40 / 92
第二部
※温泉旅行※①(東弥side)
しおりを挟む
玄関先で静留の鼻歌が聞こえてくる。
彼は玄関の段差に座って足をパタパタと楽しそうに揺らしていた。
澄んだ声で奏でられるメロディーは弾むようで、彼が今からの外出を本当に楽しみにしているのだと教えてくれる。
きっかけは東弥がニュースを見ようとしたときにたまたま流れていた温泉番組。それを見て珍しく静留がここに行きたいと言い出し、そういえばまだデートらしいデートをしたことがなかったとも思い、一泊二日でそのホテルの露天風呂付きの部屋を予約したのだった。
しかし一つだけ懸念がある。
ホテルまでは東弥の運転で行くのだが、途中でかなりの山道を通るのだ。
酔い止めを飲ませたいが、彼は過去に錠剤を噛んでひどく苦かった経験があるらしく、普通には錠剤を飲んでくれない。
しばらく考えて、錠剤とペットボトルを見えない位置に隠してから東弥は静留の隣に行った。
「静留。」
「?」
静留が振り返り、大きな黒い瞳が不思議そうにゆっくりと瞬く。
「口開けて。あーんって。」
「あーん…?」
glareを放ちながら言うと、彼は首を傾げながら小さな口を目一杯開いた。
その小さな口の中に錠剤を入れ、今度は自らの口にペットボトルの水を含むと、そのまま静留の唇に自分のそれを重ねる。
そのまま静留の口に水を流し込むと、こくりと喉が鳴って。
「ちょっと見せてね。…うん、ちゃんと飲めてる。えらい。」
念のため彼の口の中を確認すると、もう錠剤は残っていなかった。
もう一度甘いglareを注いで、たくさん頭を撫でてやる。
「あれ、静留大丈夫?顔赤いよ?」
静留の頬が真っ赤に染まっていて、東弥はそれを疑問に思う。
ただの酔い止めにそんな副作用はあっただろうか。
「…東弥さんのお口のお水、僕の口の中に… 」
__…確かに。
潤んだ瞳で見つめながら途切れ途切れに紡がれ、やってしまったと反省する。
「嫌だったね、ごめんね。」
「ちがう…きもちかったけど…、お顔熱いの、僕だけ…?」
「えっ… 」
__あれ、そういえば口移しって…。
静留の反応を聞いてからもう一度考え直すと、確かにかなりすごいことをしてしまった気がする。
自分の口に含んだものが静留の身体の中に入っているだなんて…。
急に身体が熱くなって、思わず口を押さえた。
「…ごめん、俺も熱くなった…。」
「じゃあ、…おそろい…?」
「うん。」
「それならうれしい。」
猫のような瞳を柔らかに細め、静留がくすぐったそうに笑う。
__…かわいすぎて本当に困るな…。
こんなに可愛らしい存在は静留以外に一度だって見たことがない。
「じゃあ、行こうか。」
心臓が煩くて声が震えてしまいそうなのを、静留に気付かれてしまわないだろうか。
そんな意味不明な懸念事項を思いながら東弥は靴を履き静留に手を伸ばした。
「うん!」
ぱっとひまわりのような笑みを浮かべ、静留が東弥の手を取る。
ドアを開ければ、静留の長い黒髪が、秋風に靡いてさらりと揺れた。
彼は玄関の段差に座って足をパタパタと楽しそうに揺らしていた。
澄んだ声で奏でられるメロディーは弾むようで、彼が今からの外出を本当に楽しみにしているのだと教えてくれる。
きっかけは東弥がニュースを見ようとしたときにたまたま流れていた温泉番組。それを見て珍しく静留がここに行きたいと言い出し、そういえばまだデートらしいデートをしたことがなかったとも思い、一泊二日でそのホテルの露天風呂付きの部屋を予約したのだった。
しかし一つだけ懸念がある。
ホテルまでは東弥の運転で行くのだが、途中でかなりの山道を通るのだ。
酔い止めを飲ませたいが、彼は過去に錠剤を噛んでひどく苦かった経験があるらしく、普通には錠剤を飲んでくれない。
しばらく考えて、錠剤とペットボトルを見えない位置に隠してから東弥は静留の隣に行った。
「静留。」
「?」
静留が振り返り、大きな黒い瞳が不思議そうにゆっくりと瞬く。
「口開けて。あーんって。」
「あーん…?」
glareを放ちながら言うと、彼は首を傾げながら小さな口を目一杯開いた。
その小さな口の中に錠剤を入れ、今度は自らの口にペットボトルの水を含むと、そのまま静留の唇に自分のそれを重ねる。
そのまま静留の口に水を流し込むと、こくりと喉が鳴って。
「ちょっと見せてね。…うん、ちゃんと飲めてる。えらい。」
念のため彼の口の中を確認すると、もう錠剤は残っていなかった。
もう一度甘いglareを注いで、たくさん頭を撫でてやる。
「あれ、静留大丈夫?顔赤いよ?」
静留の頬が真っ赤に染まっていて、東弥はそれを疑問に思う。
