元姫だった私、魔法適正値10000オーバーの冒険者〜勘当された姫は、冒険者の夢を叶え旅をする〜

永遠ノ宮

文字の大きさ
6 / 42
一章〜ギルド設立を目指して〜

五.五話 影縫の潜入

しおりを挟む
 さて、私を誰か存じる者は居るだろうか?
 否ーー個性の欠片もない私を、口調のみで判断できる者は彼女……元姫で現在冒険者のカルシャーナ・リリーのみである。

 ーー私は影縫。

 ギルド『忍』のメンバーであり、影の仕事人として国中を走り回るなんでも屋の一人。
 本名は猿飛影縫。忍者業界では何百年も前から名を残す由緒正しき忍一家の末裔。
 
 そんな私が今回、個人的な理由で冒険者リリー(姫様と呼びそうになる)の住んでいた城に潜入している。
 潜入理由は、リリーの父ーー国王がどうしてあっさりと勘当をしたのかについて気になったからだった。
 
「ちゃっちゃと動きなさい。国王様が来る前に、カーペットの位置を調整しなさい」

「は、はいレベッカ様!」

 メイドに扮して潜入したが、なんと言うことか。
 これでは潜入ではなくタダ働きしに来たと変わらないではないか。
 気付いた時には遅かったが、しかし、耐えねばならないーー我慢なのですぞ。

「……あなた、見ないメイドですね」

「ーーそ、そうですか? 私は毎日の様にレベッカ様を見ていますぞーーいますがあ、アハハハ」

 レベッカーー元騎士にして凄腕であり、今は武装メイド。
 共に騎士からメイドとなった五人と武装メイドとなり国王、女王、元姫を側で護衛する組織の頭。

 流石はリーダーの才能を持って生まれた女。
 数十人と居るメイドの顔を、全員把握しているようだ。
 バレたら終わりの潜入ーー故に、一度と失敗のしたことがない潜入で、今危機的状況を迎えている。
 バレたら多分、私のことなんて知らない国王には首を刎ねられるかもしれない。
 
「……」

 乗り切る方法を考える。

「あらあ? レベッカちゃーん、何してるのお?」

「腐れ乳ーーグレモリー様。夜遅くにご苦労様です」

 レベッカ殿はグレモリー殿に頭を下げる。
 さっき、確実に「腐れ乳ーー」と言った気がするのですぞ。
 聞いていたのかいなかったのか、グレモリー様は微笑んで私の肩に手を置いてくる。

 あ、ヤバイですぞ……これ。

 そう思った時には、もう既に遅かった。
 グレモリー様には、私であることがバレていた。何故なら、反対の手で太腿に隠した忍刀を撫でている。この人は本当にーー何考えているのですぞ!

「ねえ、レベッカちゃーん。私のところに一人、メイドを欲しいと思っていたのよお、この子借りても構わないかしらあ?」

「人体実験に使わないのならどうぞ、お貸しします」

「え、ええ!? ちょっとグレモリー殿ーー」

 グレモリー殿に手を引かれ、私は薄暗い廊下を前屈みになりながら小走りで連れていかれる。
 
「ーー影縫ちゃん、潜入してるのお?」

「分かっているのなら、尚更ですぞ!」

「レベッカちゃんは知り合いであれ、姫様以外の人間を殺すことに躊躇いを持たないからーーバレてたら首が宙を舞う~♪」

「恐ろしいことをリズミカルに言うでないですぞグレモリー殿!? し、してーーあの場から助けてくれたことには感謝しますぞ」

 いえいえーーグレモリー殿はそう言って、廊下を曲がったすぐの部屋に私を連れて入る。
 中には、がたいの良い黒竜の鎧を装備して、窓から何かを見守るように空を見ている男がいた。
 
 見ただけで誰か分かる、魔道士の中で黒竜を狩り鎧にまでしてしまった男ーー即ち、ジーゼル殿である。
 ジーゼル殿はドアの閉まる音に気づくと振り向き、こう言う。

「影縫、遅かったな。待ちくたびれたぞ」

「ジーゼル殿……何で私が潜入すると分かりきった如く、予約の無い来客を待っているが如くーー」

「うむ。実はなーー城の屋根裏に忍び込んだスライムを追って俺も中に潜ると、ダクトに何者かが潜入した跡と……BL本が落ちていたのでな。お前ではないかと、察したわけだ」

 ジーゼル殿は、BL本を鎧の中から取り出すと、私に投げてきた。
 素早くキャッチし、しまう。

「感謝……します、ぞ。そ、それより……お二人はどうしてこの様な時間にここに集まっておられるのか」

「実はねえ、今から国王が大臣達と冒険者支援制度に付け加え、ギルド支援制度を確立する気なのよ」

「……何故、そのようなことを?」

 私が首を傾げると、「馬鹿者が!」と、ジーゼル殿に頭を殴られる。
 硬いグローブは黒竜の鱗がびっしりと付いていて、私の頭皮を軽く傷つける。

「分からんのかお前は……本当に、馬鹿者が」

 やれやれと呆れ、ジーゼル殿は部屋に置かれたソファーに腰を下ろすと結界を張り巡らせる。
 防音効果がある結界は、作ることは簡単でも持続させることが難しいという。
 ジーゼル殿は平均ーー二時間程、持続させることが可能とされている。

 グレモリー殿は結界が機能しているか、触って確かめてから自前の杖を浮かしてそこに腰を下ろした。
 私は加齢臭のするジーゼル殿の横に座りたくないので、いつものコウモリスタイルを天井使って構える。

「ここだけの話、俺とグレモリーのみが入手した話だが、国王は勘当した姫様が、冒険者になった後その人柄の良さで仲間を作りギルド設立ーーそこまで読んでいる」

「つまり、そうなればギルド設立した元姫、リリー様はギルドのリーダーとなるのよお。そこで親としては、心配があるわけ~」

「勘当しておいて、心配もないと思うのですぞ?」

「その勘当が、怒りでないとすればーー分かりやすいのではないか?」

「人って、時には意を込めて反する行いをする時もある。例えば、相手を許しているのに一発殴るとかあ」

「そうなんじゃないかと、考えているわけだ」

 ジーゼル殿とグレモリー殿は、私に「そう思わない?」と聞いてくる。
 聞かれても分からないーー。
 親子の間に、そんなことが起こるのだろうか?
 生後一週間で、産婦人科へのモンスター乱入事件で両親を亡くし、養子として拾ってくれた局長が親代わり。
 そんな私が、親の気持ちを知る訳がないのである。

「分からないですぞ、私にはそんなの……」

「まあ、そう言うことだ。だから影縫、お前は帰るが良いーーもう大臣達と国王は会っている。今日の潜入からは教訓を得て、『知り合いの居るところへ行かない』ことだ」

 ジーゼル殿はソファーから立ち上がると、優しく私の額にデコピンをして、グレモリー殿と部屋を出て行った。
 
「……意に反する……ですかあ……」

 それが本当か、姫様が国王に勘当された理由を、私は知るまでーー。
 

「ーー新しくメイドとなりました。カリーシアです、不束者ですがよろしくお願い致します」


 偽名を使って、メイドの一人になり長期潜入をすることとした。
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

処理中です...