毎月25日は椿くん感謝デー

佐々森りろ

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2 10月25日

洋菓子店「さいち」

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 昔ながらの商店街に、「ヘアサロンまりあ」はある。あたしが通う「太陽堂」もあるし、今先輩が言っていた、洋菓子店「さいち」も同じ通りにあって、あたしも小さい頃からそこのプリンが大好きだ。たぶん、この辺りで育った子供は、誰もが食べていると思うし、好きなんじゃないかな。
 あれこれ考えて歩いていると、気がつけばあたしは「さいち」の前まで来ていた。

 今日はまりあさんもいるだろうか。
 理人先輩はご兄弟はいるのかな。お店がお休みということは、ご両親もお家にいるのかもしれないな。いや、でも、まりあさんはいつも1人でお店に立っているから、旦那さんはまた別のご職業なのかもしれない。

「いらっしゃいませ。あら、もしかしてニコちゃん?」

 自動ドアから店内に入ると、カウンターに立っていたお姉さんにすぐに名前を呼ばれた。

「あ、は、はい」
「わぁ、やっぱり。ずいぶんお姉さんになったのねー。小さい頃のイメージのままだったからびっくりしちゃった」
「あ、はは」

 ずいぶんノリのいいお姉さんだ。
 あたしは「さいち」のプリンは好きだけど、いつもは父か母が買ってきてくれるのを食べているから、自分で買いに行くことはなかった。小さい頃は、母とお買い物の帰りに寄ったりして、ついて来ていたことはあったけど、このお姉さんのことは正直覚えていない。

「あの、プリンを……」

 えーと、何個にしよう。とりあえず5個あれば足りるかな。ショーケースの中を覗き込みながら、考える。
 すると、プリンがハロウィンバージョンに変わっているのに気がついた。
 いつもは透明な瓶に入っているプリンが、今日はオレンジのかぼちゃお化けのカップに入っている。

「あ、プリンは今日まで限定ハロウィンカップだよ」

 あ、そっか。今日ってもう10月31日だ。お姉さんの言葉であたしはハロウィンが今日であることを思い出す。

「えっと、じゃあ、ハロウィンカップを5つください」
「はい、かしこまりました」

 丁寧に箱に入れてくれて、手提げ袋にも入れてもらった。「限定」とつくものにはいつも弱い。なんだか特別な気がして、ワクワクする。

「ありがとうございました」

 入り口ドアまで見送られて、あたしもお辞儀をする。さいちから出て歩き始めると、途端に目的地に何をしに向かっているのかを思い出した。
 ウキウキした気持ちが、みごとに萎んでいく。
 せっかく期間限定のハロウィンプリンを手にしているのに、こんなに気が重たいとか、なんか不安しかない。


「こんにちは……」

 ヘアサロンのドアをそっと押す。表には、クローズの看板が表示されているけど、鍵が開いていて、ドアはすぐに開いた。
 だけど、店内はいつもとは違う流行りの音楽が流れていて、誰の姿も見えない。

 とりあえず、あたしは待合いのソファーに座って、先輩にお店に着いたことをメッセージで伝えた。すると、すぐに奥の部屋から足音が聞こえてきた。

「あー、ニコちゃんいらっしゃい。早かったね」

 制服から、ラフな格好に着替えている理人先輩が店の中にやってきた。入り口付近に置いてあったシャツを着ると、きちんと腕まくりをし始める。
 いつ見てもおしゃれな人だな、と感心してしまう。おしゃれに無頓着なあたしでさえ、この人がおしゃれな人だと分かるくらい、理人先輩はきちんとしている。
 髪の毛を後ろにゴムで一つにゆわえて、こちらへどうぞと手を椅子に向けられるから、立ち上がった。

「あ、あの、これ」

 催促されたものです。とはさすがに言えないから、紙袋をそのまま差し出す。

「え?」

 不思議そうに受け取った理人先輩は、袋の中身を見て、すぐにまた「えぇ!?」と驚く声を上げた。

「まさか、マジで買ってきてくれたの?」

 ものすごい驚きように、あたしは少しムッとしてしまう。だって、あんな風に言われたら買っていくしかないじゃない。心の中で思っても、口には出せない。

「えー、ニコちゃんってマジでいい子。うん、あいつ見る目あるわ」

 深く頷きながら喜ぶ先輩は、「ちょっと冷やしてくるね」と奥の部屋へまた戻って行ってしまう。
 仕方がないから、あたしは椅子に座って待つことにした。
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