9 / 14
第9話 10月12日
しおりを挟む
昼休みの事だ。弁当を食べ終え、いつもみたいに自分の席で寝ていると彰仁の気配を背後に感じた。
「なんだよ。寝不足なんだ。寝させろよ」
「そんなのいつもの事だろ」
「邪魔してるのは誰だよ」
「なぁ、琴音ちゃんとなんかあったのか?」
「なにも」
「嘘つけ。今朝は一緒に駅まで来ただろ。さっきも普通に話してたし、変だろ」
「別におかしくねぇだろ。家は一緒だし、話だってするだろ」
「そういうこと言ってんじゃねぇよ」
さすが親友。俺たちに何かあったことは察しているみたいだ。こりゃ誤魔化すより素直に話した方がマシか。俺は机に伏したまま顔を窓に向け昨夜の出来事を話した。
「告った」
「マジ?」
「マジ」
「返事は」
「ご想像にお任せする」
「そうか。良かったな。で? 付き合うのか?」
「さぁな」
「そっかぁ――は?」
「そういう反応になるよな」
「え、なに。意味わかんねぇよ」
そりゃそうだよな。相思相愛の相手と中途半端な関係だと言ったら理解に苦しむよな。
「付き合うとか、そういうのはまだ先だな」
「はぁ? なんだよそれ」
「互いの気持ちを確認した程度って感じ、って言った方が良いかもな」
「よくわからんが、とりあえず前進したんだな。よく告ったな」
「俺もよく言ったと思うよ(ま、きっかけは俺があいつの裸見てしまった事なんだけどな)」
「けどよ、両想いなら付き合ってるのと同じなんじゃね?」
「だよなー」
「なんだよ。他人事みたいな反応だな」
「いや、もう後に引けなくなったなぁって」
「いまさら怖気づいたのかよ」
「そんな感じだな」
親父たちの事がなければその場で付き合うって答えが出ていたと思う。俺だって親父の再婚は嬉しい。そう考えると俺は少し自分勝手だったのではと不安になるのだ。
「別に深く考えなくて良いと思うぜ」
「そう言ってくれるとマジ助かる」
「まぁ、アレだな。結果的に琴音ちゃんと両想いだったみたいだしさ、気楽にやった方が良いと思うぞ」
「気楽にやれたら困らねぇよ」
ほんと他人事だと思って適当な事言いやがって。でも、適当に見えて実は的を射た事を言ってるんだよな。
「――アキってさ」
「なんだ?」
「実は良いやつだよな」
「ちょっ“実は”ってなんだよ」
「怒んなよ。これでも感謝してんだから」
「そりゃどうも。あ、そうだ」
「なんだよ。まだ何かあるのか」
「琴音ちゃんが“放課後、北校舎の裏に来て”だと。メール来てたの忘れてた」
「りょーかい。つかなんで直接言わねぇんだ」
「さぁな。ま、想像はつくけどな」
「なんだよそれ」
ニヤリと不敵な笑みを見せるアキに首を傾げる俺。まぁ、放課後になればわかる事だ。
「ごめんね。呼び出したりして。あ、ちゃんと時間差付けて教室出てくれたのはさすがだね」
「そりゃどうも。で、どうしたんだよ。わざわざ呼び出すなんて。それもこんな人気のないって……琴音?」
「バカ。昨日はあんなカッコいい事言ってたのに」
「え? あー悪い」
不機嫌そうにそっぽを向く琴音を見て呼び出された理由に気付く俺。なるほど、だから北校舎の裏なのか。確かにここは有名な告白スポットだからな。
「昨日の事だよな。悪い。そんなの頭に無かったからさ」
「ほんと、昨日の事が嘘みたいなんだから。でも素直でよろしい」
「そりゃどうも。それじゃ――」
「……うん」
「ここに呼び出してって事はさ、そういう事なんだよな」
「昨日はちゃんと言ってないもんね。ハルくんっ」
「お、おう……って、琴音?」
突然名前を呼ばれつい身構えてしまったが、深々と頭を下げる彼女の口から出たのはある意味予想通りの言葉だった。
「昨日の返事だけど、少し待ってほしいの」
「それは“保留”ってやつか」
「そう、なるのかな。ごめんなさい」
