王道マジックファンタジーの世界で、俺だけが異端

羽野 奏

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第一章 聖女の誕生と異端審問

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「まずは、治癒魔法Ⅲで出せる範囲の魔法を1個ずつ出してみてもらおうかな」
学術区の魔術研究棟の一室、白衣を着た長身の女性研究員リンダが、マリアに指示を出す。
「あ、あのっ!マリア、まだ魔法使った事なくて…」
「ふむ。うん、まず魔力を感じる事はできているか?」
少しクールな印象の顔付きに、マリアは緊張している様子だ。
「はいっ、それは、分かります」
「では、体内を循環している魔力を、手に集めて、癒しの光を放つイメージで」
リンダの手の中に、白い発光体が現れる。
「ヒール!」
術の発動を受け、ふわぁっと手のひらの発光体が霧散した。
聖属性の魔術を持つ者は少ないはずなのに、ヒールを放てる人間が、神殿には普通に存在する。
「うん、ヒールはこの様な感じだな。Ⅱはハイヒール、Ⅲはエリアヒール、順にやっていこう。まずは魔力を手に集中させる所からいこうか。最初は難しいかも…」
「ヒールぅっ!!」
「なにっ?!」
ぶわぁぁっと光の波動が広がり、霧散する際には、実体のないはずの力が頬を撫でるようだった。
リンダは驚きの声をあげる。
「魔力を集めるコツを掴むまで数日、癒しをイメージするのにさらに数日と予測していたが、天才か!」
「んと、マリアは何もしてないのっ!マリアを主神さまが使ってた…みたいな、気付いたらヒールできてたの」
「君の身体を主神様が?ヒールの威力差もそれが原因か?いや、しかし…」
ブツブツと何かを考えるように、リンダは呟く。
「マリア、次はハイヒール行ってみようか。発動できたらまた発動時の感覚を教えてくれ」
「はいっ」
2人のやりとりを見ていたロッテンの肩を、サルエルがポンと叩いた。
「さて、マリアちゃんは大丈夫そうだし、ロッテン君もそろそろ始めようか」
「オレのスキルの確認って、もしかして?」
「そ、僕がするよん」
「サルエルはただの修道士じゃないってこと?」
「さあねー」
サルエルは鼻歌混じりに、壁面の棚からタブレットを取り出す。
「ひとまず、未知の属性だし、スキル名の確認からしても構わん?」
「ヤダって言ったら拒否権あるの?…ステータス開示」
タブレットに手をかざして魔力を流しながら苦笑いする。
「本当、賢いね君。ええっと?腐食Ⅱと腐敗Ⅱねぇ、これ何ができるの?」
「どっちも腐らせるっぽい。腐食より腐敗の方が腐り具合が酷いってこと位しかオレも分かんないんだ」
「それぞれⅡってことは、ヒールとハイヒールみたいに、4つ魔法が発動すんの?」
「そもそもスペル知らないから、4つ発動するのかも分からない」
「じゃあ、マリアちゃんみたいに腐神に身体を使われてる感じは?」
「今の所そういうのはない。でも、まだスペルで力を発動させたことがないから、スペルを使えばどうなるかは分からない」
「あっはっはー!分からん尽くめやね!」
参ったねー、と、笑いながらサルエルは机の上に用意されていたリンゴを二つ取って、一つを投げてよこす。
「まあ、先ずは腐りそうなもので色々試してみよか」
「分かった…」
果物、水物、木や皮、食品と、いろいろ試してみたが、手掛かりは掴めなかった。
「いやー!ロッテン君の言う通り、腐り具合の違いがあるなーって位しか分からんね。それにしても、こんなにやっても魔力切れにならんって凄いね、マリアちゃんもだけど」
隣で何度もヒールを繰り返すマリアを指して、サルエルは笑う。
「結構魔力あるってヤツでも、10発位で疲労困憊が普通。それを20発はやってるでしょ、流石だわ」
「そうなんだ、知らなかった」
「まあ、愛し子やら権化やらが付いてる君らを普通に当てはめちゃいかんのやろうね」
片付けを始めたサルエルは、そうだ!と言って、ロッテンの方を向いた。
「次は図書館に行ってみようか、腐属性を持ったヤツが昔いたか調べてみる?」
「うっ…オレ文字読めない」
「あー、そっか。じゃあ僕が仕事の合間に調べてみよう、なんか分かったら教えてやるよ」
「いいの?」
「文字読めないんじゃ仕方ないんじゃん?それとも、読めるようになるために勉強する?」
「するっ!」
「マリアもっ!」
いつの間にか近くに来ていたマリアもキラキラした目でサルエルを見た。
「マリアも、本読めるようになりたい!主神様の物語とか読めるようになりたいもん」
「うおっ?マリアちゃんもか。じゃあ、文字の勉強やっちゃうかー」
「「お願いします!」」
双子の声が、見事にシンクロしたのとほぼ同じタイミングで、現れたシンシアが声を発した。
「そろそろ移動するよ、お昼ご飯に遅刻しちゃうわ」
今日のお昼は、この国の女王もとい教皇との食事会が予定されている。
はーい、と声を発し、3人はリンダに手を振って、シンシアが手配した馬車に乗り込んだ。
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