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ss2「サンタさんの正体は」
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しおりを挟む「初めまして。アシュリー・シャーロックです。
いつもテオがお世話になっています。」
玄関前、振り向かなくても後ろの二人が固まったのを理解した。
…普通そうなるよね…。
予想の範疇なので何も驚くことはない。こんな人間離れした美しさが目の前にあれば、誰だって何も言えなくなるだろう。
当たり前の反応だ。しかし、少し傷ついた表情を浮かべた彼に、テオは慌てて場を取り繕った。
「アシュリーは僕のものだから、どんなに美しくても絶対に手を出さないでくださいね?」
多分彼はまだ、その美しい金色の髪も、アクアマリンの色をしたテオを惹きつけてやまない瞳も、周りから見たら化け物に見えると、勘違いしているのだろう。
だから、そうではないと彼に知らせる雰囲気を作る必要があった。
もちろん、理由はそれだけではない。
いくら男だとは言え、このハイスペックな二人のどちらかが彼に好意を持ったとしたらほぼテオに勝ち目はなく、牽制する意図もある。
「…いや、無理だ…俺はこんなに美しいものに触れる気にはならない… 」
「私もだ… 」
本気で返す二人に、冗談だと思ったのかアシュリーが口元をほころばせふふっと笑った。
後ろから尊い、という思いが痛いほどに伝わってくる気がした。美しすぎて触るのも阻まれる、という言葉は、テオには全く冗談に聞こえず、二人の意見に妙に納得してしまう。
「ご冗談を。テオに合わせなくても大丈夫ですよ。この子は俺を買い被りすぎなんです。中へお入りください。」
彼らを家の中へと案内する。ここまでの他人を家にあげるなんて初めてだから、それだけで緊張してしまう。
ちなみに、テオは今回の話に乗り気ではなかった。ただ、アシュリーとクリスマスに過ごすことができないのは困るから、どうしようと相談を持ちかけただけだ。
意外にもアシュリーは、なぜだか少し形の良い眉を歪めた後に、じゃあ俺が休みを取って行くよと言い出した。けれど、テオはそれには反対だった。
理由は二つ。忙しいアシュリーに無理をさせたくないからと、その美しい髪と瞳を隠した彼を、紹介するのが嫌だったからだ。
それを言うと、じゃあうちに呼んでもいいよ、とアシュリーは言ってくれたのだった。
なぜそんなに積極的に彼が会おうと言い出したのか、テオには未だによくわからない。
かくして、絶対に他の人に情報を漏らさないことを約束した上で、二人を自宅へと連れてきたのだった。
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