「親父たちの事があるからだよな」
「うん。ごめんね」
「謝るなよ。昨日も言ったけどさ、一緒に暮らしてるんだし、別に焦らなくて良いと思うぜ」
「ありがと。ちゃんとお返事はするから」
「それは良いけどさ――」
「なに?」
「昨日みたいなの、あれはナシだからな」
「わ、わかってるよ! って言うか、忘れるって言ったよね⁉」
「誰にも言わねぇからそれで良いだろ。バイトねぇし、一緒に帰るか?」
「話逸らさないの!」
「はいはい。急がないと快速間に合わないぞ」
「あ! ちょっと待ってよ」
慌てて追いかけてくる琴音を置いて正門へ向かう俺。なんて言うか、こういう日常に憧れていた。
琴音との姉弟関係が変わる事なく、変わったとすれば二人の間にあった“変な壁”が無くなった事くらい。
たぶん、今はこれくらいがちょうど良いんだと思う。
少しずつ、ゆっくりと前に進めば良いさ。なんせ俺たちは一緒に暮らしてるんだ。他の奴等にはないアドバンテージがある。
それに、保留と言っても琴音の答えはもう出ているのだから。
「なんだよ。寝不足なんだ。寝させろよ」
「そんなのいつもの事だろ」
「邪魔してるのは誰だよ」
「なぁ、琴音ちゃんとなんかあったのか?」
「なにも」
「嘘つけ。今朝は一緒に駅まで来ただろ。さっきも普通に話してたし、変だろ」
「別におかしくねぇだろ。家は一緒だし、話だってするだろ」
「そういうこと言ってんじゃねぇよ」
さすが親友。俺たちに何かあったことは察しているみたいだ。こりゃ誤魔化すより素直に話した方がマシか。俺は机に伏したまま顔を窓に向け昨夜の出来事を話した。
「告った」
「マジ?」
「マジ」
「返事は」
「ご想像にお任せする」
「そうか。良かったな。で? 付き合うのか?」
「さぁな」
「そっかぁ――は?」
「そういう反応になるよな」
「え、なに。意味わかんねぇよ」
そりゃそうだよな。相思相愛の相手と中途半端な関係だと言ったら理解に苦しむよな。
「付き合うとか、そういうのはまだ先だな」
「はぁ? なんだよそれ」
「互いの気持ちを確認した程度って感じ、って言った方が良いかもな」
「よくわからんが、とりあえず前進したんだな。よく告ったな」
「俺もよく言ったと思うよ(ま、きっかけは俺があいつの裸見てしまった事なんだけどな)」
「けどよ、両想いなら付き合ってるのと同じなんじゃね?」
「だよなー」
「なんだよ。他人事みたいな反応だな」
「いや、もう後に引けなくなったなぁって」
「いまさら怖気づいたのかよ」
「そんな感じだな」
親父たちの事がなければその場で付き合うって答えが出ていたと思う。俺だって親父の再婚は嬉しい。そう考えると俺は少し自分勝手だったのではと不安になるのだ。
「別に深く考えなくて良いと思うぜ」
「そう言ってくれるとマジ助かる」
「まぁ、アレだな。結果的に琴音ちゃんと両想いだったみたいだしさ、気楽にやった方が良いと思うぞ」
「気楽にやれたら困らねぇよ」
ほんと他人事だと思って適当な事言いやがって。でも、適当に見えて実は的を射た事を言ってるんだよな。
「――アキってさ」
「なんだ?」
「実は良いやつだよな」
「ちょっ“実は”ってなんだよ」
「怒んなよ。これでも感謝してんだから」
「そりゃどうも。あ、そうだ」
「なんだよ。まだ何かあるのか」
「琴音ちゃんが“放課後、北校舎の裏に来て”だと。メール来てたの忘れてた」
「りょーかい。つかなんで直接言わねぇんだ」
「さぁな。ま、想像はつくけどな」
「なんだよそれ」
ニヤリと不敵な笑みを見せるアキに首を傾げる俺。まぁ、放課後になればわかる事だ。
「ごめんね。呼び出したりして。あ、ちゃんと時間差付けて教室出てくれたのはさすがだね」
「そりゃどうも。で、どうしたんだよ。わざわざ呼び出すなんて。それもこんな人気のないって……琴音?」
「バカ。昨日はあんなカッコいい事言ってたのに」
「え? あー悪い」
不機嫌そうにそっぽを向く琴音を見て呼び出された理由に気付く俺。なるほど、だから北校舎の裏なのか。確かにここは有名な告白スポットだからな。
「昨日の事だよな。悪い。そんなの頭に無かったからさ」
「ほんと、昨日の事が嘘みたいなんだから。でも素直でよろしい」
「そりゃどうも。それじゃ――」
「……うん」
「ここに呼び出してって事はさ、そういう事なんだよな」
「昨日はちゃんと言ってないもんね。ハルくんっ」
「お、おう……って、琴音?」
突然名前を呼ばれつい身構えてしまったが、深々と頭を下げる彼女の口から出たのはある意味予想通りの言葉だった。
「昨日の返事だけど、少し待ってほしいの」
「それは“保留”ってやつか」
「そう、なるのかな。ごめんなさい」
「親父たちの事があるからだよな」
「うん。ごめんね」
「謝るなよ。昨日も言ったけどさ、一緒に暮らしてるんだし、別に焦らなくて良いと思うぜ」
「ありがと。ちゃんとお返事はするから」
「それは良いけどさ――」
「なに?」
「昨日みたいなの、あれはナシだからな」
「わ、わかってるよ! って言うか、忘れるって言ったよね⁉」
「誰にも言わねぇからそれで良いだろ。バイトねぇし、一緒に帰るか?」
「話逸らさないの!」
「はいはい。急がないと快速間に合わないぞ」
「あ! ちょっと待ってよ」
慌てて追いかけてくる琴音を置いて正門へ向かう俺。なんて言うか、こういう日常に憧れていた。
琴音との姉弟関係が変わる事なく、変わったとすれば二人の間にあった“変な壁”が無くなった事くらい。
たぶん、今はこれくらいがちょうど良いんだと思う。
少しずつ、ゆっくりと前に進めば良いさ。なんせ俺たちは一緒に暮らしてるんだ。他の奴等にはないアドバンテージがある。
それに、保留と言っても琴音の答えはもう出ているのだから。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
【朗報】俺をこっぴどく振った幼馴染がレンカノしてたので2時間15,000円でレンタルしてみました
田中又雄
恋愛
俺には幼稚園の頃からの幼馴染がいた。
しかし、高校進学にあたり、別々の高校に行くことになったため、中学卒業のタイミングで思い切って告白してみた。
だが、返ってきたのは…「はぁ!?誰があんたみたいなのと付き合うのよ!」という酷い言葉だった。
それからは家は近所だったが、それからは一度も話をすることもなく、高校を卒業して、俺たちは同じ大学に行くことになった。
そんなある日、とある噂を聞いた。
どうやら、あいつがレンタル彼女なるものを始めたとか…。
気持ち悪いと思いながらも俺は予約を入れるのであった。
そうして、デート当日。
待ち合わせ場所に着くと、後ろから彼女がやってきた。
「あ、ごめんね!待たせちゃっ…た…よ…ね」と、どんどんと顔が青ざめる。
「…待ってないよ。マイハニー」
「なっ…!?なんであんたが…!ばっかじゃないの!?」
「あんた…?何を言っているんだい?彼女が彼氏にあんたとか言わないよね?」
「頭おかしいんじゃないの…」
そうして、ドン引きする幼馴染と俺は初デートをするのだった。
迷子を助けたら生徒会長の婚約者兼女の子のパパになったけど別れたはずの彼女もなぜか近づいてくる
九戸政景
恋愛
新年に初詣に来た父川冬矢は、迷子になっていた頼母木茉莉を助け、従姉妹の田母神真夏と知り合う。その後、真夏と再会した冬矢は真夏の婚約者兼茉莉の父親になってほしいと頼まれる。
※こちらは、カクヨムやエブリスタでも公開している作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる