VRMMOの世界で薬屋を開いたレベル1の薬師

永遠ノ宮

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売り上げを伸ばしながらクエスト

忙しい中に恋の花が咲いた

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 活気が戻ったことで、客足が突然と増えた。
 お店の前にできた長蛇の列は、10軒ほど離れた私達のお店が入っている列の最右端の素材屋さん前が最後尾となっている。
 マテリア冒険者街。私達のお店が建っているこの地は、冒険者の街と呼ばれている。
 マテリア冒険者街は、1列30軒が5列ある長方形型の街。
 そこの3列目が私達のお店で盛り上がっている。

「いい感じだねー。私のすすめに、みんな来たんやねー」
「テリヌ……さん。あなたのおかげでしたか」
「イェスイェス! これからもお任せやでー!」

 大慌てで沢山のお客様の会計をしながら、私は裏でカイトさんがテリヌさんと話しているのを聞いてしまう。
 どこかで一度接点があったのか、カイトさんとテリヌさんは互いの名前を知っていた。
 けれど、それ以上会話を聞くことはできなかった。
 自分のことをするので精一杯だったからだ。
 商品の合計を打ち、お金を貰い、ポイントカードを通してお釣りと共に返す。最後に商品を渡す。
 慣れたはずの一連の作業も、人がひっきりなしにやってくると入りたてのアルバイト生みたいのようにアタフタとしてしまう。

「お昼だけでも手伝いましょかねー?」
「店長のリミアさんに聞いてください。僕は事務ですので」
「はいはーい! ……でも、いいの?」
「でも……とは?」
「別になーんにもー! リミアちゃーん! お手伝いするでー!」

 裏で2人が何を話していたのか、私には分からなかった。 
 裏から出てきたテリヌさんが予備のエプロンに着替え、姉が入るはずの空いていた4台目のレジを担当してくれた。
 私の方をチラッと見たテリヌさんに、目で「ありがとうございます」とお礼を言うと、テリヌさんは歯を見せニッ! と、笑ってくれた。
 4人でのレジはとても早く回すことができ、レジ前の混雑は数分で解消された。
 しかし、油断をすればまた混雑してしまう。
 腕が筋肉痛になりそうなハイスピードでの会計作業に、腕より先に頭がやられてしまった。

「きゅう……けい……です……。……ほふぇ……」

 意識が朦朧とし、お昼休憩で貧血で倒れそうになった私の頭をアグナさんが撫でてくれた。
 貧血の時に頭撫でられると気持ちよくていいんだよね……まさにこれこれだよ。
 少しずつクルクルと回っていた景色が元に戻っていく。
 私が立てるようになると、アグナさんが腕を組んで立ち上がらせてくれた。
 腕を組んで……

「腕組み──!? ……ガゴン! ふごっ!」
「リミアちゃん危ない!」
「──ひゃっ!」

 バシッ……。

 アグナさんに腕を組まれ、思わず驚いてしまった私は飛び上がった勢いで裏口のドアにぶつかってしまった。
 真正面から思いっきりぶつかった私は、反動で次は背中から倒れていく。
 現実世界と完全リンクしている【ディーヴェルクオンライン】は、壁で頭を打つだけでもダメージをしっかりと受ける。
 て、ことは私は今頭をドアで打って……50ダメージ。次に後頭部でも打ったら──死亡回数に数字が付く。
 床に頭をぶつけるまでに2秒もないだろう時間が、クロノスタシス現象で長く感じ、死亡回数を気にすることができた。
 頭を2度打って死ぬなんて恥ずかしいことだけれど、仕方ないと諦めた頃、床に後頭部が当たる寸前でアグナさんに助けられた。
 私は多分、運もカンストしているのかもしれない。
 ちなみに、前回のイベントでのリリーミさんに倒され死亡したのはノーカウントだった。最終戦まで行った唯一の1チームだったからだそう。

「あ、アグナさん……グッジョブです」
「現実とのリンク率99.99%のゲームだから少しくらいは気をつけろよ。俺がいなかったら死亡回数が上がってたぞ」
「い、以後気をつけまふ……ふぇー。ほへぇーぇ」

 今度は両手で私の頭をワサワサ、ウリウリと撫でるアグナさん。
 裏口前、在庫棚で人目につかないからと言いこれは恥ずかしい。
 けれど、自然と「ほへぇーぇ」や「んにゃー」と声が出る。
 これは最近2人暮らしを始めた姉に、毎晩のようにウリウリされている時に声を冗談出だしていたからだ。多分、癖になっているだけ。
 すると、突然撫でるのをやめたアグナさんは私の頬を包み込むように両手を当てて……真っ赤な林檎のように顔で言った。

「俺が守ってやるから、とりあえず安心しろ。てか、貧血になったなら言え、俺が何でも動いてやるから」
「は、はい……。でもそれって──」

 と、私が一番肝の部分を聞こうとすると咄嗟に口を右手で封じられた。
 思わず私が目を見開くと……アグナさんは真剣な目で私に向き合っていた。
 もう分かっている。自分が今から何を言われ、どう答えるべきか……。
 見開いてしまった目を閉じ、いつも通り少し眠たそうに調整して目元だけ笑って見せた。
 そして──

「俺は……リミアちゃんを好きなった。単刀直入に言う──」

 ──俺と付き合ってください……鼎。

 何度も心の中で私は言う、分かっていたと。
 アグナさんが私の口から震える手を話し、返事が怖いのか少し斜め右方向を向いてしまった。
 けれど、私の方は返事は決まって一つ。
 
「はい。ドジでダメダメな薬師で、現実ではマヌケ乙な私ですがどうぞよろしくお願いします! アキラさん」
「お、おう。ダメダメでも貰ってやる。 ……さんはやめないか?」
「アキラ!」
「やっぱりさん付けてくれ。アキラって張り切って言われるとなんかこう腹立つ!」

 きっかけどうであれ、私とアキラさんはゲーム内で付き合うことになった。
 ゲーム内だけではなく、もちろん現実でも同じ。
 そして私は──初の彼氏は好きな人となった。

「あの……」
「「うわぁー! え? はい?」」
「ポーションをお店に置かせてもらいたいのですが……宣伝として。いいですか?」
「もちろんです! ではダンボールに──」

 床に崩れ落ちていた私は、勢い良く立ち上がった結果……見事に貧血が戻ってきた。
 そして今度は、アキラさんの頭と私の頭がぶつかり、両方ダメージを負ってしまった。
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