ただの酔い止めにそんな副作用はあっただろうか。
「…東弥さんのお口のお水、僕の口の中に… 」
__…確かに。
潤んだ瞳で見つめながら途切れ途切れに紡がれ、やってしまったと反省する。
「嫌だったね、ごめんね。」
「ちがう…きもちかったけど…、お顔熱いの、僕だけ…?」
「えっ… 」
__あれ、そういえば口移しって…。
静留の反応を聞いてからもう一度考え直すと、確かにかなりすごいことをしてしまった気がする。
自分の口に含んだものが静留の身体の中に入っているだなんて…。
急に身体が熱くなって、思わず口を押さえた。
「…ごめん、俺も熱くなった…。」
「じゃあ、…おそろい…?」
「うん。」
「それならうれしい。」
猫のような瞳を柔らかに細め、静留がくすぐったそうに笑う。
__…かわいすぎて本当に困るな…。
こんなに可愛らしい存在は静留以外に一度だって見たことがない。
「じゃあ、行こうか。」
心臓が煩くて声が震えてしまいそうなのを、静留に気付かれてしまわないだろうか。
そんな意味不明な懸念事項を思いながら東弥は靴を履き静留に手を伸ばした。
「うん!」
ぱっとひまわりのような笑みを浮かべ、静留が東弥の手を取る。
ドアを開ければ、静留の長い黒髪が、秋風に靡いてさらりと揺れた。
0
あなたにおすすめの小説
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
世界で一番優しいKNEELをあなたに
珈琲きの子
BL
グレアの圧力の中セーフワードも使えない状態で体を弄ばれる。初めてパートナー契約したDomから卑劣な洗礼を受け、ダイナミクス恐怖症になったSubの一希は、自分のダイナミクスを隠し、Usualとして生きていた。
Usualとして恋をして、Usualとして恋人と愛し合う。
抑制剤を服用しながらだったが、Usualである恋人の省吾と過ごす時間は何物にも代えがたいものだった。
しかし、ある日ある男から「久しぶりに会わないか」と電話がかかってくる。その男は一希の初めてのパートナーでありSubとしての喜びを教えた男だった。
※Dom/Subユニバース独自設定有り
※やんわりモブレ有り
※Usual✕Sub
※ダイナミクスの変異あり
ゲームにはそんな設定無かっただろ!
猫宮乾
BL
大学生の俺は、【月の旋律 ~ 魔法の言葉 ~】というBLゲームのテストのバイトをしている。異世界の魔法学園が舞台で、女性がいない代わりにDomやSubといった性別がある設定のゲームだった。特にゲームが得意なわけでもなく、何周もしてスチルを回収した俺は、やっとその内容をまとめる事に決めたのだが、飲み物を取りに行こうとして階段から落下した。そして気づくと、転生していた。なんと、テストをしていたBLゲームの世界に……名もなき脇役というか、出てきたのかすら不明なモブとして。 ※という、異世界ファンタジー×BLゲーム転生×Dom/Subユニバースなお話です。D/Sユニバース設定には、独自要素がかなり含まれています、ご容赦願います。また、D/Sユニバースをご存じなくても、恐らく特に問題なくご覧頂けると思います。
待てって言われたから…
ゆあ
BL
Dom/Subユニバースの設定をお借りしてます。
//今日は久しぶりに津川とprayする日だ。久しぶりのcomandに気持ち良くなっていたのに。急に電話がかかってきた。終わるまでstayしててと言われて、30分ほど待っている間に雪人はトイレに行きたくなっていた。行かせてと言おうと思ったのだが、会社に戻るからそれまでstayと言われて…
がっつり小スカです。
投稿不定期です🙇表紙は自筆です。
華奢な上司(sub)×がっしりめな後輩(dom)
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
不透明な君と。
pAp1Ko
BL
Dom/Subユニバースのお話。
Dom(美人、細い、色素薄め、一人称:僕、168cm)
柚岡璃華(ユズオカ リカ)
×
Sub(細マッチョ、眼鏡、口悪い、一人称:俺、180cm)
暈來希(ヒカサ ライキ)
Subと診断されたがランクが高すぎて誰のcommandも効かず、周りからはNeutralまたは見た目からDomだと思われていた暈來希。
小柄で美人な容姿、色素の薄い外見からSubだと思われやすい高ランクのDom、柚岡璃華。
この二人が出会いパートナーになるまでのお話。
完結済み、5日間に分けて投稿。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる