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上手くできなかったキスと感動するケイ兄様
上手くできなかったキスに、半泣きでケイ兄様を見つめる。
そのケイ兄様は、なにか感動したように瞳を揺らしていた。
「ラナから、私にキスをしてくれるなんて……」
「ケイ兄様?私、泡になってない……?」
泡になってしまうかもしれない恐怖に体を震わせていると、ケイ兄様が私を安心させるように背中を優しく撫でてくれた。その大きな手に、徐々にパニックになりかけていた心が落ち着いていく。
「ラナ。あんなキスじゃ、私の精気を与えられないよ。ほら、もう一度……私とキスをしましょう」
泣きじゃくる私の顎を掴んで顔を上げさせたケイ兄様は、頬をほんのりと赤く染めて顔を近づけてきた。魅惑的で麗しいケイ兄様の美貌にドキドキしながらも、私は受け入れるように瞳を閉じる。
ケイ兄様の柔らかな唇の感触と共に、温かい気が重なった自分の唇を伝って流れてきた。恐怖に怯えて震えていた体がみるみるうちに落ち着きを取り戻し、安心感に満たされていく。
「ケイ兄様……もう、大丈夫みたい」
何時もより長いキスに、呼吸と心臓が持たないと両手でケイ兄様の顔を押さえる。そんな私の両手の隙間から、ケイ兄様がとても残念そうな表情で見つめられていることに気づいて気恥ずかしさと戸惑いに逃げたい衝動に駆られる。
「ケイ兄様!色々と助けてくれてありがとう!おかげで泡にもならず、ナンパ変態サメまで撃退してくれて助かったよ」
そう誠心誠意に感謝をこめてお礼を言うと、ケイ兄様から離れて宮殿の方へ泳ぐ。だが、その私の尾びれをケイ兄様がガシッと掴んできた。まったく痛くなかったけど、恥ずかしいところを触られたような気分になる。そう、まるで、しっぽを掴まれた猫の気持ちで思わず飛び跳ねてしまった。
ケイ兄様とは思えないワイルド系イケメンの強引さを感じる行動が信じられない。恐る恐る振り返ると、そこにはこの世の終わりを見ているような顔面蒼白のケイ兄様がいて首を傾げる。
「ラナ……君の尾びれが傷だらけじゃないか。それに、よく見ると髪も乱れて……まさか、あのサメ野郎が……私の可愛いラナを……」
髪も鱗も擦り傷だらけの姿に、怒りを露わにしたケイ兄様。その顔は完全に闇に落ちていて、琥珀色の瞳しか見えない。私は慌てて、良からぬ誤解をしているケイ兄様に抱きついた。
「ケイ兄様!誤解よ‼これは、珊瑚の壁を抜ける時に怪我した傷で、髪は珊瑚に引っかかって引き千切った時に髪がボサボサに…………あ‼」
余計なことを言ってしまった気がする。
「私はてっきり、ラナが何者かに攫われてしまったと思っていたのですが……。そんなに私といることが嫌だったのですか?」
「違うよ。私はただなんとなく、外の海を見たくなっただけだよ」
「傷だらけになって、珊瑚の壁から脱走してまで見たかったのですか?」
「脱走じゃないよ。お散歩だよ」
私を全然笑ってない微笑みで見つめるケイ兄様が恐ろしい。そして、とても嫌な予感がする。
「なら、私が嫌いじゃないことを証明していただきましょうか。私の可愛いラナ」
「……………………えっ?」
その日の夜。私は唇が腫れちゃうくらい、ケイ兄様とキスすることになった。
しかも、私のボサボサなハニーピンクの髪を補修する高級魔法薬で集中トリートメントケアされ、ケイ兄様が直接、私の傷だらけの鱗に塗り薬を塗られて色々心臓が持たなくて何度か失神してしまったわ。
それで私は学んだ。もうカリギュラ効果で衝動的に行動しちゃダメだってね。
「ケイ兄様~~!尾びれだけはやめてぇ!あはははっ!くすぐったいから、やめてぇぇ」
「ラナは、自分の体を大事にしないようだからね。その分だけ、私が隅々までケアして、大事にしてあげますよ」
「はうぅ……その麗しい顔と魅力的な声で、私を甘やかさないで!溺愛しないで!じゃないと、私、ダメな人魚姫になっちゃう」
「いいじゃないですか。私にどろどろになるまで甘やかされて、ダメになってください。私の可愛いラナ」
「はうぅ……」
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