22 / 32
無防備なケイ兄様の唇をこっそり奪っちゃいました
いつから私の部屋に忍び込んできたのだろう。
乙女ゲームの攻略してゲットできるスチルみたいなケイ兄様の拝みたくなるほどに美しい寝顔に目が釘付けになる。
しかも、少し離れていただけなのに、久々に再会したような感動と喜びが湧き上がってきた。その喜びにわんこみたいに人魚のしっぽをフリフリしてしまう。
(それに、ケイ兄様の無防備な寝顔を堪能するチャンスだ)
私はスマホがない代わりに脳裏に焼き付けてみせると、瞬きせずにケイ兄様をこれでもかとじっと見つめる。ケイ兄様の宮殿でも一緒に添い寝して貰ったりしていたはずなのに、今日は何故か胸がドキドキして離れがたく感じるのはなんでだろう?
(ケイ兄様を実の兄としてもっと好きになったからかな?それとも、泡になって消えるかもしれない危機的状況で現れたケイ兄様に吊り橋効果が……あぁ!そうだったわ!泡になって消えちゃうんだった‼)
私は慌ててケイ兄様の唇に唇を重ねた。
柔らかい唇の感触、そこからケイ兄様の精気が伝わってきて恐怖が徐々に薄らいでいく。
いつもならここで胸が温かくなって落ち着いていくはずなんだけど。その真逆に胸が高鳴って妙な欲まで沸いてきて、そんな自分に困惑する。
(ダメよ私!無防備に寝ているケイ兄様に、邪なことを考えるなんていけないことだわ)
自分の小悪魔な欲を払いのけるように首を横に振る。だけど、間近にあるケイ兄様の瑞々しくも魅惑的すぎる唇に押さえられないほどの欲が溢れて堪らなくなってしまった。
「もう一回くらい、してもいいよね。ケイ兄様はとってもお優しいから許してくれるはずよ……」
私は起きないことをいいことに、また眠っている完全無防備なケイ兄様にこっそりキスをする。冷たいのに温かく感じるケイ兄様の唇に夢中になってしまった私は、何度も何度も触れるだけのキスを落とした。
(このままずっと、キスしていたいな……。でも、これ以上してしまうと、ケイ兄様を雌豹の如く襲ってしまうかもしれない)
そんな私に、ケイ兄様が幻滅して愛想を尽かされるのはいやだ。なので、最後にもう一回だけキスして終わろうと思う。
そうして最後のキスとばかりに、ケイ兄様の唇にキスを落とす。その時、うっかりチュッというリップ音がついてしまった。その音にビックリした私は、慌ててケイ兄様から離れようと―――っ⁉
ケイ兄様の大きな手が私の顔を包み込んだかと思うと、大きく口を開けたケイ兄様に唇を奪われてしまった。今までのキスとは明らかに違い、まるで物理的に食べられてしまいそうなケイ兄様の深くて甘いキスに意識がふわふわしてきた。
獲物を捕らえたような瞳に私を映すケイ兄様は、とっても優艶で胸キュン通り越してキュン死寸前だ。
「私に可愛らしいキスをたくさんしてきたラナが悪いんですよ」
「ケイ兄様…………もう、息が……溺れちゃう……」
「ラナ……君の甘い唇をもっと味あわせてください……」
耳元でそう甘く囁かれ、またケイ兄様とキスをしようとしていると……
私のハニーピンクの髪から、ちょうど日本硬貨一円玉サイズの可愛らしいメンダコがプカプカと視界を通り過ぎていった。かと思うと、ケイ兄様の顔面に勢いよく激突する。
ミニミニサイズのメンダコなのに、突撃の威力は百倍だったのかケイ兄様が吹き飛び、壁際まで後退してしまった。
「アタイの前で、イチャイチャしてんじゃないよ根暗海神‼アタイは愛する旦那に会えずに、お花畑なおこちゃま人魚姫の護衛をさせられてストレスマックスだっていうのに……。あんまり調子乗ってると、アタイの呪いで××を××して××……」
小さなメンダコが徐々に大きくなっていき、元魔女であるメイドのキキが現れた。小さなタコ足を苛立たし気にバシバシ床を叩きつけブチギレしている。
途中からピーと効果音が必須の単語が聞こえたような気がしたけど。気のせいよね。そう首を傾げていると、ケイ兄様がそっと私の両耳を両手で塞いでしまった。
「ラナの前で卑猥な言葉は控えてください。それに、君は私の配下であることを忘れたのですか?」
「うるさいよ!さっさと帰んな‼」
そうしてキキが魔法の呪文を唱え、部屋の中央に紫色に輝く魔方陣を出現させた。
ケイ兄様は不満げな表情でキキを睨みつけながらも、その魔方陣に入り込んだ。そのケイ兄様の腕に私は抱きつく。私を置いて行こうとするケイ兄様を不安そうに見上げる。
「ラナ、そんな捨てられた子アザラシみたいな顔をしないでください。帰るのが辛くなります」
「私も一緒に帰っちゃダメなの?」
「うっ……そんな可愛い顔で見つめられると、このまま攫ってしまいたくなりますね」
望むところですと頷いて、ケイ兄様の胸に顔を摺り寄せる。すると、ケイ兄様の頬が赤くなり、苦しそうな顔で私を凝視してきた。このまま甘えてお持ち帰りされようとしていると、キキが定員オーバーだよと釘を刺される。
