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すれ違い(静留side)
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「午後から約束ができてしまって、夜遅くまで出ることになってしまって…。 」
「大丈夫ですよ。真鍋先生がいたときは、いつも朝晩来てましたから。」
「すみません…。」
__そっか、東弥さん、おそくなるんだ…。
東弥と梨花の話す声に少しだけ耳を傾けながら、静留はその内容に落胆した。
シャワーを浴びた後髪を乾かしてもらったり、一緒に夕食をとったり、寝る前に抱きつかせてくれたりと、東弥は静留を幸せにしてくれるのに。
「いいんですよ。あっ、そういえば、新学期が始まったら東弥さんはどうするんですか。」
__新学期…?東弥さん、がっこうなのかな…?
学校の新学期だとしたら、もう直ぐ始まるはずだ。練習をしながら、東弥たちの話が気になってもはや指を動かしているだけの状態になってしまう。
「土日や授業が早く終わる日に、夜はここに来ます。平日は自宅から通おうかと…。」
__…えっ?
“自宅から”、と言う言葉にショックを受けて、盛大に指を滑らせてしまった。
不協和音のフォルテシモがリビングに響いて空気を壊す。
「和泉くん、どうした?」
多分二人は静留が会話の内容を聞いていると思っていない。
梨花が慌てたように尋ねてきて、静留は言い訳を考えた。
「…あっ…、ゆび、すべらせて…。つめ、伸びてるのかも…。切ってくる。」
爪を切ってくる、と言い訳したにもかかわらず、静留は洗面所に駆け込み、鍵をかけて体育座りをした。
そして深呼吸をした後、頭の中を整理しようと試みる。
東弥は今、西弥の代わりに静留と一緒にいてくれる。その理由は多分、西弥を失った静留をかわいそうに思ってくれているからだ。
しかしコンサートでしっかりと西弥に別れを告げた静留は、もう彼がいないことを受け入れることができて、それでも今苦しくないのは紛れもなく東弥のおかげで。
__…あれ、でも、ずっと西くんのかわりをしていたら…。
静留ははっと気づいてしまった。
東弥には東弥の人生があって、それは決して静留に費やしていいものではない。西弥として静留と一緒にいる時間は、彼に何の意味も生み出さないのだから。
なら、ずっと一緒にいられるわけがない。静留が東弥を西弥とみなし続けていても、彼はいずれ静留から離れていく。
「東弥さん…。」
外に漏れない程度の声で、小さく口に出してみる。
名前を呼ぶだけで心が温かくなって、それと同時に少し寂しい気持ちになった。
これから別々に住むようになって、しばらくしたら多分もう東弥とは会えなくなって。そうしたら静留は一人だ。正確には梨花がいるが、それでも心の拠り所は失ってしまう。
__わがまま言っちゃだめだよね…。
東弥と一緒にいられなくなることは悲しいが、それを止める権利など、静留はかけらも持っていない。
「大丈夫ですよ。真鍋先生がいたときは、いつも朝晩来てましたから。」
「すみません…。」
__そっか、東弥さん、おそくなるんだ…。
東弥と梨花の話す声に少しだけ耳を傾けながら、静留はその内容に落胆した。
シャワーを浴びた後髪を乾かしてもらったり、一緒に夕食をとったり、寝る前に抱きつかせてくれたりと、東弥は静留を幸せにしてくれるのに。
「いいんですよ。あっ、そういえば、新学期が始まったら東弥さんはどうするんですか。」
__新学期…?東弥さん、がっこうなのかな…?
学校の新学期だとしたら、もう直ぐ始まるはずだ。練習をしながら、東弥たちの話が気になってもはや指を動かしているだけの状態になってしまう。
「土日や授業が早く終わる日に、夜はここに来ます。平日は自宅から通おうかと…。」
__…えっ?
“自宅から”、と言う言葉にショックを受けて、盛大に指を滑らせてしまった。
不協和音のフォルテシモがリビングに響いて空気を壊す。
「和泉くん、どうした?」
多分二人は静留が会話の内容を聞いていると思っていない。
梨花が慌てたように尋ねてきて、静留は言い訳を考えた。
「…あっ…、ゆび、すべらせて…。つめ、伸びてるのかも…。切ってくる。」
爪を切ってくる、と言い訳したにもかかわらず、静留は洗面所に駆け込み、鍵をかけて体育座りをした。
そして深呼吸をした後、頭の中を整理しようと試みる。
東弥は今、西弥の代わりに静留と一緒にいてくれる。その理由は多分、西弥を失った静留をかわいそうに思ってくれているからだ。
しかしコンサートでしっかりと西弥に別れを告げた静留は、もう彼がいないことを受け入れることができて、それでも今苦しくないのは紛れもなく東弥のおかげで。
__…あれ、でも、ずっと西くんのかわりをしていたら…。
静留ははっと気づいてしまった。
東弥には東弥の人生があって、それは決して静留に費やしていいものではない。西弥として静留と一緒にいる時間は、彼に何の意味も生み出さないのだから。
なら、ずっと一緒にいられるわけがない。静留が東弥を西弥とみなし続けていても、彼はいずれ静留から離れていく。
「東弥さん…。」
外に漏れない程度の声で、小さく口に出してみる。
名前を呼ぶだけで心が温かくなって、それと同時に少し寂しい気持ちになった。
これから別々に住むようになって、しばらくしたら多分もう東弥とは会えなくなって。そうしたら静留は一人だ。正確には梨花がいるが、それでも心の拠り所は失ってしまう。
__わがまま言っちゃだめだよね…。
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