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3 11月25日
椿くんまでやってきた!
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「お、きたきた」
すぐに理人先輩が立ち上がってあたしの後ろを通って入り口へ向かう。
入り口を背にして座ってしまったあたしは、今入ってきた人が誰なのかが見えない。だけど、さっき聞こえてきた声に、ずっと心臓がドキドキと高鳴って苦しくなっている。
来たのは男の子で間違いないし、あの声は確実にあの人だ。でも、まさかここにくるはずがないし、なんか知らないけど一条さんもいるし、こんな状況は絶対にありえない。ありえない……まさか!?
あたしに椿くん推しをやめさせるために呼び出した、とか?
急激に不安が押し寄せてくる。なにかことが起これば、お店にはまりあさんもお客様もいる。だから、ここは密室だけどちゃんと証人はいるし、逃げてもあたしは犯人扱いにはならないはずだ。いや、そもそも犯人になるのはあたしじゃない。むしろ、あたしは殺されるほうじゃない!?
サスペンスな展開が勝手に頭の中をよぎり始める。
不安に上乗せして、今度は恐怖まで入り混じってくる。一刻も早くここから脱出したい!
膝の上で握りしめた拳に、じんわりと汗をかく。正座をしていた足は、少しずつ痺れを感じ始めていた。今立ち上がったら、ふらついてしまいそうだ。
俊敏な動きなど元から出来ないけれど、正座なんてして座るんじゃなかったと、真面目な自分の性格を恨む。これではいざという時に逃げられない。
「椿くんいらっしゃーい」
笑顔で片手を高く上げた一条さんの一言で、焦って悶々としていたあたしの体に、雷が落ちたみたいに戦慄が走る。
やっぱりそうだ。
もうだめだ。
あたしの人生これまでだ。
お父さん、お母さん、今までかわいいって言って育ててくれてありがとう。
本当に感謝しています。
また生まれ変わってもあたし、2人の子供になりたい……!!
「あ、如月さん?」
ギュッと目をつむったあたしのすぐ横から、戸惑いの声が落ちてくる。
もういっそ、一思いにやってほしい。
なんで推しているのかとか、どんな推し方してるのかとか、そう言うの聞かれてもなんにも答えたくないし、答えない。だから、どうぞ、もう一思いにあたしのことを抹消して……
「ありがとうっ! 引き受けてくれるんだ!」
「……!?!!!!」
すぐ隣にしゃがみ込んだかと思えば、あろうことか、椿くんがあたしの汗ばんでじっとりしてしまっていた手を掴んでくる。
「この前はごめん。なんか如月さんと話したことなかったからさ、話しかけづらくて。俺めちゃくちゃキョドってたでしょ?」
あははと爽やかに笑っているから、あたしは固まってしまったまま動けない。当たり前のように隣に座る椿くんから、あたしは無意識に体を離した。
「あ、ごめん。馴れ馴れしいよな。こっちはお願いする立場なのに。距離感、まじ気をつけます……」
さっきはめちゃくちゃタメ語だったのに、あたしが距離を置いた途端に何かを感じ取るようにハッとしてから、敬語に戻ってしまう。
そう。椿くんは、あたしなんかにタメ語で友達みたいになんて話しちゃだめなの。敬語だって申し訳ない。
「でも、理人先輩の彼女が一条だったってのは驚きでした。クラスメイトじゃんって思った」
「でしょ? あたしずっと椿くんラブだったしね」
「ちょ! そう言うこと先輩の前で言うの!?」
「リヒはちゃんと知ってるもんねーっ」
「うん、分かってるよー。椿めちゃくちゃモテるしカッコいいから仕方ないよねぇ」
「いや。それ、怒ってません?」
理人先輩が差し出した椿くんのマグカップの中身が、あきらかに濃い色をしている。
「……俺、ブラック飲めないんですけど」
「ああ、そうだったねー、ごめーん」
「めっちゃ怒ってるじゃないですか! やめてくださいよ、俺先輩のこと好きなんですから!」
「あははは! だよねぇ、椿くんっておもしろーい」
「一条って、顔は良いけど性格悪いなぁ」
「ふふ、良く言われるー」
「おいおい、そこ仲良くすんなよ」
3人でキャッキャっと会話が進んでいく。
傍観者のあたしは、なんだかテレビドラマでも見ている気分になっている。イケメン男子2人が一軍女子一条さんの取り合いかぁ。めちゃくちゃ面白そうな展開になりそう。ワクワクしてきてしまう気持ちにハッとして、自分の置かれている状況を思い出した。
いや、あたしはここにいてはいけない存在なのに、なぜここにいるの?
