれを告げると、ジェシカは全身を震わせた。
「明後日……それだけなの?わたしが一日夫から解放されるのはそれだけ!?」
「大丈夫よ、あなたの夫は始末する予定だからね、街はファミリーのものにする予定よ、望むのなら、あなたがサウス・スターアイランドシティーのボスになればいいわ……サルバトーレの元部下の人たちはあなたを歓迎すると思うから」
ルーシーの提案にジェシカはペコリと頭を下げる。
「ありがとうございます !ドン・カヴァリエーレ !!」
ルーシーは彼女の期待に応えて上げたいなと考えたが、同時に麻薬王を相手にするのかと考え、ジェシカと視線を合わせ辛い。
そんな時だった……。
「大丈夫 !あたし達は国の国民を見捨てるような真似はしないわ !だから、あなたがもう泣く事はないのよ !」
マリアはジェシカの手を安心させるように取ったのだが……。
「ちょっと、何であなたが手を取るのよ !この任務を引き受けたのは、あなたじゃあないでしょう!?」
ルーシーは手を腰に当てて抗議する。
「大丈夫よ、あなたのお客ってことは、わたしのお客って事でしょう?なら、あたしが手を取るのは当然のことなのよ !」
マリアはエヘンと鼻を高くしている。
「どうして、上から目線なのよォォォォォォ~!」
ルーシーは自慢の黒髪を上空に上げそうなくらい怒っていた。
「あたしは女王なのよ !」
「それとこれとは話が別よ !あんたって子は~!」
子供のように喧嘩する二人を見つめながら、ヴィトとジェシカは笑っていた。
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