たかが番

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番より愛をこめて(2人のその後)その2

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手作りのものを渡すのはアリかもしれない。
市販のラーメンであんなに喜んでくれるなら、プレゼントも手作りのものにすれば間違いないだろう。

問題は、俺に料理の才能がないってこと。
自分と違ってコウキは甘いのが苦手だから、お菓子は贈れないし。
そもそも料理はコウキの方が得意だ。
料理以外で何か手作りできるものはないだろうか。
すぐに手芸が思いつくが、家庭科の授業を思い出して、頭が痛くなってきたのでやめた。

今まで俺のために我慢させていた分、記念になるものにしたいんだけどなぁ。

〈手作り 恋人 プレゼント〉で調べて目に止まったのが、結婚指輪を手作りしている人たちの体験談だった。
ブログや口コミを読んでみるとそこまで難しい工程はなく、講師の先生がついて教えてくれると書いてあり、失敗もなさそうだ。

「手作りの指輪かぁ・・・」

これなら俺にも上手くできるかもしれない。

当初の予算からは少しオーバーするが、シルバーアクセサリーなら許容範囲内で収まりそうだ。
携帯で預金残高を確認する。

うん!しばらく節約すればいける、大丈夫だ!
俺は未来の自分に謝罪しつつ、シルバーアクセサリーの工房に予約を入れた。




予約当日。

寝ているコウキの指に紐を巻いてサイズを測り。
念の為、コウキがよく付けている指輪を借りて持ってきた俺は、準備万端で工房に到着した。

「へー、色んな指輪があるんだなぁ」

隣でサンプルを見ていたシンが呟く。
カップルだらけのところで1人作るのは辛いのでシンを誘うと、面白そうだと喜んでついてきてくれた。
お店の人が来て、説明を受けながら作業に取り掛かる。
渡されたシルバーの棒を切ると、切断された細い切れ端を輪っかなるように曲げていく。
バーナーで溶接してリング状になったものを、ハンマーで叩いて形成する。

「番に作るのか?」
「いんや、俺用」

シンは即答すると、ハンマーでガンガンと指輪を叩く。
作業に没頭していたせいか、気がつくと2人とも無言で叩いていた。
叩き続けること数十分。
表面がボコボコした手作り感あふれる、槌目仕上げの指輪が完成した。
俺は指輪を眺めて、出来栄えに満足した。




*****



ホワイトデー当日、俺はコウキにラッピングされた箱を差し出した。

「手作りのモノにしたくて・・・」
「これ、レージが作ったの?すごいね」

ジュエリーケースから取り出してまじまじと見つめられる。
コウキが指輪をつける瞬間。
俺は緊張しながら彼の指を見つめた。
指輪はコウキの指をゆっくりと通って、ピッタリと嵌る。
ほっとしてコウキを見ると、あまりにも真剣な顔をしていたので不安になった。
サイズが合わなかったのだろうか?
それとも気に入らなかった?

「・・・もらってもいいのかな」

俺が問いかける前に、コウキがポツリと呟いた。

「そのために作ってきたんだ。お前がもらわなかったら意味ないだろ」
「レージに求めすぎてるって反省してて・・・。これ以上、俺の気持ちを押しつけたら負担になるってわかってるのに」

コウキが苦しそうに言うので、俺は頬をつねった。

「い・・・ぃひゃい」
「俺は、お前に求められて嬉しかったんだぞ」

コウキがつねられた頬を押さえながら俺を見つめる。

「俺だってコウキに色々してやりたいし、だからコレ作ってきたんだろ。素直に喜べ」

俺の言葉でホッとしたのか、指輪に目を落とすと今度は嬉しそうに微笑んだ。

「ありがとう、めちゃくちゃ嬉しい。大事にする」

指輪をつけた手が俺の頬に触れて、顔が近付いてくる。
俺は目を閉じてコウキの唇が降りてくるのを待った。
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