女王陛下と護衛兵たちの日々〜ワガママ女王陛下の騎士たちは王国の独立を夢見る

アンジェロ岩井

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第二部 王国奪還

サウス・スターアイランド事変ーその①

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と、その時だった。部屋のリビングルームから激しい電話の音が鳴り響く。
ヴィトは慌てて電話を取り次ぐ。
「大変だッ!」
その声の主は現在サウス・スターアイランドシティーで旧マーニー・ファミリーと抗争を繰り広げているハリーだった。
「どうしたんだ?落ち着いて話してくれんと……」
ヴィトの言葉にハリーは抗議の声を上げた。
「そんな事を言っている場合じゃあない !中世のヨーロッパ時代の兵隊みたいなのが急に大量に現れたんだッ!それだけじゃあない、ロシアの皇帝みたいな格好をした男も現れて、マーニー・ファミリーに味方すると宣言したんだッ!」
ハリーの言葉にヴィトは思わず冷や汗をかく。あの農夫の言葉は本当だったのか。
「分かった。オレらが必ず応援に駆けつけるよ……」
「早く来てくれッ!このままじゃあ部隊は全滅だぜ !カヴァリエーレの勢力が街から追いやられちまう !」
「そんななまっちょろいもんじゃあない !!」
ヴィトは自分でも信じられないくらい大声を出していたとに気がつく。
「どっ、どうしてだ?」
「お前らが街から追いやられだけじゃあない、アメリカが奴らに滅ぼされちまう……」
「アメリカが?」
ハリーの言葉には信じられないという疑念の声が入っていた。
「いや、アメリカだけじゃあない、ソビエトも中国もヨーロッパも日本も……みんな、滅ぼされちまうよ、ギシュタルリア帝国に !」
ハリーは電話口のファミリーの相談役コンシリエーレの言葉が一切理解できなかった。彼は何が言いたいのだろう。確かに自分たちは謎の勢力により、強化されたマーニー・ファミリーに苦しんではいるが、それは世界が変わるほどの重大な出来事なのだろうか。
「おい、ヴィト !お前の言っていることがサッパリ分からん……オレ達が負ければ、世界が終わるって?」
「そうだ。カヴァリエーレ・ファミリーの壊滅はこの世界の壊滅だッ!」
ヴィトの力強い言葉にハリーは反論しようにもできない。が、心の中では反論してみた。自分たちはギャングであり、マフィアである。
むしろ、壊滅するのはアメリカ政府にとっては都合のいい事ではないのだろうか。マフィアが全滅すれば、警察の仕事も減るし、FBIの負担も減る。自分はファミリーに忠誠を誓ってはいるが、客観的に見て自分らは犯罪者の集団だ。ヴィトの言葉の意味が理解できなかった。
「つまり、オレらに抗争に負けるなって発破かけたいのか?」
ハリーは核心をついた質問だろうと、思ったが、ヴィトから返ってきた言葉は意外なものだった。
「それもあるが、オレらの負けはんだと言いたかったんだッ!」
電話口から聞こえるヴィトの声は全くもって正常な様子である。奴らとは誰の事なのだろう。
「すまん、ヴィト……奴らって誰なんだい?」
「奴らだよ、ギシュタルリア帝国の連中さ、奴らはサウス・スターアイランドに総攻撃を仕掛けてきたんだッ!とにかく、オレらが行くまでは、とにかく奮闘しろ !鎧で身を固めた連中は実は銃に弱い、冷静に落ち着いて対処しろよ……それから、奴らが得体の知れない動きをすれば、直ぐにその場から離れろ、魔法を避けるんだッ!」
それだけ言うと、ヴィトからの電話は途絶えてしまう。
「おい、ヴィト !」
ハリーは叫んでみたが、ヴィトはその電話に出る気配はなさそうだ。
「っ、困ったな……まぁいいさ、あいつから指示はあったんだ。何とか対処してみよう」
ハリーは手下にヴィトの指示を伝え、首領ドン相談役コンシリエーレが来るまで、奮闘するのだと叫ぶ。

ヴィトは電話を置くと、庭に出て、マリアとルーシーにサウス・スターアイランドシティーにギシュタルリア帝国が総攻撃を仕掛けてきたのだと主張した。
「いよいよ、奴らがこちらの世界に総攻撃を仕掛けてきッ!今こそオレの出番だ !」
ヴィトは拳をギュッと握り締める。
「まさか……本当に?」
マリアは赤い目で両手を見下ろしていた。
「こちらの世界に総攻撃を仕掛けてきたらしいわ」
「その通りだ……オレが思うに今回の攻撃をギシュタルリアが仕掛けたのは、マリア……お前の王国の国民の目を逸らすためだろうな……」
「あたしの!?」
ヴィトは首を縦に振る。
「そうさ、お前の従兄弟とやらは、あまり統治が上手く言っていないだろうな、こちらの世界の中世のヨーロッパの時代と同じさ、国民の目を逸らすために敵を外に作る……そういう意味では、どちらも同じだろうな……」
ヴィトは深刻そうに庭の土に視線を落とす。
「つまり、エリザベスの尻拭いのためにわたし達の世界は危険にさらされているのね?」
ルーシーは顎を高く上げ、腕を組んでいる。
「その通りさ、だが、ここで考えたのはマリアの従兄弟が自ら前線に出ている事だ……恐らく、ギシュタルリアの皇帝はメアリー・マーニーと交渉するだけで、向こうの世界の軍隊を指揮するのは、エリザベスだと思うな」
「どうしてなの?」
ヴィトは指を二本上に上げた。
「理由は二つさ……一つ女王自ら、前線に出て兵士を鼓舞するため、二つあちらの世界での王国の国民の不満がたまり、エリザベスは自分の命を守るためにこちらの世界に来た。この二点だな」
ヴィトは二人の目をジッと見ながら言った。
「つまり、エリザベスがここに来ている可能性もあるわけね……」
マリアは自分のスカートの裾をギュッと握っている。ヴィトは恐らく怖いのだろうと考察した。何故なら、彼女の従兄弟は自分の国を奪った上に自分を殺そうとしもした人物なのだ。怯えて当然だろう。
だが……。
「あたしは怯まないわ !怯めばあいつの思い通りという事になるもの !そんなのだけは嫌だわ !!」
マリアは両手を握り、それを上に挙げる。「それでこそ、女王様だ。だからこそ、オレはあんたに敬意を払わせてもらうんだ」
ヴィトはマリアの肩をポンと叩く。
「心配はいらない、エリザベスだろうが、マーニー・ファミリーの奴らだろうが、お前に手を出そうとすれば、オレが全力で相手を食い止める」
ヴィトは優しい微笑を浮かべながら言った。
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