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ss2「サンタさんの正体は」
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※ここからアシュリーsideに移行します
ふぅーっ、と、空を仰ぎため息をついた。
予想外の出来事に、予想していた時間の倍より長くかかったオペは、なんとか成功した。これでやっとテオと幸せな聖夜を過ごすことができる…
あとを看護師さん達に任せ、部屋を後にした。
「お疲れ様、アシュリーさん。」
手を洗いながらピアスをつけ直していると、ノアがこちらに向かって歩いてくる。
まだ帰れていなかったのか。カルロも待っているだろうに。
「ありがとう。ノアも、早く帰せなくてごめんね。」
「ああ、それはいいんですが… 」
なぜかノアは言い出しにくそうに目を泳がせる。早く帰りたいだとか、そういうことを気まずそうにいう人ではない。だからこそ、不穏な空気にひやりとした。
「……何かあった?」
「実はテオが… 」
ノアに連れられて案内された一室に、テオが苦しそうに眠っている。なにやらうなされているようだ。そして、額にはびっしょりと汗をかいていた。
「一応措置はしたんですけど…
報告が遅くなってごめんなさい。」
謝るノアに、自分が今それほどまでに余裕のない表情をしていることを悟り、反省する。ノアだって、アシュリーに気をつかってくれたのだ。テオだって、おきていたらそう望んだはずだ。
「ノアに診てもらったなら、安心だね。今日は帰っていいよ。」
「あ、あと、テオを運んでくれた偉そうな人2人は第3に通しておきました。多分寝ています。」
「うん、ありがとう。」
それだけ残すと、ノアは着替えて帰っていった。
今日は今までで3本の指に入るほど忙しい1日だった。だから、ルバートもロイもそれぞれまだ忙しそうにしている。
「…ごめ…なさ… 」
悲痛な声にその方を向くと、テオが顔を歪めてそう呟いている。苦しそうな、痛々しい声だった。
その目尻はじっとりと濡れていて、固く結ばれた唇は歪んでいる。
足の方に目を移すと、木型で固定されている。それを丁寧に外し触ると、折れて腫れていることがわかった。
なにがあったのだろう。こんなに悲痛な声の御免なさいが、どうして彼の口から出るのだろう。それはおそらく、過去の傷をえぐるような出来事があったからだ。
そう思うと、心が痛んだ。
ずっとずっと、その刻まれた傷を少しでも埋めようと愛情を注いできた。こんなに無垢で優しい子が謝る理由など、どこにもないのに。
跡がついてしまいそうなほど固く握られた手から、丁寧に一本一本指を外していく。そしてテオの左手と自分の左手を握りあわせると、アシュリーはもう片方の手で優しく彼の髪を撫でた。
大丈夫だよ、怖くないから。
次第に彼の表情がほころんでいく。よかった、もう苦しそうじゃない。
ピク、と彼の瞼がわずかな動きを見せた。
涙に濡れた大きな目がぱちりと開く。綺麗なオレンジ色。
「おはよう。」
優しく微笑みかけると、彼は2回、大きく瞬きをした。そして、
「あれ、僕… 」
自分の状況を見て、また瞳を潤ませた。
ふぅーっ、と、空を仰ぎため息をついた。
予想外の出来事に、予想していた時間の倍より長くかかったオペは、なんとか成功した。これでやっとテオと幸せな聖夜を過ごすことができる…
あとを看護師さん達に任せ、部屋を後にした。
「お疲れ様、アシュリーさん。」
手を洗いながらピアスをつけ直していると、ノアがこちらに向かって歩いてくる。
まだ帰れていなかったのか。カルロも待っているだろうに。
「ありがとう。ノアも、早く帰せなくてごめんね。」
「ああ、それはいいんですが… 」
なぜかノアは言い出しにくそうに目を泳がせる。早く帰りたいだとか、そういうことを気まずそうにいう人ではない。だからこそ、不穏な空気にひやりとした。
「……何かあった?」
「実はテオが… 」
ノアに連れられて案内された一室に、テオが苦しそうに眠っている。なにやらうなされているようだ。そして、額にはびっしょりと汗をかいていた。
「一応措置はしたんですけど…
報告が遅くなってごめんなさい。」
謝るノアに、自分が今それほどまでに余裕のない表情をしていることを悟り、反省する。ノアだって、アシュリーに気をつかってくれたのだ。テオだって、おきていたらそう望んだはずだ。
「ノアに診てもらったなら、安心だね。今日は帰っていいよ。」
「あ、あと、テオを運んでくれた偉そうな人2人は第3に通しておきました。多分寝ています。」
「うん、ありがとう。」
それだけ残すと、ノアは着替えて帰っていった。
今日は今までで3本の指に入るほど忙しい1日だった。だから、ルバートもロイもそれぞれまだ忙しそうにしている。
「…ごめ…なさ… 」
悲痛な声にその方を向くと、テオが顔を歪めてそう呟いている。苦しそうな、痛々しい声だった。
その目尻はじっとりと濡れていて、固く結ばれた唇は歪んでいる。
足の方に目を移すと、木型で固定されている。それを丁寧に外し触ると、折れて腫れていることがわかった。
なにがあったのだろう。こんなに悲痛な声の御免なさいが、どうして彼の口から出るのだろう。それはおそらく、過去の傷をえぐるような出来事があったからだ。
そう思うと、心が痛んだ。
ずっとずっと、その刻まれた傷を少しでも埋めようと愛情を注いできた。こんなに無垢で優しい子が謝る理由など、どこにもないのに。
跡がついてしまいそうなほど固く握られた手から、丁寧に一本一本指を外していく。そしてテオの左手と自分の左手を握りあわせると、アシュリーはもう片方の手で優しく彼の髪を撫でた。
大丈夫だよ、怖くないから。
次第に彼の表情がほころんでいく。よかった、もう苦しそうじゃない。
ピク、と彼の瞼がわずかな動きを見せた。
涙に濡れた大きな目がぱちりと開く。綺麗なオレンジ色。
「おはよう。」
優しく微笑みかけると、彼は2回、大きく瞬きをした。そして、
「あれ、僕… 」
自分の状況を見て、また瞳を潤ませた。
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