毎月25日は椿くん感謝デー

佐々森りろ

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3 11月25日

恩返し

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「あと、その服なんだけど、ユリカに『私ので良ければもらって』って託されてたんだよ」
「……え」

 理人先輩がパンパンに入った大きめの紙袋をお店の奥から持ち出して来た。素直に受け取って中を見ると、いろんな服が詰められていて、福袋みたいになっている。

「え、なんで……?」
「またニコちゃんが服装に悩むだろうから、あげといてって言われたんだけど、なかなか渡すタイミングがなくてね。あ、着替えるなら奥の部屋使っていいよ」

 道具を片付けながら、先輩は奥の部屋を指差す。
 ここまできたら、引き返すことなんて出来ない。あたしは紙袋を両手に抱えて持つと、奥の部屋に向かった。

「お邪魔します」

 しっかりドアを閉めて、誰もいないのを確認すると、袋の中から順番に服を取り出していく。
 一条さんが着るならどれも似合いそうだと思うものばかり。あたしが着て、はたして様になるのだろうかと不安しかない。
 その中でも、チャレンジしやすそうなものを手に取る。
 合わせるなんてことがよくわからないから、一枚で済むワンピースを着てみる。

「……夏?」

 長袖のシャツワンピ。チェック柄だから今着ても大丈夫な気はするのだけど、なんだかいまいち似合っていない。
 ため息を吐き出して、やっぱり無理だと諦めようとした瞬間、いきなりドアが開く音がして振り返った。

「お邪魔しまーすっ! あ、ニコりーん、それかわいいでしょ! あたしも去年めっちゃ着たやつ!」

 背中を丸めてたたずむあたしを見て、部屋に上がって来たのは元気な一条さん。

「それさぁ、一枚じゃ寒くない? 上着とかコート着るほどじゃないんだけど、その中にアレ着るといいかも!」

 あたしの目の前までくると、紙袋の中から何かを探し出す。

「これこれ! 中にこれを着て、首元はボタン3つくらい開けて背中抜いてごらん。めっちゃ可愛くなるからっ」

 差し出されたのは赤いタートルネックのニット。首元ぴっちりと上まで閉めていたボタンを外して中に着ると、一条さんがスタイリストさんみたいにあたしの襟元を整え始めた。後ろから背中あたりをぐっと引っ張られて少しよろめく。

「ちょっと、ほら、シャキッとしてー!」

 また喝を入れるみたいに言われるから、あたしはピッと指先まで姿勢をまっすぐに伸ばした。

「あ、下はこのショートパンツがいいかな。あー、でも今日の髪型はカジュアルよりかはキレイめだよね。うーん、やっぱこっちのスカートかな」

 一条さんに言われるままに、あたしは着替え終えると一緒にお店に戻った。

「おまたせ、リヒ、椿くん」

 一条さんの「椿くん」の言葉に、あたしは足が止まる。
 昨日のことを、まずは謝らなくちゃならない。顔を合わせるのが気まずくて、そっと陰から顔を出した。

「着替え終わった? ニコちゃん」

 優しく微笑む理人先輩と、その隣に困ったように笑う椿くん。
 やっぱり、また困らせている。
 小さく息を吸い込んでから、吐き出す。
 今日は25日。これまで、いつも椿くんにはあたしがハッピーでいられる時間をもらっていたんだ。ありがとうって、本人に心から伝えられるチャンスだし、椿くんに笑顔になってほしいから、ちゃんとしなくちゃ。
 心を決めて、一歩を踏み出す。

「昨日はごめんなさい。今日は、よろしくお願いします」

 椿くんの目の前まで歩いて行って、深く頭を下げた。
 泣きそうになるのを堪える。だって、せっかくかわいくメイクしてもらった顔を崩したり出来ない。それに、泣いてしまったら椿くんのことも理人先輩や一条さんのことも、困らせてしまう。
 今日は、特別な日。みんなが精一杯楽しまなくちゃだめだ。そのためにあたしが出来ることをしたい。今までたくさんあたしにしてきてくれたんだから。恩返しをしなくちゃ。













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