25 / 32
番宣言と忍び寄る闇
しおりを挟む「大丈夫ですよ。私はそう簡単に倒されるほど、弱い海神ではありませんからね」
穏やかな微笑みを湛えたケイ兄様の背後から青い光を放つ魔方陣が現れたと思うと、神々しい光を放つ三叉槍が出現する。その威圧すら放つ三叉槍を構えたケイ兄様が一振りした瞬間にお母様が放った矢は破壊され、巨大な手が消滅してしまった。
「私を誰だと思っているんだ。人魚の女帝と海の精霊王よ」
ケイ兄様の今まで聞いたことがない低い声。闇を纏った微笑みに震え上がる。いつものケイ兄様じゃない雰囲気に、そっとケイ兄様の胸に抱きついて見上げた。
「ああ、私の可愛いラナ。怖がらせてしまったようですね」
私を安心させるように抱き返され、頭を優しく撫でられた。それにホッとする。
(これ以上、ケイ兄様が誤解されないようにしないと……)
そう思った私は、周りに見せつけるようにケイ兄様の唇にキスを落とした。
「お母様、お父様。私、ケイ兄様と番なの!だから、私のケイ兄様に手を出さないで‼」
ホールにいるケイ兄様のファン化した乙女達を牽制しつつも、胸を張ってそう宣言する。そして、静まり返る舞踏会会場。推しアイドル結婚にロスしてしまったような乙女達の自暴自棄な姿。ハンカチを噛みしめてケイ兄様を睨みつける殿方達!?
姉達は悲鳴を上げ、フリーズして凍り付いたお父様。あまりの衝撃に、泡を吹いて倒れたお母様に首を傾げる。
「あれ?そんなに驚くことだった?」
「ラナ……。まさか、君に先を越されるなんて思いませんでした」
頬をほんのり赤らめて瞳を潤ませたケイ兄様に、今頃だけど自分の告白のような恥ずかしい発言だったことに気がついて顔に熱が集中していく。そんな私の赤くなった額に、キスを落とされてしまった。
「君に求婚して、正式に君の番になろうとしていたのですが。ラナはいつも私の予想を超えていきますね。まぁ、そんなラナが好きなんですけれど」
「そっそそんな、直球で……ケイ兄様、後ろ……」
甘い笑みを向けて顔を近づけ、また私にキスしようとしたケイ兄様の背後に、衝撃から復活した家族達が襲いかかろうとしていた。
*・:*ೄ‧·*°・
突如現れた海神様と女帝の末娘である人魚姫の番宣言により、騒めく舞踏会の会場にある柱の影に蠢く闇があった。
その闇から、海神の懐で幸せそうに微笑むラナを見つめている者がいる。
【哀れな人間の王子よ。お前の愛する人魚姫は、海神の番になったようだな】
「彼女は俺の人魚姫だ。俺の正妻に相応しい女なんだ。番なんて、なるはずがない」
【そうか?だが、とても幸せそうに笑って、海神に抱かれているじゃないか】
「違う‼彼女は海神に魅了をかけられているに違いない。彼女は泡になってもいいほどに、俺を愛してくれた人魚姫なのだからな!あの悪しき海神から救い出さなくては……」
【お前は本当に……ああ、我の力で愛する人魚姫を救い出してやろうじゃないか】
「海神を海の奥深き闇の底へ投げ捨ててやる」
【海神を海の奥深き闇の底へ投げ捨ててやる】
重なる二つの闇の声が、誰もいない柱の陰で響き渡るのだった……
0
あなたにおすすめの小説
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】
かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。
名前も年齢も住んでた町も覚えてません。
ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。
プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。
小説家になろう様にも公開してます。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
【完結】冷徹執事は、つれない侍女を溺愛し続ける。
たまこ
恋愛
公爵の専属執事ハロルドは、美しい容姿に関わらず氷のように冷徹であり、多くの女性に思いを寄せられる。しかし、公爵の娘の侍女ソフィアだけは、ハロルドに見向きもしない。
ある日、ハロルドはソフィアの真っ直ぐすぎる内面に気付き、恋に落ちる。それからハロルドは、毎日ソフィアを口説き続けるが、ソフィアは靡いてくれないまま、五年の月日が経っていた。
※『王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく。』のスピンオフ作品ですが、こちらだけでも楽しめるようになっております。
「転生したら推しの悪役宰相と婚約してました!?」〜推しが今日も溺愛してきます〜 (旧題:転生したら報われない悪役夫を溺愛することになった件)
透子(とおるこ)
恋愛
読んでいた小説の中で一番好きだった“悪役宰相グラヴィス”。
有能で冷たく見えるけど、本当は一途で優しい――そんな彼が、報われずに処刑された。
「今度こそ、彼を幸せにしてあげたい」
そう願った瞬間、気づけば私は物語の姫ジェニエットに転生していて――
しかも、彼との“政略結婚”が目前!?
婚約から始まる、再構築系・年の差溺愛ラブ。
“報われない推し”が、今度こそ幸せになるお話。
転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。
ラム猫
恋愛
異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。
『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。
しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。
彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる