泡になって消えようとしたら麗しの海神様が溺愛してきて溺れそうです

蜜星ミチル

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脱走防止に専属メイドがつきました


「今日からあんたの専属メイドに任命されたキキだよ。あんたが脱走しないよう、しっかり見守るよう海神様に言付かっているから、無謀なことはするんじゃないよ‼」

ケイ兄様が私の脱走防止に、専属メイドをつけてしまったみたい。
朝の支度をしていた私の前に、音も立てずに現れた専属メイド。思いのほか小さくて可愛らしい蛸の獣人さんだった。

オレンジの髪をツインテールにして赤い瞳の彼女は、現代で言う美少女アイドル風な可愛さだ。その美少女が着ているメイドのスカートから見え隠れする小さなタコの足の色や形からしてメンダコの獣人かな?

「どこ見てんだい!アタイは癒し観賞用のタコじゃないよ!」
「すみませんすみません!前世のゲームで見たことがあるメンダコと同じ可愛い小さな足だったから、つい見入ってしまいました。すいません!」
「前世!?人間に騙されて頭がおかしくなっちゃったのかい?アタイは箱入り人魚のおつむまで償なわないからね‼これ以上の罰はごめんだよ!」

美少女メイドとは思えない言葉や物言いに首を傾げる。でも、急に頭の中である人物の言葉が浮かんできた。

『人間になりたいのかい? アタイにその鈴のように可愛い声を私にくれるんだったら、人間になる魔法をかけてやろう。アタイと契約するかい?可愛い人魚姫』

海の魔女クラーケンは、自分のダミ声が嫌で私を人間にする代わりに声を貰うと言っていた。大人の色香を振りまく魔女の唯一の悩みだったらしく、私に何度も契約を持ち掛けてきたのを覚えている。今世の私も憧れの『人間』になりたかったから、お互いウインウインな契約を結んだと思っていた。

「魔女さん。声が戻って、体まで縮んでしまったの?」
「あんたを騙した海神様の罰と呪いさ。まぁ、海のブラックホールに放り込まれるよりましだからね。あんたが危険な時だけ本来の姿に戻れる制約をしているから、ある程度のことは守ってやるよ」

そう私に向かって嫌々ながら深くお辞儀した魔女、いやキキの額には黒い魔石が中央に収められた額飾りが装着されていて、彼女を強い魔力で押さえつけているような圧力を感じる。
もしかしたら、魔女が悪いことをすると頭をしめつけたりするのかもしれない。いや、それよりも、魔女に聞きたいことがある。

「……え?私、騙されていたんですか?それに、ケイ兄様がそんな酷いことはしないと思いますけど」
「これだから、箱入り人魚姫は……。それに、あんた懲りもせず海神とあんな番契約なんか結んでっ――」

そこへ、朗らかな笑みを浮かべたケイ兄様が部屋へやってきた。
その瞬間に、キキが真っ青な顔で逃げるように部屋から出ていってしまう。

「……あのメイドに何かされたり、聞いたりしなかったかい?」
「いいえ、なにも」

妙なプレッシャーを感じて硬直していると、ケイ兄様がベッドに上がってきて私を膝に乗せた。もう、私を膝に乗せることが日常化してしまっている。
番契約を交わしてからこの宮殿で生活をはじめて、朝から晩まで常にケイ兄様と一緒にいる私も日常化……すると思ったけど無理だった。

前世の私が麗しすぎる国宝級イケメンのケイ兄様を意識しすぎて毎回、膝に乗せられる度にキスをする度に胸がドキドキしてしまう。

(今はケイ兄様のことを異性として見てしまうと同時に、実の兄のように慕っている自分がいて、本当にどう接したらいいかわからないのよね)

とりあえず今は、保留して切り替えないと心臓が持たない。できるだけ意識しないようにしないと。ケイ兄様とは別の関係をイメージして、考えてみよう。
そこで浮かんできたのは、大きな体の海の生き物に寄り添う小さな生き物たちだ。

(そうよ。私はケイ兄様と併泳する小魚と思えばいいのよ!そう考えれば、ケイ兄様のそばにいても変な意識をしないかもしれないわ。私はウミヘビに寄り添うコガネシマアジ。アオウミガメと寄り添うコバンザメ……)

そう目を閉じて自分に暗示をかける。
すると、唇にふわりとした感触がして目を開けると、そこには、甘い笑みを浮かべたケイ兄様がいた。

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