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家族達による宣戦布告
家族たちの雰囲気からして、私が既に海神様の番であることをご存じなさそうだ。
ケイ兄様は、お母様たちにしっかりと報告していると思っていた。
「お母様たちは、私がどうして海神様の宮殿にいるとわかったの?」
お母様たちは、私の状況をどこまで把握しているのか知りたい。すると、お母様が思い出したように怒りはじめた。
「あの根暗海神ときたら!ラナが泡になって消えてないことも、海神の宮殿にいることも知らせてくれなかったのですよ!普通、保護者に連絡を入れるのはマナーじゃないのかしら?」
「そうですよね。ホウレンソウは一番大事なことですお母様」
あの忠実で真面目なケイ兄様が、お母様たちに『報告』『連絡』『相談』のホウレンソウをしていないなんて驚きだ。
「そしたら先日、帝国周辺を巡回していた兵士たちから報告があったのです。海の生き物たちがある人魚について訪ねてきたと」
居眠り亀仙人
『ピンクハニーの人魚ちゃんの寝顔が天使すぎてのう。よければ、その天使人魚ちゃんを我々の愛孫として迎え入れたいのじゃが』
ウミヘビ達の井戸端会議代表ウミヘビの獣人夫人
『あのピンクハニーの人魚姫をウチの息子と番を前提にお付き合いさせたいので是非、お見合いをさせてくださいまし!』
魚達代表取締役のマンボウ
『愛くるしいハニーピンクの人魚姫を泡泡の海の森に置いてきてしまったのですが。その後、どうなりました?爆睡していて、私達では起こせなかったのです』
宿探しが苦手なヤドカリ
『親切で優しいピンクの人魚姫に、新しい部屋を探してくれたの!超嬉しいカリ!』
そこで私は理解した。その話に出てくる人魚はどう考えても海神様の宮殿から脱走……いいえ。お散歩していた私であり、出会った海の生き物達だと。
あの日出会った、たくさんの色鮮やかな魚達やウミガメ、ウミヘビさん達や宿探しに困っていたヤドカリさんだろう。海も世間は広いようで狭いのかもしれない。
「ハニーピンクの髪は、私の赤い髪と夫の白銀の髪を同時に受け継いだ娘であるラナしかいない。そう考えた私は、偵察隊を派遣して、海の生き物達から聞き込みをさせたの。
その結果、海神の宮殿から傷だらけになりながらも、必死に脱出しているラナを見かけたと。でも、また連れ戻されたとカクレクマノミが怯えながら教えてくれたそうよ……」
「……え?」
そこで、怒り心頭した姉達が顔を赤くして私の周りを泳ぎはじめた。
「私達の妹を監禁するなんて許せない。毒入りクッキーを食べさせないと気が済まない」
「そうね。私が調教する必要があるかもしれないわ」
「海神に被害報告書と損害賠償請求書を作成しないと……」
「……グスッ……海神……呪ってやるわ……」
そう、毒入りクッキーを両手に抱えるケイラ姉様と口輪と鞭を手にしたリコ姉様。被害報告書と損害賠償請求書を作成しはじめたモア二姉様と泣きながら呪いの人形に釘を打とうとしているミリ姉様。そして……
「あの根暗海神から囚われた娘を救うために、私は舞踏会の招待状と見せかけて貴方を召喚する魔法書を送ったんですよ。そして、人魚帝国立ち入り禁止令を送りつけてやりましたわ‼」
「宣戦布告だ……」
両親の闇を纏った笑みを見て私は心に決めた。
(ケイ兄様と番になったことは、家族のみんなに黙っておこう……)
*・:*ೄ‧·*°・
海神に敵意剥き出しの両親と姉達にあたふたしているラナの背後で、静かな寝息を立てていたマリエはゆっくりと目を開ける。
その開いて現れた美しい青い瞳にラナを映すと、驚いたように目を大きく見開く。
「七海先輩……。泡になって、消えてないじゃないっすか!よかったぁ……!」
誰も気づくことができないほどの小さな声で喜ぶマリエの瞳から大粒の涙が浮かび、海中に溶けていった。
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