転送の魔法陣が一人だけなら仕方ない。だけど、寂しい気持ちでいっぱいになって俯いていると、ケイ兄様が私のおでこにおでこをくっ付けてきた。
「明日の舞踏会に、必ずラナを迎えにいきます」
「本当!」
「はい。人魚帝国の人魚姫に相応しい番として、貴方を迎えに行きますよ。楽しみにしていてくださいね」
その言葉を最後に、魔法陣の紫の光と共にケイ兄様は消えてしまった。
「相応しい番……?」
「覚悟しておいた方がいいよ。あの数万年引きこもっていた根暗海神の本気の本気。しかも、初恋だ。この海の歴史に残る、盛大な求婚になるだろうねぇ……」
「えっ?盛大な求婚ってどういうこと⁉魔女さん?」
「アタイは知らないよ。海の怪物に求愛されたことはあるけど、海の神様に愛されたことはないからねぇ」
他人事のように話すキキは、またミニミニサイズのメンダコに戻り私の髪の中へ戻ってしまったのだった。
「魔女さん⁉……あれ?いや、ちょっと待って。私の髪で蛸壺を作ろうとしてない⁉」
「気のせいだよ」
「絶対、気のせいじゃない‼」
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。
しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。
私たち夫婦には娘が1人。
愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。
だけど娘が選んだのは夫の方だった。
失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。
事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。
再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
王女様は温かいごはんが食べたい ~冷えた王宮料理を変えたら、オープンキッチンと政略婚約がついてきました~
しおしお
恋愛
異世界の王女リリアーヌは、前世の記憶を持つ転生者。
豪華絢爛な王宮で暮らし始めた彼女だったが、ひとつだけどうしても耐えられないことがあった。
――食事が、冷めているのだ。
どれほど立派な料理でも、ぬるいスープや冷めた肉ではホッとできない。
「温かいごはんが食べたい」
そのささやかな願いを口にしたことから、王宮ではなぜか大騒動が巻き起こる。
地下厨房からの高速搬送。
専用レーンを爆走するカートメイド。
扉の開閉に命をかけるオープナー。
ついには食堂に火を持ち込むオープンキッチンまで誕生して――!?
温かさは、ホッとさせてくれる。
それは料理だけではなく、人との距離まで少しずつ変えていくものだった。
冷えた王宮に湯気と笑顔を取り戻す、
食と温かさをめぐる宮廷日常コメディ!
-
王命での結婚がうまくいかなかったので公妾になりました。
しゃーりん
恋愛
婚約解消したばかりのルクレツィアに王命での結婚が舞い込んだ。
相手は10歳年上の公爵ユーグンド。
昔の恋人を探し求める公爵は有名で、国王陛下が公爵家の跡継ぎを危惧して王命を出したのだ。
しかし、公爵はルクレツィアと結婚しても興味の欠片も示さなかった。
それどころか、子供は養子をとる。邪魔をしなければ自由だと言う。
実家の跡継ぎも必要なルクレツィアは子供を産みたかった。
国王陛下に王命の取り消しをお願いすると三年後になると言われた。
無駄な三年を過ごしたくないルクレツィアは国王陛下に提案された公妾になって子供を産み、三年後に離婚するという計画に乗ったお話です。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
【完結】「お前とは結婚できない」と言われたので出奔したら、なぜか追いかけられています
22時完結
恋愛
「すまない、リディア。お前とは結婚できない」
そう告げたのは、長年婚約者だった王太子エドワード殿下。
理由は、「本当に愛する女性ができたから」――つまり、私以外に好きな人ができたということ。
(まあ、そんな気はしてました)
社交界では目立たない私は、王太子にとってただの「義務」でしかなかったのだろう。
未練もないし、王宮に居続ける理由もない。
だから、婚約破棄されたその日に領地に引きこもるため出奔した。
これからは自由に静かに暮らそう!
そう思っていたのに――
「……なぜ、殿下がここに?」
「お前がいなくなって、ようやく気づいた。リディア、お前が必要だ」
婚約破棄を言い渡した本人が、なぜか私を追いかけてきた!?
さらに、冷酷な王国宰相や腹黒な公爵まで現れて、次々に私を手に入れようとしてくる。
「お前は王妃になるべき女性だ。逃がすわけがない」
「いいや、俺の妻になるべきだろう?」
「……私、ただ田舎で静かに暮らしたいだけなんですけど!!」