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断罪された者達の末路(王子視点)
俺は海の凍えるような冷たさに目を覚ました。
視界に映るのは自分の数十倍はある巨大な魚達の群れで、その殆どの魚が濁った瞳で泳ぎ続けている。そんな俺の前に一匹の小さな海蛇がやって来て、俺の腕に巻き付いてきた。
恐怖に怯えてガタガタと震える海蛇がじっと先の海を見つめて、いっそう真っ青になっていく。その視線の先を見上げるとーーーーっ⁉
「おやおや?やっとお目覚めのようですね人間の王子」
「ヒッ……‼」
自分を一口で食べてしまいそうな赤髪の巨人が、透明のガラス越しに俺を見つめている。
俺はいつの間に、巨人の国に足を踏み入れていたのか。
(早くこの巨人から逃げなくては……‼)
そう思うも何故か体が上手く動かせない。まるで自分の体ではないような慣れない感覚がする。しかも視界が狭く、自分の手も足も見えない。
わけがわからずに茫然としていると、巨人が何かを思い出したのか。俺の頭上から巨大な腕を差し入れ、小さな金色の冠を俺の頭に被せた。
「アクアリウムには、たくさんの罪人が雑魚になっていますからね。見分けるためにもしっかり頭に被っていてくださいね。人間の王子……いいえ、イエローコリスの王子」
その言葉を肯定するかのように、ガラスに映る黄色い小さな魚の姿に戦慄する。
小さな金色の王冠を被る雑魚になり果てた己の姿に、恐怖と絶望が押し寄せ震え上がった。
よく周りを確認すると、ここは巨大な水槽の中であり。男が巨人なのではなく、自分自身が小さくなっていたことに怒りが込み上げる。
「よくもこの俺を雑魚に変えてくれたな‼早く俺を元の姿に戻せ‼この邪悪なる海の魔物め!」
「それはワタクシメのセリフですよ?」
男の体から強い殺気が溢れだし空気が一瞬で凍りつく。
どこか神々しさまで感じる恐怖の化身に、周りにいた雑魚たちは怯えたように水槽の端により身を寄せ合い震え上がっていた。その中に混ざろうとするも、男の鋭い瞳に身動きが取れない。
「王子、お尋ねしますが。これは貴方の所有物ではありませんか?」
そう懐から取り出した物は以前、隣国の姫と夜を過ごした翌日に失くしていた海中時計だった。自分の所有物で間違いないと頷くと、額に青筋を立てて懐中時計を軽く粉砕してしまう。
「やはり、そうでしたか……私の愛する妻にはお仕置きが必要のようです。うんと甘いお仕置きをね……。でも、その前に、ワタクシメの愛してやまない妻に触れた邪悪なる王子と海蛇に罰を与えなければなりません」
穏やかに微笑んでいるが、まったく笑っていない。むしろ、今にも呪い殺されそうな身の危険を感じる。
「そうでした。王子はとっても雌が大好きでしたよね。実はこのアクアリウムには海神様に罰せられた悪しき深海の魔女達が服役中なのです。たまには、囚人に飴を与えることも必要ですからね。貴方にその飴となっていただきましょう」
すると、その男の言葉を聞きつけた世にも恐ろしく醜い深海魚が、アクアリウムの闇の底から這い出してきた。王子を舐めるような視線を向けている。
「嫌だ……やめてくれ‼……お願いだ、頼む……‼」
そうして俺は、たくさんの恐ろしい雌の深海魚達に囲まれ、アクアリウムの深い闇に引き込まれていった…………
*・:*ೄ‧·*°・
「ずいぶんと楽しそうだな王神よ。いや、今は海神の専属執事のセヴァンだったか」
そこへ一人のスーツ姿の男が現れセヴァンに歩み寄る。
白銀の前髪をオールバックにさせオーダーメイドのスーツを着こなす男に、セヴァンは歓迎するように微笑んだ。
「久しぶりですね星神。彼女との異世界転生ライフは順調のようでなによりです」
「君のギフトのおかげだ。彼女はまだ私を思い出していないようだが。問題ない。彼女は必ず俺を好きになるはずだからな。いや、好きにさせてみせる」
「その自信家のところは変わりませんね」
信頼する友との久々の再会に喜んでいたが、あることに気づいてセヴァンは申し訳なさそうに眉を寄せた。
「今回は君達の世界に干渉してすみませんでした」
「いいや、ラナは彼女と深い関わりがあった。君があちらとことらを繋げるきっかけとして彼女限定のアプリを媒体にしたのはいい選択だった。彼女はアプリゲームが好きだったからな。まぁ、のめり込みすぎて死にかけたがな」
「はい。私もひやひやものでしたよ。まさか海神の運命の番はあちらにいて、しかもその魂が貴方が愛した人魚の双子の姉妹だったなんて……」
本来、運命の番は互いに同じ世界に生れ落ちることになっていた。だが、自分のギフトによって禁忌の恋人達が結ばれる異世界に転生したことにより、人魚の双子の妹は片割れを失った悲しみにより命を落としてしまった。
そして片割れである姉のいる世界へ魂は転生するも、運命の番の居ない世界で長く生きることは難しい。ラナが前世、不慮の事故にあったのは、一刻も早く番である海神に巡り合うためのギフトでもあった。
「王神として生きるのは本当に辛いものです。だから、今の執事生活がやめられないのですよね。それに、ワタクシメにも愛する喜びを知ることができましたから。ああ!そうでした。私の愛してやまない妻に、とっても甘いお仕置きをしなくてはなりません」
地下のアクアリウムから出ようとしていたセヴァンが、振り返って現代に帰ろうとしていた星神に釘を刺す。
「星神。くれぐれも秘密は守ってくださいね」
「君がオトヒメエビの執事ではなく、生と死を司る王神だということをか?それとも、海神の運命の番をギフトによってこちらに転生させたことか?」
「両方ですよ」
人差し指を口に当てて、どこか闇を感じる微笑みを湛えるセヴァンの姿に。コイツを絶対に敵に回してはいけないと星神は思うのだった。
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