女王陛下と護衛兵たちの日々〜ワガママ女王陛下の騎士たちは王国の独立を夢見る

アンジェロ岩井

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第二部 王国奪還

フランソワ王国の新たなる女王

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話はニューホーランドシティーのミラノリア・ファミリー壊滅の一ヶ月前に遡る。
「これが、王の席ね……」
豪華な純白のドレスに身を包んだ女が謁見の間と呼ばれる豪華な玉座に腰を落とす。
「素晴らしいわ !今日から、この国がわたしのものになるんだわ !憎き従兄弟マリアを追い出して、私こそが、この王国の正統なる女王なのよ !!」
エリザベスの声に同じく謁見の間にいた側近たちは拍手を送る。
「おめでとうございます !エリザベス・ド・フランソワ新女王陛下 !我々家臣一同で祝福させて頂きます !」
自慢のあご髭をたなびかせて笑ったのは、彼女の専属の大臣であったルイ・マルテルであった。
「ありがとう、まずは祝勝祝いよ !城を開けてのパーティーを行うのよ !!」
エリザベスの号令に家臣一同が腕を振り上げた。

祝いはその日から、三日三晩続いた。だが、そのために費やした費用は国家予算の五分の一に相当し、彼女らは直ぐに財政難に陥っていった。
「どうするのよ !このままじゃあ、折角この国を手に入れたのに、財政難じゃあない !どうすればいいのよ !」
二日酔いでイライラしていたエリザベスは持っていたワイングラスを近くの従者に投げつける。
「ひっ、申し訳ありません……」
「なら、サッサと税金を増やすくらいしなさいよ !全く」
エリザベスは玉座の上で腕を組んでいた。
「ともかく……マリアの奴を処刑しないことには、国民が私たちをこの国の真の統治者だとは認めない筈よ !あんた達何やってんのよ !」
エリザベスは腹立たしげに怒鳴りつけたが、従者は困ったように手を震わせていた。
「ですが、マリアの姿が見えないもので……我々はどうすればいいのか……」
中世風の鎧に身を包んだヒゲの男が手を勢いよく横に振る。
「なら、あいつの大臣のプイスでもいいわッ!とにかく旧王国の人物を公開処刑にすればいいのよ !」
「それはなりませんぞ !」
強い口調で咎めたのは、エリザベスの大臣であるルイ・マルテルであった。
「旧王国関係者の処刑にはデューダレア皇帝陛下の許可を求めなければ、なりません !ですが、デューダレア陛下はマリア以外の旧王国関係者を処刑する必要はないと仰っていますので……」
「だから、プイスの処刑を諦めろっていうの!?」
エリザベスはマルテルに怒りでプルプルと震えている握りこぶしを向ける。
「その通りでございます……わたくしもマリア・ド・フランス旧王国国王陛下の処刑には賛成の意を示しておりますが……他の人物ではいけませぬ……」
「分かったわよ !でも税は上げるわよ !税を上げなければ、どうやって失ったお金を取り戻せっていうのよ!?」
エリザベスは玉座の上で唸る。
「左様でございます。ですが、国王陛下が贅沢をお控えになり、何かしらの事業にお乗り出しになられれば、税を上げずとも収入を得られると思いますが……」
マルテルはそう窘めたが、エリザベスは玉座の背もたれに偉そうにもたれ、下がれという手拍子を取った。

ルイ・マルテルは城の廊下を渡っている最中にふと、地下牢に行ってみたくなり、古いレンガの階段を下っていく。
「ふうむ、旧王国の重要人物がこれでもかとくらいおるの……」
ルイはあご髭を触りながら、牢の中の人物を確認する。
「だが、あの忌々しい、マリアの婚約者だけは捕らえられておらんらしい……」
マルテルはマリアの婚約者であり、フランソワ王国の大公でもあるシャルル・ローランの事であった。
「あの男が捕まっておらんのは気になるな……つまるところ、あの男は何処かしらの山奥で反エリザベス陛下の反乱軍を作っておるか……或いは」
マルテルは口に出そうとした言葉を引っ込めた。あまりにも馬鹿馬鹿しすぎるためであった。すると……。
「ほう、亡きマリア・ド・フランソワ陛下の大臣であった、プイス殿ではないか……しかし、かつての大臣もここまで落ちぶれるものよのゥ~」
マルテルは自慢のあご髭を撫でながら、落ちぶれたプイスを牢の外から見下ろしていた。
「黙れッ!反逆者の肩を持つ王国の裏切り者めッ!恐れ多くも亡き先代の忘れ形見であらせられる陛下に牙を剥くとは何事かッ!」
プイスは歯を剥き出しにして叫んだが、マルテルは応えていないようだ。
「ふふふ、所詮この世は血統ではなく実力じゃよ、前国王陛下殿にはそのがなかったんじゃ」
マルテルは勝利の笑みをプイスへと向ける。
「だが、お主らはまだマリア国王陛下の処刑を執り行っていないのは、周知の事実よ、陛下の処刑を初めてこの国の民が見納めてこそ、国民はエリザベスを真の国王と認めよう !それまでは、国民から人気を集めているマリア陛下を追い詰めることなど不可能じゃ !」
プイスはフランソワ王国の大臣らしい、毅然とした目でマルテルを睨みつける。
「ふふ、強気な目じゃな……だが、前陛下のおらぬこの世界にもう未練はなかろう?」
「つまり、死ねという事か?」
「そうじゃ……ただし、私たちは手を下さん……お前が自主的に死ぬのじゃ」
プイスは大方エリザベスがギシュタルリアの皇帝陛下から何かを言われたのであろうと推測した。でなければ、そんな事を言いに地下牢などへ降りてこないだろう。
「それで、ワシの死体を晒しものにしようという事か?」
「そんな事はせんよ、だから安心して死ぬが良い……」
今のプイスにはとても魅力的な提案に聞こえた。少なくともマリアのいない世界に未練などないだろうから。
「大丈夫じゃ……お前の死体を晒しものにするつもりなどは微塵もない……」
マルテルは檻を挟んだ向こう側で囁く。
「成る程……なら、ヤスリを貸してもらえんか?ヤスリで首をギリギリと切りながら死にたいんじゃよ……魔法のかかった強力なヤスリが良いぞ、一番切れるやつで……尚且つ中々死なない奴じゃ、それで死ぬからのゥ……用意を頼むぞ」
「分かった。ただし時間がかかるからな、一ヶ月は我慢してもらわねばならん」
マルテルはクルリと踵を返し、地下牢を跡にする。
(ふん、ワシはお主らの考えに騙されたりせんぞ、ワシがヤスリを頼んだのは、この忌々しい檻を破るためじゃよ、お主らに死体は残さん……この体は"悪魔の入り口"に身を乗り込ませて、完全に消してやるわい)
プイスは結構する日のことを考えると、笑いが止まらなかった。
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