「じゃあ、とりあえず25日何時にどこいくか決めるか」
「オッケー! あ、あたしね、これ気になってるんだけど」
場を仕切り出す理人先輩と、スマホをテーブルの上に置いてなにやら操作を始める一条さん。そして、興味津々に覗き込みにいく椿くん。
何の話かもまったく見えないまま取り残されるから、やっぱりあたしは、今すぐ帰りたくなる。
すぐに理人先輩が立ち上がってあたしの後ろを通って入り口へ向かう。
入り口を背にして座ってしまったあたしは、今入ってきた人が誰なのかが見えない。だけど、さっき聞こえてきた声に、ずっと心臓がドキドキと高鳴って苦しくなっている。
来たのは男の子で間違いないし、あの声は確実にあの人だ。でも、まさかここにくるはずがないし、なんか知らないけど一条さんもいるし、こんな状況は絶対にありえない。ありえない……まさか!?
あたしに椿くん推しをやめさせるために呼び出した、とか?
急激に不安が押し寄せてくる。なにかことが起これば、お店にはまりあさんもお客様もいる。だから、ここは密室だけどちゃんと証人はいるし、逃げてもあたしは犯人扱いにはならないはずだ。いや、そもそも犯人になるのはあたしじゃない。むしろ、あたしは殺されるほうじゃない!?
サスペンスな展開が勝手に頭の中をよぎり始める。
不安に上乗せして、今度は恐怖まで入り混じってくる。一刻も早くここから脱出したい!
膝の上で握りしめた拳に、じんわりと汗をかく。正座をしていた足は、少しずつ痺れを感じ始めていた。今立ち上がったら、ふらついてしまいそうだ。
俊敏な動きなど元から出来ないけれど、正座なんてして座るんじゃなかったと、真面目な自分の性格を恨む。これではいざという時に逃げられない。
「椿くんいらっしゃーい」
笑顔で片手を高く上げた一条さんの一言で、焦って悶々としていたあたしの体に、雷が落ちたみたいに戦慄が走る。
やっぱりそうだ。
もうだめだ。
あたしの人生これまでだ。
お父さん、お母さん、今までかわいいって言って育ててくれてありがとう。
本当に感謝しています。
また生まれ変わってもあたし、2人の子供になりたい……!!
「あ、如月さん?」
ギュッと目をつむったあたしのすぐ横から、戸惑いの声が落ちてくる。
もういっそ、一思いにやってほしい。
なんで推しているのかとか、どんな推し方してるのかとか、そう言うの聞かれてもなんにも答えたくないし、答えない。だから、どうぞ、もう一思いにあたしのことを抹消して……
「ありがとうっ! 引き受けてくれるんだ!」
「……!?!!!!」
すぐ隣にしゃがみ込んだかと思えば、あろうことか、椿くんがあたしの汗ばんでじっとりしてしまっていた手を掴んでくる。
「この前はごめん。なんか如月さんと話したことなかったからさ、話しかけづらくて。俺めちゃくちゃキョドってたでしょ?」
あははと爽やかに笑っているから、あたしは固まってしまったまま動けない。当たり前のように隣に座る椿くんから、あたしは無意識に体を離した。
「あ、ごめん。馴れ馴れしいよな。こっちはお願いする立場なのに。距離感、まじ気をつけます……」
さっきはめちゃくちゃタメ語だったのに、あたしが距離を置いた途端に何かを感じ取るようにハッとしてから、敬語に戻ってしまう。
そう。椿くんは、あたしなんかにタメ語で友達みたいになんて話しちゃだめなの。敬語だって申し訳ない。
「でも、理人先輩の彼女が一条だったってのは驚きでした。クラスメイトじゃんって思った」
「でしょ? あたしずっと椿くんラブだったしね」
「ちょ! そう言うこと先輩の前で言うの!?」
「リヒはちゃんと知ってるもんねーっ」
「うん、分かってるよー。椿めちゃくちゃモテるしカッコいいから仕方ないよねぇ」
「いや。それ、怒ってません?」
理人先輩が差し出した椿くんのマグカップの中身が、あきらかに濃い色をしている。
「……俺、ブラック飲めないんですけど」
「ああ、そうだったねー、ごめーん」
「めっちゃ怒ってるじゃないですか! やめてくださいよ、俺先輩のこと好きなんですから!」
「あははは! だよねぇ、椿くんっておもしろーい」
「一条って、顔は良いけど性格悪いなぁ」
「ふふ、良く言われるー」
「おいおい、そこ仲良くすんなよ」
3人でキャッキャっと会話が進んでいく。
傍観者のあたしは、なんだかテレビドラマでも見ている気分になっている。イケメン男子2人が一軍女子一条さんの取り合いかぁ。めちゃくちゃ面白そうな展開になりそう。ワクワクしてきてしまう気持ちにハッとして、自分の置かれている状況を思い出した。
いや、あたしはここにいてはいけない存在なのに、なぜここにいるの?
「じゃあ、とりあえず25日何時にどこいくか決めるか」
「オッケー! あ、あたしね、これ気になってるんだけど」
場を仕切り出す理人先輩と、スマホをテーブルの上に置いてなにやら操作を始める一条さん。そして、興味津々に覗き込みにいく椿くん。
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